宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

3月のトピック「消費増税控え不透明感強まる景気局面。『嵐』『AKB48』のCD初動売上など身近な社会データは足もとの景気堅調示唆」

2014年03月03日

 日本の景気は足もとしっかりしているが、4 月の消費税率引き上げが間近に迫り、不透明感も強い状況だ。乗用車をはじめとして消費税率引き上げ前の駆け込み需要が出ていて、しっかりした動きが基調としては続いている。しかし、マーケットニュース社の調査による2 月前半の主要百貨店売上高前年比のように関東地方で45 年ぶりの大雪となったことなど天候要因で1 月に比べ弱含んだ指標もある。

 また、季節調整のかけ直しの影響で、13 年10~12 月期の実質GDP 第1 次速報値のように事前の予想に比べて弱含んだ経済指標も出ている。さらに、4 月に消費税率引き上げの後の落ち込みを考慮して、半年後の消費者マインドを尋ねる消費者態度指数をはじめ、先行指標に弱含むものが出てきている。4 月の消費税引き上げ時期が近づくにつれ経済指標は不透明さを増していく。この不透明状態は、消費増税の影響で4・5 月の景気が大きく悪化した後、6・7 月で持ち直しを確認するまで続きそうである。

 10~12 月期実質GDP 成長率第1 次速報値は前期比年率+1.0%と事前の+2~3%程度という予測より弱めの成長率になった。外需の前期比寄与度は▲0.5%と大きなマイナスだった。しかし、プラス成長は4 四半期連続となった。ただし、4 四半期連続にとどまり5 四半期連続のプラス成長にならなかったのは、前期比年率+0.6%とプラスの伸び率だった12年10~12 月期実質GDP 成長率が0.8 ポイントも低下し同▲0.2%とマイナス成長になったためだ。GDP 統計では、毎回最新四半期までのデータを用いて季節調整をかけなおすため、過去に遡ってパターンが変わり、原数値がほとんど変わらなくても季節調整値がかなり変化することがある。

 季節調整値というのは月次データや四半期データで経済を見るときに実勢を正しくとらえるために、原数値から毎年のほぼ同じような規則的変動を除去した値である。最近の季節調整法は時系列モデルで原数値を将来にまで伸ばし、それに移動平均などの手法を用いることで季節調整値を求めている。08 年9 月にリーマン・ショックが起こった直後の10~12月期以降の数字は大幅に悪化した。特殊要因として一時的な落ち込みで処理できないものであった。時系列モデルで原数値を延長することで、これまで10~12 月期は弱めに原数値の数字が出やすい時期だと判断され、高めの季節調整値になるよう調整されていたと思われる。そのため季節調整値ベースの10~12 月期の前期比が高めに出やすい傾向にあったのだろう。

 リーマン・ショックから時間が経過したことから、時系列モデルで延長される部分において10~12 月期が弱含むパターンが変化し、結果として足元の10~12 月期の前期比がやや弱めに出やすくなったと考えられよう。

 今回は、個人消費や設備投資という民需の主要項目で10~12 月期の季節調整パターンが大きく変わったようだ。具体的な数字で比べてみよう。これまでの季節調整値と比較ができる最新の10~12 月期のデータである12 年10~12 月期をみると、個人消費の前期比は+0.6%から+0.4%に0.2 ポイントの下方修正。設備投資では原数値の前年同期比が変わらないのに前期比は▲0.6%から▲1.1%と0.5 ポイントの大幅下方修正になっている。

 民間エコノミストのコンセンサス調査である「ESP フォーキャスト調査・2 月調査」では13 年10~12 月期実質GDP成長率の平均予測値は前期比年率+3.1%、個人消費の平均予測値は前期比+0.7%、設備投資の平均予測値が前期比+1.8%であった。第1 次速報値での実績は、個人消費の前期比は+0.5%、設備投資の前期比は+1.3%で平均予測値を下回っている。季節調整かけ直しによる10~12 月期への影響を12 年10~12 月期の下方修正ポイント幅で判断すると、個人消費が0.2 ポイント差、設備投資が0.5 ポイントの差である。この差を考慮すると、個人消費、設備投資のどちらも平均予測値どおりであったと言える。08 年9 月に発生したリーマン・ショックから時間が経過してきたことから季節調整パターンが変化したことが今回の事前の予測より弱めの伸び率になった主因と考えられよう。

 また、13 年4~6 月期は前期比年率+3.9%へとこれまでの+3.6%から上方修正された。このことは季節調整パターンの変化が14 年4~6 月期の押し上げ要因になる可能性を示唆しており、先行きの明るい話と言えよう。

 景気動向を敏感に示す「景気ウォッチャー調査」の現状判断DI は、直近14 年1 月で前月差1 ポイント低下の54.7 と高水準ながら低下したと報じられたが、これは季節的なクセで弱含んだだけである。季節調整値でみると14 年1 月は57.4で13 年12 月から0.5 ポイントの上昇、05 年12 月の57.5 に次ぐ統計史上第2 位の高水準だ。

 一方、2~3 カ月先を示す、先行き判断DI は49.0 と14 カ月ぶりに景気判断の分岐点の50 を割り込んだ。季節調整値でみると48.9 でこちらも14 カ月ぶりの50 割れだ。内閣府は「景気は、緩やかに回復している。ただし、先行きについては、消費税率引上げ後の需要の反動減等の影響が見込まれる」と1 月調査の結果をまとめている。

 「ESP フォーキャスト調査・2 月調査」によると、駆け込み需要が出る1~3 月期の実質GDP 成長率は予測値の平均でみて前期比年率+4.63%の大幅増加予測だが、4~6 月期は同▲4.57%の大幅減少になる。しかし、その後は概ね同+1~3%程度で緩やかに成長するというのが平均的見通しだ。消費税増税に対する政府の経済対策の景気下支え効果なども考慮しているのだろう。落ち込みは4~6 月期だけとみられる。

 また「ESP フォーキャスト調査・2 月調査」では、今後1 年以内に景気の転換点(山)がくる確率の予測の平均は26・3%にとどまっている。エコノミストは約4 分の3 の確率で景気拡張局面が続くと見ていることがわかる。

 企業の景況感調査である日銀短観をみると、大企業・製造業・業況判断DI は、12 月調査は「良い」が「悪い」を上回り、プラス16 とリーマン・ショック後最高。中小企業・製造業は07 年12 月以来の、非製造業は92 年2 月以来のプラスとなり、中小企業まで景気回復の裾野が広がってきていることを裏付けた。前回消費税引き上げ前の97 年3 月調査よりも業況判断DI はしっかりした内容になっている点は、今回の方が景気の一時的落ち込みに対する耐久力がある可能性を示唆しているとみられ、心強いデータだ。

 消費増税の落ち込みから個人消費が6・7 月に持ち直すかが注目される。注目は賃金や設備投資の好循環が生じるかどうかだ。6・7 月には夏のボーナスの動向も注目されよう。

 国内の景気指標が不透明なこともあって日経平均株価は幾分底打ちしたとは言っても、昨年末の水準を下回ったままである。ここ数カ月、日経平均株価はドル円レートと前日のNY ダウとの相関が高い状態が続いている。ドル円レートは昨年末に105 円台まで上伸し、いったんテクニカルな上向きの波動が完成してしまったことが上値抑制要因となっているかもしれない。最近は1 ドル=100 円台前半のボックス圏で推移している。日経新聞を円高・円安の記事数の差を半月区切りで比較すれば、足もとでは一進一退である。記事数の差はドル円レートの動きに約1カ月先行するところから推察すると、しばらく100 円台前半のボックス圏でもみ合いになりやすいとみられる。そのため、ドル円相場と連動して動いている日経平均も方向感がつかめない展開となりやすい。先行き不透明感が払拭され日本の景気が悪くないと認識されていけば、市場は先行き株価の上昇や円売りといったリスク選好の動きを次第に強めていくだろう。日銀の金融政策に関して2015 年末のマネタリーベース予測は、330 兆円強が平均値である。年間約60~70 兆円のマネタリーベース増加が続くことを意味し日銀のテーパリングはまだ先だということになる。米国のテーパリングが頓挫しなければ、通常は円高になりやすい午年が、初の「午年の円安」となる可能性は高い。

 また、米国ではFRB がテーパリングをFOMC 開催ごとに100 億ドルずつ減らすことを決定していくとみられるが、その背景には、米国経済がしっかりしていることを意味していよう。しかし、テーパリングが新興国市場からの資金流出につながるとみる向きもあり、下振れリスク要因とみられている。また寒波の影響もあり、足もと公表される経済指標の中には弱含むものもあり、米国の経済指標も不透明だ。NY ダウがもたつく局面では日経平均株価ももたついてしまう。但し今年のスーパーボウルではNFC のチームであるシーホークスが初優勝し、年間ではNY ダウが上昇する可能性が高いとみられる。先行きNY ダウの上昇が見込めることから、景気の不透明感払拭後の日経平均株価の上昇も期待されよう。

 2 月の身近なデータをみる限り、足もとの国内景気はしっかりしている。今年2 月5 日から11 日にかけ開催されたさっぽろ雪まつりの人出は240.2 万人と、東日本大震災直前の2011 年以来3 度目の240 万人を超える数字になった。3 連休が含まれた前年よりも人出は増加した。1 月から2 月にかけ「笑点」がその他の娯楽番組で視聴率(関東地区)1 位になったのは、2 月2 日までの週の1 回にとどまっている。日曜の夕方外出せず家にいる人が比較的少なかったことを示唆していよう。

 2 月12 日に発売された嵐の最新のシングルCD の「Bittersweet」は最初の1 週間の売上である初動売上枚数が51.1 万枚と景気局面の分岐点と言える初動50 万枚を超える売上になり、景気の良さを示唆した。さらに2 月26 日にはAKB48の「前しか向かねえ」が発売された。初動売上枚数の発表は3 月に入ってからになるが、初日売上が97 万枚ということで、こちらも景気局面の分岐点と言える初動50 万枚を超えた。2 月24 日までの週の中央競馬の売上(売得金)は年初からの累計の前年比は+3.5%である。今のところ今年は20 年ぶりの3 年連続プラスの伸び率になる可能性が高い。大相撲の元横綱として初のプロレスメジャー団体のシングルチャンピオンとなった曙は、K-1 時代の姿との比較で日本企業復活のシンボル的存在である。2 月23 日沖縄ではじめて開催された三冠ヘビー選手権試合で潮崎豪を破り、3 度目の防衛を果たした。日本企業復活という流れが続いていることを示唆している現象と言えよう。

1 月分の自殺者数は2053 人で前年比▲16.3%の減少となった。3 年連続3 万人割れ、5 年連続減少に向けて好スタートを切った。雇用状況はしっかりしている。1 月の景気ウォッチャー調査では、雇用の現状水準判断DI は65.2 と過去最高である。これは有効求人倍率の先行指標であり、同じく先行指標である新規求人倍率と同様、改善傾向にあることからみて、雇用の改善基調は当面続きそうだ。