宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

3月のトピック「『アベノミクスのマクロ経済への影響』に関するESP特別調査の結果は?」

2013年03月04日

 景気は昨秋の弱含み局面を抜け、昨年末頃から上向き傾向にある。

 オールジャパンのエコノミストのコンセンサス調査である「ESP フォーキャスト調査」2 月調査によると、回答した39名中、「09 年3 月の景気転換点(谷)の次の転換点(山)を過ぎていない」という者は3 名いる。筆者もこの立場である。ブライボッシャン法で昨年山・谷をつけた系列は生産関連データが多いが、生産に類似した動きになるはずの大口電力使用量は山・谷がまだ付いていない。今年は5 年に一度の鉱工業生産指数の基準改定の年で、基準改定次第で生産関連データの山・谷も変わるとみているからだ。また、「転換点(山)は過ぎたが、次の転換点(谷)も過ぎた」とみる者は31 名である。つまりミニ後退局面があったという立場である。いずれにしても39 名中34 名が現時点は谷から山に向かう拡張局面にあるとみていることになる。

 景気動向指数の判断は10・11・12 月分で「悪化」だった。但し、CI 一致指数は12 月分以降前月差で上昇局面入りした見込みだ。昨秋の弱含み局面は脱出、仮に昨年秋が後退局面であったとしてもミニ後退にとどまろう。CI 一致指数が上昇すれば1 月分で「下げ止まり」になる。

 鉱工業生産指数・1 月分速報値は前月比+1.0%と、2 カ月連続の増加になった。1 月分の生産の増加に寄与した業種は輸送機械工業、鉄鋼業等であった。エコカー補助金終了に対応した大幅減産を9 月に実施したあと10 月分増加・11 月分減少とジグザグの動きをしていた輸送機械工業は12 月分で前月比は+6.8%、1 月分で同+6.8%と増加した。国内や欧州、アジア向けの普通自動車の生産が伸び、自動車部品も増えた。円安の進展など環境変化も支援材料となりしっかりした増加基調に戻った。鉄鋼業は12 月分前月比+2.0%の後、1 月分で同+6.6%と2 カ月連続増加した。国内の建材やインド、マレーシア向けで増産されたようだ。製造工業生産予測調査によると、2 月は前月比+5.3%の増加、3 月は同+0.3%の増加と先行きは4 カ月連続で前月比増加基調継続の見込みだ。生産動向がしっかりしていることを示唆していよう。今回の調査で予測修正率が11 カ月ぶりにプラスに転じたことは明るい材料だ。先行きの鉱工業生産指数を2 月・3 月の予測指数の前月比で延長すると、1~3 月期の鉱工業生産指数・前期比は+5.9%と4 四半期ぶりの増加になる。

 昨年は外需が景気の足を引っ張ったが足元改善の動きが見られる。足もとの景気上向きの背景として日本経済を取り巻く外部環境が良くなってきたことが、まず挙げられる。OECD 先行指数では、米国が改善傾向にあり、ユーロ圏も底打ち傾向にある。

 米国では財政問題に関する懸念はあるが、住宅関連をはじめ景気指標は概ね改善基調にある。さらに長い目でみれば、シェールガス開発は支援材料だ。

 エルニーニョ現象が終息し、春まで平常状態継続が予測されている。今冬の暖冬は回避された。これは個人消費にプラスに働いた。

 ESP フォーキャスト調査・2 月調査によると民間エコノミストの予測平均で、13 年度の実質GDP 成長率は+2.01%とみている。政府経済見通しはこれより高い+2.5%である。13 年度は、海外景気持ち直しに加え、アベノミクスの効果、90 円台前半のドル円レート水準、消費税増税前の駆け込み需要などが景気支援要因である。ESP フォーキャスト調査・2月調査では「アベノミクスのマクロ経済への影響」に関する特別調査を実施し、38 名から回答があった。短期(1 年以内)での最も多い予測は、成長率、金利、物価、株価が「上がる」、失業率、為替は「下がる(為替は円安)」。一方、長期(1年超)では、金利、物価が「上がる」、為替は「下がる(円安)」、成長率、失業率、株価は「どちらとも言えない」となった。金融政策・財政政策という一本目・二本目の矢は短期では効果がある。但し、長期にわたりプラスの影響を維持するには三本目の矢のしっかりとした実現可能な成長戦略が決定され実行に移されることが重要である。長期の成長率、失業率、株価に関し「どちらとも言えない」という回答が多かったのは、三本目の矢に対する不透明さによるものだろう。

 景気ウォッチャー調査による分析では、尖閣問題は依然マイナス要因ではあるが、コメント数が極めて少なくなったことから、全体への影響は少ないとみられる。最近の円高修正はかなりのプラス要因になっている。辰年・巳年は連続して円安になりやすい十二支というジンクスは当たっているようだ。11 月~1 月の経常収支は3 カ月連続して赤字になる可能性が大きいだろう。これは金融要因以外の円安要因のひとつであろう。

 ホームレスの減少傾向、大学生内定率改善、求人広告掲載件数の前年同月比2 ケタ増加基調など、雇用面は底堅い。

 高度利用地を対象とする地価調査「地価LOOK レポート」によれば、今年1 月1 日時点では150 箇所の観測地点のうち上昇が51 箇所、横這いが74 箇所、下落が25 箇所で、昨年10 月1 日時点の、上昇が34 箇所、横這いが87 箇所、下落が29 箇所に比べ一段と上昇超になった。これは08 年1 月1 日時点の上昇が87 箇所、横這いが11 箇所、下落が2 箇所以来の上昇超である。地価にもアベノミクスの好影響が出てきているようだ。

 10~12 月期実質GDP 第1 次速報値は前期比年率0.4%減と、3 四半期連続マイナス成長になった。輸出、設備投資は減少したが、個人消費や住宅投資は増加であった。5 月発表予定の1~3 月期実質GDP 第1 次速報値でも最大の需要項目の個人消費は、1 月分の関連データからみて増加が期待される。また、設備投資は1 月分の供給サイドの関連データからみて増加に転じることが期待される。

 昨年10 月7 日から6 週連続「笑点」が「その他娯楽番組」で最高視聴率になったことは昨秋の景況感の悪さを示した。12 月・1 月は1 位回避の週がほとんどで景況感改善を示唆していた。但し2 月は全ての週で1位になったことが気懸かりだ。円安や寒さで灯油が2008 年以来の高値になったことなどで、節約の動きが出ている可能性もあろう。中央競馬売上高の2 月24 日までの年初からの累計前年比は1.9%減である。1月は増加であったが2月は後半になると減少に転じている。政府の要請に応えて賃金を上げようとする企業がまだ少ない中、円安による一部商品の価格上昇などが、庶民の娯楽の消費支出を抑制しはじめた可能性もあり注意が必要だ。また今春は花粉の飛散が多いと予想されている。中国からのPM2.5 や黄砂の影響と相俟って人々が外出を手控えることで消費の抑制要因にならないかどうかも注視したい点である。

 その反面、株価上昇による資産効果もあり、百貨店売上高で美術・宝飾・貴金属は増加している。大相撲初場所の懸賞は1008 本(前年比+6.9%)になったことをみると企業の広告費支出は底堅そうだ。今年2 月の「さっぽろ雪まつり」来場者数は236.7 万人、前年比+15.2%だったことや、初動50 万枚のCD が出続けていることなども景気の底堅さ示唆している。3 月のイベントとしては、WBC。侍ジャパンに期待したいところだ。