宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

10月のトピック「日銀短観の業況判断DIはリーマン・ショック後最高に。身近なデータは景気底堅さ示唆。プロ野球は人気球団・巨人、楽天がリーグ優勝。大相撲懸賞も前年同場所比増加に転じる。」

2013年10月03日

 10 月1 日に発表された9 月調査の日銀短観は大企業・製造業の業況判断DI が+12 とリーマン・ショック後の最高水準を記録した。同日、安倍首相は来年4 月から消費税率を3%引き上げて8%にすることを正式に表明した。同時に、増税に備えて企業向け減税に加え、5 兆円規模の経済対策を策定することも表明した。

 財政健全化のために消費増税は必要な対応だが、同時に経済再生を達成するためには、先端設備を導入した企業、賃金を上げる企業を優遇する税制などで、アベノミクスの3 本の矢により生じる景気の好循環をより確かなものにする必要がある。秋の臨時国会では産業競争力強化法案などが法制化され、いよいよ経済成長戦略が実行される基盤が整う。長い間、デフレ慣れしてしまい萎縮してしまっている現状を打破出来るかどうか。チャンスを活用するという、企業経営者の決断が注目される局面である。

 9 月調査日銀短観は、大企業・製造業の業況判断DI が6 月調査から8 ポイント改善し+12 になった。3 期連続の改善である。リーマン・ショック前の07 年12 月調査の+19 以来の水準になった。今回9 月調査の調査期間は8 月27 日~9 月30 日で、昨秋からの円高修正の流れなどが改善を後押ししたと見られる。また、類似調査のロイター短観9 月調査(調査期間8 月30 日~9 月13 日)の6 月調査からの変化方向と逆の好結果となったことからみて、9 月7 日(現地時間)の20 年東京オリンピック開催決定という明るい話題が企業の景況感にプラスに作用した可能性が大きいと言えそうだ。世界の目が日本に集まる大きなチャンスで、クールジャパンをはじめ、日本独自の製品、サービスの需要を海外で高めるチャンスである。

 企業を取り巻く経済環境は円高修正、実質金利の低下、株式時価総額の増加など、昨年に比べ着実に良くなってきていると言えよう。加工業種全体では9 月調査で+12 と6 月調査から8 ポイント改善した。自動車は9月調査で+27 と6 月調査から11 ポイント改善した。また電気機械は9 月調査で+9 と6 月調査から13 ポイント改善し、10 年9 月調査以来の高水準になった。素材業種は9 月調査で+12 と6 月調査から8 ポイント改善した。鉄鋼は9 月調査で+2 と6 月調査から4 ポイント改善し、08 年12 月以来の高水準となった。窯業土石製品は9 月調査で+29 と6 月調査から14 ポイント改善した。91 年3 月調査の+36 以来の高水準だ。木材木製品は9 月調査で+48 と6 月調査から9 ポイント改善した。こちらは90 年3 月調査の+80 以来の高水準となった。

 9 月調査の大企業・製造業の業況判断DI+12 は6 月調査の「先行き」見通し+10 を2 ポイント上回る数字になった。事前予想より足元の景況感が良かったということになり、景気が上向き局面にあることを示唆する現象だ。大企業・製造業で「悪い」と答えた割合は9 月調査では8%と6 月調査の11%より低下した。

 大企業・非製造業・業況判断DI では、9 月調査は+14 と前回6 月調査から2 ポイント上昇し、3 期連続の改善となった。また9 期連続のプラスである。このことは、内需の底堅さを反映していると言えよう。アベノミクス第2 の矢の恩恵を受けた建設は9 月調査で+20 と6 月調査から6 ポイント改善した。9 月調査の大企業・非製造業・業況判断DI+14 は、6 月調査の「先行き」+12 を2 ポイント上回る数字で、こちらも景況感が思ったよりやや良かったことを示唆している。

 中小企業・製造業の業況判断DI は、9 月調査では▲9 と6 月調査から5 ポイント改善した。DI はマイナスであり、水準はまだ「悪い」超と厳しいものの、方向性で見て幅広い業種で景況感の改善が進んでいることが確認できる内容だ。但し6 月調査時点の「先行き」▲7 よりは2 ポイント低かったことは景況感が事前予想ほどは改善しなかったことを意味しよう。一方、中小企業・非製造業の業況判断DI は9 月調査で▲1 と6 月調査から3 ポイント改善し、6 月調査時点の「先行き」▲4 を3 ポイント上回った。92 年6 月調査の0 以来の水準まで回復したことは国内需要がかなりしっかりしてきていることを示す数字であろう。建設は9 月調査で+7 と6 月調査から8 ポイント改善し、96 年12 月調査の+13 以来の高水準になった。

 全規模・全産業の業況判断DI は、今回9 月調査で6 月調査から4 ポイント改善し+2 になった。07 年12月以来のプラスでリーマン・ショック以降では最高になった。景況感は着実に改善していると言えよう。

 しかし、足もとでは、8 月分鉱工業生産指数などのようにもたついた指標もある。ただし、それらも基調的には悪くない。鉱工業生産指数・8 月分速報値は前月比▲0.7%と、2 カ月ぶりの減少になり、製造工業生産予測指数・8 月分の前月比+0.2%を下回った。しかし製造工業生産予測調査によると、9 月分は前月比+5.2%、10 月分は前月比+2.5%と連続増加見込みである。当面、生産の増加基調に変化は無く、月次の数字はある程度均してみる必要があるとみられる。製造工業生産予測指数の前月比で延長すると、10 月分の生産指数は104.9と東日本大震災直前の11 年2 月分の102.7 を上回り、リーマン・ショックが発生した08 年9 月の110.0 以来の水準に戻ることになる。先行きの鉱工業生産指数を9・10 月分の予測指数の前月比で延長し、11・12 月分の前月比をゼロとすると、7~9 月期は前期比+3.1%、10~12 月期は前期比+5.9%と4 四半期連続の増加になる見込みである。

 8 月調査の景気ウォッチャー調査も景気上向きを意味する50 を上回る高水準ながら、現状判断DI は3 月をピークに5 ヵ月連続して低下している。これももたついた指標のひとつであるが、今年7 月分の調査から公表されている季節調整値をみると5 月をピークに6・7 月と低下したものの、8 月では0.3 ポイントではあるが、わずかに持ち直している。

 「ESP フォーキャスト調査」9 月調査の総合景気判断DI は、駆け込み需要が見込まれる13 年7~9 月期と10~12 月期は100、14 年1~3 月期は93.8 の高水準予測であるが、消費税引き上げ直後の14 年4~6 月期は15.0でほとんどのエコノミストが景気は下向きであると回答している。しかし、翌7~9 月期の総合景気判断DI は73.8 に回復し、14 年10~12 月には87.5 に達する見通しで、景気は一時的落ち込みの後、再び上向くと予想するエコミストが大半を占める。

 足もと、暫定予算の成立が遅れ米政府機関の一部が閉鎖されるなど、米国経済に懸念材料が生じている。しかし、10 月17 日が期限の債務上限引き上げ交渉で、米国債がデフォルトに陥るまで大統領・民主党と共和党が対立するとは思えない。なお、FRB のQE3 の縮小は米国の経済指標が力強さを増すとみられる12 月に実施されるだろう。

 日本の景気動向を、身近な指標でみると景気の良さを示唆するものが多い。家計調査によると2 人以上の世帯一世帯当たりのもやしの購入金額は6~8 月分で3 ヵ月連続70 円台となった。これはリーマン・ショック後初めてのことである。栄養価があり値段が安く嵩が増すもやしは景気の悪い時に購入金額が増える。リーマン・ショック後は100 円を超える月もあった。足もとのもやしの消費動向からは景気の良さが感じられる。

 7~9 月クールの連続ドラマは「半沢直樹」が話題で、最終日42.2%(関東地区)の高視聴率となった。しかしこのクールには、かつて98 年に大ヒットしドラマアカデミー賞最優秀作品賞を受賞した「ショムニ」など強い女性を主人公にしたリバイバル作品も放映されていた。強い女性が主人公のドラマがヒットすると景気後退局面という傾向があるのでこれらの視聴率動向が注目されたが、「ショムニ2013」は全10 回中6 回の視聴率が1 ケタ台になるという不振であった。08 年の放送で最高19.6%を出した「斉藤さん2」も視聴率が10%台前半の回が多く1 ケタ台もあった。今は強い女性が主人公のドラマは視聴者にあまり支持されていないことが、確認された。

 NHK 朝の連続テレビ「あまちゃん」も大ヒットした。平均視聴率が20.6%で「梅ちゃん先生」の20.7%に次ぐ水準になった。最高視聴率は27.0%(9 月16 日放送分)で、2002 年「さくら」以来の高水準となった。アマノミクスという言葉も出てきた。岩手経済研究所によると県内の経済効果は32 億円になったという。天野春子という役名で小泉今日子が歌っている劇中歌「潮騒のメモリー」CD の売上は9 月29 日で15 万枚を超えた。終盤では東日本大震災がドラマとして初めて描かれた。北三陸の人々が厳しい現況下でも明るく前向きに復興に努力していく姿は、日本中に元気を与えたと思われる。ドラマのモデルになった久慈市出身の楽天の銀次選手も、あまちゃんの放送直後の写真「あまちゃん」で紹介された。

 「見せましょう!野球の底力を」、「見せましょう!東北の底力を」という言葉は、東日本大震災の直後に楽天の嶋選手が言ったものであるが、楽天の球団創設9 年目でのパ・リーグ初制覇は「あまちゃん」と合わせ東北の底力を全国に示し、日本国民を元気付けた。優勝を決めた田中将大投手は10 月1 日に開幕23 連勝となっている。伝説の鉄腕・稲尾の20 連勝(57 年7 月18 日~10 月1 日)の日本記録を更新した。

 セ・リーグは巨人が2 連覇を達成した。2 位とのゲーム差が2 年連続して2 ケタになりそうだが、それはV9時代の最初の3 年間(65 年~67 年)以来のことになる。今年の読売新聞の見るスポーツに関する世論調査から人気ランキングをつくると、巨人はセ・リーグ1 位、楽天はパ・リーグ2 位という人気球団で、経済効果も大きいとみられる。クライマックス・シリーズもあるのでまだ日本シリーズの対戦カードはわからないが、巨人対楽天というカードになればランキング合計は3 で2~5 の時はほとんど景気拡張局面という過去の傾向通りとなりそうだ。

 身近なデータで唯一弱い指標だった大相撲の懸賞本数も秋場所は921 本で前年同場所比+1.0%と、初場所以来4 場所ぶりに増加に転じた。