宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

6月のトピック「梅雨の時期に市場でも、もたつき材料出るが、景気の基調は底堅く上向き」

2013年06月03日

 5 月の日経平均株価は月末値が1 万3774 円54 銭と、4 月30 日の1 万3860 円86 銭を下回った。日経平均が月間で下落するのは昨年7 月以来、10 カ月ぶりだ。日経平均は5 月22 日に年初来高値を付けたものの、これまで過熱気味だった相場上昇の反動や米国の金融政策の先行き予想、中国の指標に見られた海外景気の不透明感などから翌23 日に1143 円も急落した。その後不安定な展開が続き、30 日には1 万3589 円03 銭まで下落した。4 月末の日経平均株価の半年間の上昇率は55.2%だったが、これは1950 年以降では53 年1 月末の同80.3%、52 年11 月末の同55.8%に次ぐ3 番目に高い上昇率だった。株価は足元しばらく調整した後は再び先行き上昇基調に戻ろう。13 年度の国内景気がしっかりしていることは大きな下支え材料だ。

 足元の景気拡張の主因は円高修正だろう。アベノミクスの第一の矢の金融政策で2%の物価目標、2 倍のマネタリーベースを打ち出したことで、購買力平価説やソロスチャートを信奉する市場参加者の円売り行動を引き出し円高修正に成功した。さらに昨年末からの米国景気指標・季節調整値が、リーマン・ショックの影響からだろうか、予想より強めに出やすい時期に重なったことが円安方向の流れを支援したとみられる。円安が進んでも入着原油価格が落ち着いていて4 月中旬では前年比マイナスになったことは、円安の副作用が生じにくかったことの証拠であろう。4 月分の実質輸出入からみると4~6 月期のGDP 統計の外需の前期比寄与度は相当強そうだ。また、アベノミクスの第二の矢の財政政策の効果も4~6 月期のGDP 統計などに明確に現れよう。

 しかし、景気の基調は底堅いものの当面もたつき材料が出る局面かもしれない。今年の梅雨入りは関東甲信地方が5 月29 日頃と平年(6 月8 日頃)より早かった。株式相場や出てくる材料も梅雨空のように当面すっきりしないものが多いかもしれない。まず、梅雨入りが早く梅雨明け(平年は7 月21 日頃)が遅いと景気は芳しくない局面が多いので、梅雨明けが予想に反し早く明けることが期待される。米国景気指標・季節調整値が予想より弱めに出やすい時期に入った可能性がある。但し、住宅関連などを中心に米国景気は良くなってきていることがテクニカル的な弱さに勝てるかどうかが注目点だ。日本テレビ「金曜ロードショー」の放送ラインアップは現在6 月21 日までしか発表されていないが、毎年7 月第一週の金曜日の「金曜ロードショー」ではジブリ作品が放送される。同日、6 月分の米国雇用統計が発表されるが予想より弱く出れば、週明けの日本の株式市場の下落材料になり、「ジブリ作品が放送されると週明けの日本の株式市場が荒れる」という所謂ジブリの法則が成り立つかもしれない。4 月中旬に前年比マイナスだった入着原油価格は4 月下旬に前年比+4.5%程度、5 月上旬に同+5.5%程度と伸び率を高めてきている。レギュラーガソリン価格は5 月27 日まで12 週連続の値下がりだったが、そろそろ変調をきたすかもしれない。日本の指標では株式市場の下落を見ながら回答した5 月調査の「景気ウォッチャー調査」(6 月10 日発表)の景気判断DI は毎年の季節性とも重なり、前月差で下落する可能性が大きそうだ。黒田日銀総裁のバズーカ砲も2 並びの数字で強い印象を人々に与えたが、債券市場などへの細かい配慮を欠けていた面が長期金利の乱高下という副作用を招いている面もある。

 アベノミクスの第三の矢の成長戦略が注目される。まずは6 月5 日の内外情勢調査会での、安倍総理の成長戦略に関して3 回目となる講演の内容が参加している人たちにやる気をもたらす内容であるかどうかだ。そして「日本産業再興プラン」「戦略市場創造プラン」など既に新聞報道されている成長戦略が正式にどういった形で発表されるかであろう。「過当競争」「過小投資」「過剰規制」を是正し、民間の前向きな投資行動などを行おうとする意欲を掻き立てるものになって欲しい。

 エコノミストのコンセンサス調査である「ESP フォーキャスト調査」5 月調査(7 日締切)によると、回答した40 名中、「09 年3 月の景気転換点(谷)の次の転換点(山)を過ぎていない」という者は4 名いる。筆者もこの立場である。ブライボッシャン法で昨年山をつけた系列は生産関連データが多いが、生産に類似した動きになるはずの大口電力使用量は山がまだ付いていない。商業販売額卸売業・前年同月比のように12 年9 月が谷であるという系列も出てきた。さらに今年は5 年に一度の鉱工業生産指数の基準改定の年で、基準改定次第で生産関連データの山・谷も変わる可能性もあるとみている。5月27 日の日経には「ミニ景気後退なかった?」という記事も掲載された。また、「転換点(山)は過ぎたが、次の転換点(谷)も過ぎた」とみるフォーキャスターは36 名であった。ミニ後退局面があったという立場であろうがなかろうが、フォーキャスター40 名全員が、現時点に関しては谷から山に向かう拡張局面にあると見ていることになる。

 また同5 月調査の総合景気判断DI はフォーキャスター全員が3 カ月前に比べて景気は上向きであるとみる100 という回答が2013 年7~9 月期と10~12 月期と2 四半期続いているが、これは3 月調査~5 月調査まで3 回連続してのことであった。調査開始後初めてのことである。民間エコノミストの13 年度の実質GDP 成長率の予測平均値は+2.42%だ。13年度は、海外景気持ち直しで外需の寄与度が+0.1%程度と12 年度のような大幅なマイナスにならないというのがコンセンサスだ。加え、経済政策効果への期待、消費税増税前の駆け込み需要などが支援要因になり、内需の寄与度が+2.3%程度と12 年度の+2.0%より大きくなる見込みだ。

 鉱工業生産指数・4 月分速報値は前月比+1.7%と、5 カ月連続増加になった。4 月分の生産の増加に寄与した業種は輸送機械工業、電子部品・デバイス工業、精密機械工業等であった。輸出関連が良かった模様だ。6 月7 日に4 月の景気動向指数(速報値)が発表される。景気の現状を示すCI 一致指数は前月から1.0 程度上昇すると予測する。円安で生産が増加に転じてきたほか、消費者心理の改善で小売業の商業販売額が回復しつつあるためだ。内閣府が示す基調判断が、前月は「下げ止まりを示している」だったが、今月は条件を満たせば「(上方への)局面変化」に基調判断が上方修正されることが、5 月31 日朝に鉱工業生産指数が発表された時までは、期待された。基調判断は機械的に決まり、次の変更は一致指数が前月より上昇し、7 カ月間を示す「7 カ月後方移動平均」の2 カ月累計または3 カ月累計上昇幅が一定以上になれば、上方修正される。4 月分速報値では一致指数の上昇幅が1.4 以上で条件を満たしたが31 日午後に中小企業出荷指数が前月比2.5%減少になったことから達成が難しいことが判明した。鉱工業生産指数など、一致指数の算出に関わる経済指標の大半は改善傾向にある。4 月分改定値段階で後から加わる1~3 月分の営業利益も増加傾向になった。4 月速報値での基調判断が据え置きであっても、生産指数などが基準改定となる4 月分改定値以降で判断が変更される可能性が高い。そして景気拡張局面を示す「改善」という判断に戻るのも間近だろう。景気動向指数を受けて、政府の判断が「景気は拡張局面にある」といった表現に変われば、企業や消費者のマインドに良い影響を及ぼすだろう。

 ホームレスの減少傾向、大学生内定率改善、求人広告掲載件数の前年同月比2 ケタ増加基調など、雇用面は底堅い。4月分完全失業率は女性が新たに職探しを始めた人が増えたことで4.1%と3 月と同じ数字になった(総務省統計局に小数点第二位を電話でヒアリングすると全体では3 月分4.07%が4 月分4.12%に上昇したが、女性が3 月分3.46%から4 月分3.84%になったことが影響している。逆に男性は3 月分4.54%が4 月分では4.32%に低下していることがわかった)。今回の完全失業率の足踏みは将来良くなっていく仮定での一時的な現象と考えられよう。有効求人倍率4 月分は0.89 倍で2009 年8 月分の0.42 倍から倍以上改善、前月3 月分の0.86 倍から0.03 ポイント改善しリーマン・ショック前の08 年7月分(0.89 倍)の水準まで戻ってきた。

 身近な社会現象も景気支援材料が多いようだ。CD 売り上げをみると、5 月22 日発売のAKB48 の「さよならクロール」が初動176.2 万枚とAKB48 総選挙投票要因とも絡んで歴代最高初動売上の記録を更新した。景気拡張局面の目安となる初動50 万枚超のCD 発売が12 月以降毎月続いている。また、百貨店売上高で美術・宝飾・貴金属の売上は毎月上昇し、4 月分の前年同月比は+18.8%の増加となった。ガソリン価格下落で節約の動きが緩んだのだろうか、2 月から3 月初めにかけ年初からの累計前年比が▲2%近かった中央競馬売上高が、6 月2 日まででは同▲0.4%まで縮小した。6 月2 日の安田記念の売り上げは前年比+5.9%になった。また、2 月から3 月前半では、「笑点」が「その他娯楽番組」で最高視聴率を続けたことは景況感の悪さを示したが、ガソリン価格・灯油が下落基調に転じる中、4・5 月の週では全て1 位回避となり景況感改善を示唆した。