ホームマーケット身近なデータで見た経済動向1月のトピック「弱含み局面抜け、景気持ち直し、年末年始の身近なデータにも明るさ」

1月のトピック「弱含み局面抜け、景気持ち直し、年末年始の身近なデータにも明るさ」

2013年1月7日

 日本の景気は昨年秋に弱含んだ。7~9月期の実質GDP第2次速報値は前期比▲0.9%だが、そのうち▲0.7%の減少分が外需によるもので、海外景気の下振れが景気弱含みに大きく影響している。中国の反日の動きも景気の足を引っ張っている。また、エコカー補助金の反動などが出て鉱工業生産指数なども昨年秋は概ね弱含んだ。鉱工業生産指数などから作成する景気動向指数・CI一致指数を使った9月分の景気判断が「下方への局面変化」と下振れ、続いて10月分の判断がさらに下方修正され「景気後退局面の可能性がある」という「悪化」になり、11月分も「悪化」の可能性が大きくなったことで、景気後退説が出ている。オールジャパンのエコノミストのコンセンサス調査である「景気ウォッチャー調査」では9月調査で46名、10月調査で65名が尖閣問題・竹島問題を根拠に景気の現状を判断した。尖閣問題や竹島問題についてコメントした人の結果だけを集計して作成した現状判断DIは、9月が11.9ポイント、10月が15.5ポイントも全体を下回り、全体のDIを押し下げた。

 昨秋には身近なデータにも、尖閣問題などの発生と合わせ、懸念材料が出た。例えば、景気の悪い時には日曜の夕方に外出を控える人が多くなるので、テレビ番組「笑点」の視聴率が「その他娯楽番組」で最高視聴率を取りやすい。10 月に入ると11 月11 日まで6 週連続で第1 位になった。また、景気が悪くなると購入が増えるものに「もやし」がある。栄養があり値段が安いからだろう。家計調査によると、8 月分まで5 カ月連続で低下してきた「もやし」の購入金額が、中国との問題が懸念されるようになった9 月分で6 カ月ぶりに増加に転じ、10 月分でもやや増加した。

 しかし、こうした動きにも足もとで変化が見えてきた。11 月の「景気ウォッチャー調査」では尖閣問題に関してコメントした人が39 名と10 月分の65 名から減少した。旅行業者などで「やや良くなる」というコメントが出てきて、尖閣問題に関してコメントをした人だけから作成した現状判断DIは32.7 で全体の40.0 を7.3 ポイントと1 ケタ下回るにとどまるようになった。笑点も「その他の娯楽番組」で1 位をとったのは12 月では12 月2 日の1 回だけにとどまったようだ。「もやし」の購入金額も11 月分ではやや低下した。

 安倍新政権が誕生したことへの期待も大きい。金融政策に関する発言から80 円台の後半へと円安が進んだことや、10兆円規模と言われる補正予算などが足もとの景気にプラスに働こう。金融政策・財政政策・成長戦略の3 本の矢がしっかり「決定」され、「実行」されることを期待したい。

 内閣府の昨年初めの調査では全産業ベースの採算円レートは82 円01 銭である。「景気ウォッチャー調査」によると為替関連のコメントをした人から作成した為替DIは70 円台では全体DIを下回り、80 円台では概ね上回る傾向がある。直近11 月分の調査では先行き判断の中では「良くなる」というコメントも出てきた。

 9 月分の有効求人倍率は3 年2 カ月ぶりに低下し、10 月分も低下したものの、11 月分は横這いとなった。一方、11 月分の新規求人倍率は上昇した。完全失業率は11 月分で4.1%と08 年11 月の4.0%以来の低水準になった。求人広告掲載件数などの雇用関連の数字は、11 月分の前年同月比が17.2%と2 ケタのプラスの伸び率で悪くはない。雇用状況の改善は、限界的な雇用データと言える自殺者が2012 年には15 年ぶりに3 万人を割り込んだとみられることや東京23 区内のホームレスが8 月時点で1995 年の統計開始以来最少になったことなどにも表れている。2012 年の「今年の漢字」は「金」が選ばれた。ベスト10 には「輝」や前年に引き続き「復」など、概ね前向きで明るい字が選ばれた。

 JRAの中央競馬の12 年の売上げは前年比+4.4%と15 年ぶりのプラスの伸び率になった。新年も1 月6 日までの年初からの累計前年比は+10.3%で幸先の良いスタートだ。また、木村拓哉が主演するドラマ「PRICELESS」は10~12 月期クールでは「ドクターX」に次ぐ、高い視聴率となった。12 月10 日放送分では20.1%と20%台に乗せた。理不尽な理由で会社を解雇され、家も失った主人公が前向きに頑張る姿が、視聴者から支援されていることは、踊り場(あるいは景気後退局面)からそろそろ脱却する可能性を示唆していよう。

 日体大が30 年ぶりに総合優勝した箱根駅伝だが、復路のテレビ視聴率は27.9%と2 年連続低下し、過去20 年間の平均28.1%を下回った。景気の良い時には、買い物やレジャーで外出する人が増えると視聴率が低下する傾向があるようだ。日本一初詣客が多い明治神宮の正月3 が日の参拝客は313 万人で3 年連続減少した。苦しい時の神頼みをする人が減っているのであろう。また、築地中央卸売市場のマグロの初競りは、1 キロ当たり70 万円と昨年の21 万円を大きく上回る過去最高額が出たことも明るい数字だろう。

 10 月分の景気動向指数・CI先行指数は前月差上昇となった。直近3 カ月中2 回上昇だ。11 月分は下降しそうだが12月分では再び上昇しそうだ。ジグザグの動きながら上昇基調であることは、先行きの景気持ち直しを示唆していよう。

 10 月分鉱工業生産指数が前月比1.6%増と4 カ月ぶりに増加に転じた。11 月分では▲1.7%と減少したが、12 月分・1月分製造工業予測指数は前月比+6.7%、+2.4%となっており、鉱工業生産指数も増加基調に戻りそうである。生産関連統計が本年6 月に基準改定となることなどもあり、12 年春頃を山とした景気後退説の根拠が揺らぐ可能性も十分あろう。

 懸念されてきた海外景気だが、米国では「財政の崖」が回避され、住宅部門中心に改善が見られている。12 月分の失業率は7.8%で4 カ月連続の7%台になった。中国の7~9 月期GDP前年同期比は7.4%増と鈍化傾向だが前期比では2.2%増と1~3 月期の1.5%増を底に持ち直している。金融政策への期待から10~12 月期は前年同期比も8%台になりそうだ。為替が80 円台後半に定着しそうなことなど外部環境改善の動きも出ている。

 アベノミックスへの期待に加え、個人消費や住宅投資で消費税率引き上げ前の駆け込みも予想される13 年は景気持ち直しの年になる可能性が大きいだろう。