宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

4月のトピック「東京の桜も景気支援か。ほとんどのエコノミストが13年度は景気を上向きとみる。」

2013年04月02日

 景気は、欧州債務問題などの下振れ要因はあるものの、拡張局面にある。

 エコノミストのコンセンサス調査である「ESP フォーキャスト調査」3 月調査によると、回答した38 名中、「09 年3 月の景気転換点(谷)の次の転換点(山)を過ぎていない」という者は4 名いる。筆者もこの立場である。2 月調査より1 名増えた。ブライボッシャン法で昨年山をつけた系列は生産関連データが多いが、生産に類似した動きになるはずの大口電力使用量は山がまだ付いていない。今年は5 年に一度の鉱工業生産指数の基準改定の年で、基準改定次第で生産関連データの山・谷も変わる可能性もあるとみている。また、「転換点(山)は過ぎたが、次の転換点(谷)も過ぎた」とみるフォーキャスターは34 名である。ミニ後退局面があったという立場である。いずれにしても38 名中38 名全員が、現時点に関しては谷から山に向かう拡張局面にあると見ていることになる。

 また同調査によると民間エコノミストの予測平均値で、13 年度の実質GDP 成長率は+2.2%だ。13 年度は、海外景気持ち直しに加え、経済政策効果への期待、90 円台のドル円レート、一段の金融緩和期待、株高の資産効果、消費税増税前の駆け込み需要などが支援要因だ。

 鉱工業生産指数・2 月分速報値は前月比▲0.1%と、3 カ月ぶりに予想外の減少になった。2 月に発表された製造工業予測調査では2 月分は当初+5.3%の前月比が見込まれていた。その中でも電子部品・デバイス工業は前月比+14.5%の2 ケタ増加の見込みだった。しかし、実績は製造工業予測調査ベースで前月比▲1.6%の減少、鉱工業生産指数ベースで前月比▲5.0%の減少となった。鉱工業生産指数全体に対する前月比寄与度は▲0.4%になる。電子部品・デバイス工業が前月比横這いなら鉱工業生産指数・2 月分速報値は前月比+0.3%と増加だったことになる。一方、輸送機械工業や鉄鋼業の生産は3 カ月連続して増加した。3 月に発表された製造工業生産予測調査によると、製造工業全体の生産は、3 月が前月比+1.0%の増加、4 月が同+0.6%の増加と先行きは増加基調の見込みだ。そのうち電子部品・デバイス工業も3 月は前月比+0.7%の増加、4 月は同+1.6%の増加と一応増加見込みだ。不透明さはあるものの電子部品・デバイス工業も含め、生産の先行きは増加基調にあると考えられよう。

 なお、3 月29 日に経済産業省は『平成24 年の年間補正について』として、初めてホームページに「毎年、4 月中旬に公表する2 月分確報で行っている年間補正については、本年6 月に平成22 年基準改定を予定しているため、4 月15 日公表の平成25 年2 月分確報では、生産・出荷・在庫・在庫率指数、稼働率・生産能力指数、製造工業生産予測指数の年間補正は行いません」と、お知らせを掲載した。

 3 月調査日銀短観は、市場が最も注目する大企業・製造業の業況判断DI が12 月調査の▲12 から4 ポイント改善し▲8になった。3 期ぶりに改善で、2 期ぶりにひと桁のマイナスではあるが、6 期連続のマイナスで、事前の予想を若干下回った。自動車は12 月調査の▲9 から19 ポイント改善し+10 となった。3 期ぶりの改善になる。電気機械は▲17 で前回12月調査と同じであった。一方、鉄鋼は12 月調査の▲28 から10 ポイント悪化し▲38 と、09 年12 月の▲48 以来の低水準になった。中堅・中小とも違った動きだ。業種によっては厳しい結果になったものもある点には留意が必要だろう。

 10~12 月期実質GDP は第2 次速報値で上方修正され前期比年率+0.2%と、3 四半期ぶりのプラス成長になった。輸出、設備投資は減少したが、個人消費や住宅投資は増加した。5 月16 日発表予定の1~3 月期実質GDP 第1 次速報値でも個人消費は、1~2 月分の関連データからみてしっかりした増加が期待される。また、外需は前期比マイナス寄与になりそうだが、設備投資は1~2 月分の供給サイドの関連データからみて増加に転じることが期待される。

 ホームレスの減少傾向、大学生内定率改善、求人広告掲載件数の前年同月比2 ケタ増加基調など、雇用面は底堅い。

 「ESP フォーキャスト調査」ではエコノミストの景況感の総意をみることも可能だ。総合景気判断DI を3 月調査で見ると、13 年4~6 月期は景気判断の分岐点50 を大きく上回る98.7 となった後、7~9 月期には全員が景気は良いと判断する100.0 になり、10~12 月期も100.0、さらに14 年1~3 月期97.4 と高水準が続く。ほとんどのエコノミストが13 年度の景気を上向きとみていることがわかる。しかし、消費税引き上げが予定されている14 年4~6 月期には22.4 まで一気に落ち込むという見通しになっている。

 アべノミクスへの期待などで、円安が進み超円高が回避されたことで、輸出面から中小企業がひと息つけ、前向きな対応が出てきている。一例を挙げると、日本独自の技術でつくった初の国産の「下町ボブスレー」でソチ・オリンピックに参加し、BMW、フェラーリなどのつくったソリと競おうという、東京都大田区の中小企業の方々が行っている計画がある。昨年12 月に長野市スパイラルのコースを女子二人乗りの全日本チャンピオンがテスト走行した。その10 日後の全日本ボブスレー選手権では女子二人乗りでタイムを1 秒縮め3 連覇を果たした。3 月には男子二人乗りで北米カップに挑んだ。下町ボブスレーは機体の形状などが国際連盟規定に合致することも確認され、今後、秋にかけて2 号機を製作するという。こうした民間の前向きな動きが次々と出てくることを期待したいところだ。

 身近な社会現象も景気支援材料が多いようだ。今年は久しぶりに黄色が流行しそうだという。黄色の流行年は1956 年や72 年、96 年のように景気拡張局面に当たることが多い。CD売り上げをみると、3 月6 日発売の嵐の「Calling/Breathless」が初動75.6 万枚と彼らにとって初めての70 万枚超になった。景気拡張局面の目安となる初動50 万枚超のCD 発売が続いている。また、株価上昇による資産効果もあり、百貨店売上高で美術・宝飾・貴金属は増加している。

 スポーツイベントでは、残念ながらWBC3 連覇を逃した侍ジャパンも、アメリカ行きを決めた2 ラウンドまでは、テレビ中継も30%台の高視聴率を記録し、日本中を元気付け、株価押し上げにも貢献したようだ。過去2 回のWBC では、優勝を決めたWBC の決勝戦当日の日経平均の終値は、開幕前日の終値に比べ、第1 回は832 円、第2 回は1054 円とどちらも上昇した。第3 回は開幕直前の3 月1 日の日経平均終値は1 万1606 円、3 月18 日(月)プエルトリコとの準決勝の日はキプロス問題で寄付きから200 円超下げていたが、試合が終了した日本時間午後1 時39 分以降約100 円下落し、この日は合計で前日比340 円の下落となったが、直前の3 月15 日(金)の終値は1 万2561 円で、ここまででは955 円も上昇していた。

 今年は桜の開花が早く3 月下旬に見頃を迎えた地域も多かった。東京の開花日は3 月16 日。平年より10 日も早く、1953年の生物観測調査開始以降では最も早い開花日に並んだ。東京の開花日が、平年の3 月26 日より5 日以上早い年では、3月は景気後退局面になったことはない。早く春が来ると春物の消費が盛り上がり、景気は拡張局面を迎えているようだ。今年と同じく16 日に開花した2002 年は、73 カ月景気拡大が続いた「いざなみ景気」が始まった年だった。春物衣料などの商戦が早まるほか、外出しやすくなることで個人消費の底上げが期待できる。また明るいムードが経済全体に広がることも景気を下支えするのだろう。お花見気分が後押しすれば、景気回復も力強さを増すことだろう。今春は花粉の飛散が多く、人々が外出を手控えることで消費の抑制要因になることが懸念されていたが、こうしたマイナス要因を花吹雪のように吹き飛ばすことになった可能性が大きいだろう。

 3 月11 日に発表された「エルニーニョ監視速報」によれば、「エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常な状態が続いている。春から夏にかけても平常の状態が続く可能性が高い」と気象庁は予測している。その後に発表された3 月上旬、中旬の監視海域の基準値偏差は概ねゼロである。今夏の猛暑が回避されれば、増加傾向にある生産の抑制要因になる可能性が低くなり、景気にプラスに働くだろう。