宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

2月のトピック「円安など背景に、景気持ち直し。97年金融危機時以来の変化示すデータも」

2013年02月01日

 景気は昨秋の弱含み局面を脱し、12 月頃から持ち直し局面に入ってきたようだ。昨秋の落ち込みはエコカー補助金絡みの調整や、海外景気の減速、尖閣問題などによるものであった。

 11 年12 月時点で作成された2012 年度の政府経済見通しでは、実質GDP は+2.2%という予測であったが、今年1 月28 日に閣議決定された13 年度政府経済見通しにおける12 年度の実質GDP 実績見込みは+1.0%と大幅に下方修正となった。内訳をみると内需の寄与度は当初見通しの+1.8%に対し実績見込みも+1.8%と予測通りだが、外需の寄与度は当初見通しの+0.4%に対し実績見込みは▲0.9%と大幅に下振れている。外需の下振れは、日銀短観の大企業の景況判断DIが、非製造業では昨年12 月調査まで6 期連続「良い」超を意味するプラスである一方、輸出に関係する企業が多い製造業では5 期連続「悪い」超であるマイナスになっていることにも表れている。

 最近の円安は海外経済減速や70 円台の円高により外需が下振れていた日本経済にとっては、大きなプラス材料になっている。「景気ウォッチャー調査」で為替に関してコメントした回答だけで作成した景気の判断DI(為替DI)は、80 円台後半の円安だった12 月調査(12 月25 日~月末時点)では、現状判断DI・先行き判断DI とも景気判断の分岐点の50 を大きく上回る60 台になった。

 昨秋の景気の落ち込みを示す代表的な指標である鉱工業生産指数は12 月分速報値で前月比+2.5%と、2 カ月ぶりの増加になった。12 月分の生産の増加に寄与した業種は輸送機械工業、一般機械工業、電気機械工業等であった。エコカー補助金終了に対応した大幅減産を9 月に実施したあと10 月分増加・11 月分減少とジグザグの動きをしていた輸送機械工業は12 月分で前月比は+6.9%と増加基調に戻った。

 製造工業生産予測調査によると、製造工業全体では、1 月は前月比+2.6%の増加、2 月は同+2.3%の増加と先行きは増加基調継続の見込みだ。12 月の生産の前月比プラスの伸び率は、2012 年は通常と比べ休日が多かったことが影響している面もあるが、その後の1 月分も前月比増加見込みであることは生産の先行き見込みがしっかりしていることを示唆していよう。先行きの鉱工業生産指数を1 月・2 月の予測指数の前月比で延長し、3 月分の前月比をゼロとすると、1~3 月期の鉱工業生産指数・前期比は+5.5%と4 四半期ぶりの増加になる。生産は増加局面に転じたようだ。経済産業省は12 月分で「総じてみれば、生産には下げ止まりの兆しがみられる」と前月までの「総じてみれば、生産は低下傾向にある」から11 カ月ぶりに上方修正した。

 身近な社会現象でも昨年12 月に改善の兆しがみられたものがある。10 月7 日から12 月2 日まで11 月18 日を除いて8回も「笑点」のテレビ視聴率は「その他娯楽番組」のジャンルでその週の第1 位を記録した。日曜日の午後5 時半に買い物やレジャーのための外出をしないで家にいて、笑いを求めるようなテレビ番組を選んで見る人が増えたことを意味した。ちょうど中国で反日の動きが強まり、景気の弱さを伝えるマスコミ報道が増えた時期と重なる。その後、12 月9 日から1月27 日まででは1 位になったのは1 月6 日までの週1回だけで、景気持ち直しを示唆する材料と言えよう。

 12 月12 日に発表された12 年の「今年の漢字」は「金」だった。ベスト10 の中の暗い漢字は「乱」くらいで、「復」「輝」といった明るい漢字が多かった。11 月中に記事が書かれたとみられる一部週刊誌では「誤」を予想する向きもあったが、そうした暗い漢字はベスト10 には入らなかった。

 年が明けると箱根駅伝往路のテレビ視聴率27.9%と過去20 年の平均28.1%を下回ったり、日本一初詣客の多い明治神宮で、正月3 が日の参拝客が313 万人と3 年連続で減少したりと、景気にとってプラスの材料も多かった。前者は1 月3日に外出する人が多く、その分消費支出が出ただろうこと、また後者は外出しても、昨年比で初詣ではなく遊びに行ったりした人が多かったとみられ、苦しい時の神頼みをする人が減ったとみられるからである。

 大相撲初場所の懸賞本数は1,008 本と前年同場所比+6.9%の増加となった。13 年に入って、企業の広告費の動向は底堅いと言えよう。

 景気動向指数は12 月分でCI 先行指数、CI 一致指数とも前月に比べ上昇する見込みだ。また、DI 先行指数は8 カ月ぶりに、DI 一致指数は7 カ月ぶりにともに景気の分岐点である50%を上回る見込みだ。しかし、景気動向指数を使った景気判断は12 月分では10 月分、11 月分と同じ景気後退の可能性を示唆する「悪化」にとどまろう。但し、3 月7 日発表の1 月分で「下げ止まり」という判断に上方修正される可能性が大きくなってきた。

 JRA(中央競馬会)の売上は、昨年は前年比+4.4%と15 年ぶりの増加に転じ、今年も1月27 日までの年初からの累計前年比が+2.6%の増加となっている。12 年の15 年前は1997 年で山一・北拓という大型金融機関の破綻があった年だ。 12 年の自殺者数は27,766 人とこちらも15 年ぶりに3 万人を下回った。雇用関連の身近なデータの改善例としては他に、金融機関店舗強盗が12 年では35 件にとどまったことが指摘できる。10 年の70 件の半分で、11 年の63 件も大きく下回った。

 12 年の百貨店売上高は16 年ぶりに増加に転じた。97 年には既に前年比マイナスに転じていたため15 年ぶりではなく、こちらは16 年ぶりになった。前述の13 年度の政府経済見通しでは実質GDP 成長率は+2.5%、名目成長率は+2.7%で16 年ぶりに名実逆転解消の見込みである。このように金融危機以来、15 年~16 年ぶりの改善というデータが散見されることは景気局面の大きな変化が生じていることを示唆していよう。

 今年は米国、中国などの海外景気の持ち直しが期待される。外国人観光客の百貨店売上高は11 月・12 月と前年同月比プラスである。尖閣問題により中国人観光客の減少が懸念されたが、台湾等その他のアジア諸国からの観光客が穴埋めをしている。安倍政権が誕生したことへの期待も大きい。2%のインフレ・ターゲットを導入したことなどで90 円台へと円安が進んだことや、12 年度補正予算として打ち出した総合経済対策をはじめとする財政政策などが足もとの景気にプラスに働こう。12 月のESP フォーキャスト調査では特別調査として「日本の経済政策」についてオールジャパンのエコノミスト40 名に質問した。「インフレ・ターゲットを導入」することに「賛成」「どちらかと言えば賛成」と答えた人は合わせて24 名で全体の6 割と過半数だった。この24 名に「何%にすべきか」を尋ねたところ、全体の71%に当たる17 名が「2%」と回答した。日銀が購入した「2%のインフレ・ターゲット」はオールジャパンのエコノミストの支持を得たものと言えよう。金融政策・財政政策・成長戦略の3 本の矢がしっかり「決定」され、「実行」されることを期待したい。加えて、個人消費や住宅投資で消費税率引き上げ前の駆け込みも予想される13 年は景気持ち直しの年になる可能性が大きいだろう。

 昨年の2 月14 日は日銀がバレンタインプレゼントをくれたが、今年は内閣府がくれそうだ。2 月14 日発表の10~12月期の実質GDP は、個人消費の底堅さと輸入の減少で、昨秋に言われていた前期比マイナス成長ではなく、プラス成長になるとみられるからだ。