ホームマーケット経済指標解説2019年4月分景気動向指数(速報値)

2019年4月分景気動向指数(速報値)

2019年6月7日

-一致CI前月差は2カ月ぶり上昇に転じる。3カ月と7カ月の後方移動平均も上昇-
-一致CIを使った景気の基調判断は、「悪化」にとどまる-
-5月分の基調判断は、「下げ止まり」に転じる可能性も-

●4月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.2と2カ月連続の下降になった。最終需要財在庫率指数、新規求人数、マネーストック、東証株価指数の4系列が前月差プラス寄与、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差マイナス寄与になった。

●4月分の一致CIは前月差+0.8程度と2カ月ぶりの上昇に転じた。生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の4系列が前月差プラス寄与に、鉱工業生産財出荷指数(▲0.00)、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の3系列が前月差マイナス寄与になった。

●4月分の一致CIの指数水準は2015年=100として101.9になった。なお、直近のピークは17年12月分の105.3で、足元の水準は、3.4ポイント低い。18年では最も高かった4月分の104.1に比べて2.2ポイント低い水準になった。

●一致CIの3カ月後方移動平均は前月差+0.50ポイント上昇し、6カ月ぶりの上昇になった。7カ月後方移動平均は前月差+0.01ポイント上昇し、6カ月ぶりの上昇になった。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分~18年8月分まで23カ月連続して「改善を示している」という最高の基調判断で推移してきていた。しかし、18年9月分で「足踏みを示している」へ24カ月ぶりに基調判断が下方修正され、18年12月分まで4カ月連続して同じ判断だった。19年1月分では、一致CI前月差は下降、かつ一致CIの7カ月後方移動平均の前月差の2カ月の累計と3カ月の累計が振幅目安の▲0.77(当時)を超えるマイナス幅となり、「下方への局面変化」に下方修正された。「下方への局面変化」は事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す判断である。1月分の基調判断下方修正後に、「戦後最長の景気拡張は幻で、昨年秋から景気後退局面に入っている可能性がある」という見方がにわかに強まった。

●19年3月分の一致CIを使った景気の基調判断は「下方への局面変化」が維持されたが、前回3月分では「景気後退の可能性が高いことを示す」という「悪化」に下方修正された。「3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスであること」の条件を満たしたからだ。今回4月分では3カ月後方移動平均が上昇に転じ、当月の前月差の符号もプラスになったが、3カ月後方移動平均の上昇幅が+0.50で振幅目安の+0.90にとどかず、「悪化」が維持された。

●「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されるには、一致CI前月差が上昇、かつ一致CIの3カ月後方移動平均の前月差がプラスに変化し、プラス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累計)が振幅目安の+0.90以上になることが必要だ。

●5月分で「下げ止まり」になるには、一致CIの3カ月後方移動平均の前月差が、4月分・5月分の2カ月の累計が+0.90にならなければならない。過去の数値が変わらなければ、5月分一致CIの前月差が+0.8以上になれば条件を満たすので、チャンスはありそうだ。ちなみに、5月分では第一系列の生産指数(鉱工業)は前月比プラスになりそうだ。5月分製造工業予測指数前月比は+5.6%で、経産省の先行き試算値最頻値は前月比+1.5%である。

●「悪化」から一気に「上方へ局面変化」に上方修正されるには、一致CI前月差が上昇、かつ一致CIの7カ月後方移動平均の前月差がプラスに変化し、プラス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累計)が振幅目安の+0.76以上になることが必要だ。

●5月分で「上方へ局面変化」に上方修正されるには、一致CIの7カ月後方移動平均の前月差が、4月分が+0.01なので、5月分と合わせた2カ月の累計で+0.76にならなければならない。現状では、一致CIの前月差が+7.3になれば条件を満たすが、こちらは不可能な数字であろう。

●4月分の先行DIは55.6%程度と景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、新設住宅着工床面積、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の5系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がマイナス符号になった。

●一方、4月分の一致DIは64.3%程度と景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の4系列がプラス符号に、有効求人倍率1系列が保合い、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・小売業の2系列がマイナス符号になった。

●4月分景気動向指数・改定値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は6月12日である。また在庫率関連データが6月14日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

●4月分景気動向指数・改定値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。4月分速報値は98.3で3月分96.1から大きく増加している。速報値の数字で試算すると、所定外労働時間指数は前期比寄与度+0.45程度とかなりの上方修正要因になりそうだ。6月21日発表の確報値が6月24日発表予定の景気動向指数・4月分改定値では使用される。また、生産指数関連データなどが過去分を含め6月14日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

●5月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。この4系列全てが前月差マイナス寄与になることが判明している。

●また、4月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列は、全系列がマイナス符号になることが判明している。4月分速報値段階の先行DIは0.0%以上55.6%以下が確定している。