宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

4月のトピック「消費税による一時的落ち込みからどこで反転するか。初場所・春場所と過去最高水準の大相撲の懸賞など身近な社会データは景気底堅さ示唆」

2014年04月03日

 日本の景気は3月まで駆け込み需要もあり堅調に推移してきたが、4月1日に消費税率が8%に引き上げられた影響で一時的に落ち込む局面に入った。

 「ESPフォーキャスト調査・3月調査」によると、駆け込み需要が出る1~3月期の実質GDP成長率は予測値の平均でみて前期比年率+4.60%の大幅増加予測だが、4~6月期は同▲4.10%の大幅減少になる。▲4.10%は21世紀に入って7番目に大きな下落率だ。しかし、その後は概ね同+1~2%台で緩やかに成長するというのが平均的見通しだ。消費税増税に対する政府の経済対策の景気下支え効果なども考慮しているのだろう。落ち込みは4~6月期だけとみられる。

 また「ESPフォーキャスト調査・2月調査」では、今後1年以内に景気の転換点(山)がくる確率の予測の平均は26.3%にとどまっている。エコノミストは約4分の3の確率で景気拡張局面が続くと見ていることがわかる。

 3月調査日銀短観は、大企業・製造業の業況判断DIが12月調査の+16から1ポイント改善し+17になった。5期連続の改善で、4期連続のプラスである。リーマン・ショック前の07年12月調査の+19以来の水準になった。3月調査の調査期間は2月24日~3月31日で、消費増税前の駆け込み需要などが、企業の景況感にプラスに作用したと言えそうだ。

 大企業・非製造業・業況判断DIでは、3月調査は+24と12月調査の+20から4ポイント上昇した。5期連続の改善であり、また11期連続のプラスであることは、内需の底堅さを反映し、しっかりした数字が続いていると言えよう。

 一方、大企業・製造業の「先行き」業況判断DIをみると、+8と「最近」の+17より9ポイントの悪化が見込まれている。消費税率引き上げの影響が懸念されるからだ。ただし、日銀の時系列データで前回消費税率引き上げ直前の97年3月調査での大企業・製造業「先行き」業況判断DIを調べてみると+4で「最近」の+12より8ポイントの悪化が見込まれていた。悪化見込み幅は当時とほぼ同じだが、水準は現在の方がしっかりしていると言えよう。

 大企業・非製造業では「先行き」は+13と「最近」の+24より11ポイントの悪化が見込まれている。大企業・非製造業、全12業種で先行き悪化となった。消費税率引き上げの影響が懸念されるとみられる小売の「先行き」は▲5と「最近」の+24より29ポイント悪化しマイナスに転じるとみている。97年3月調査での大企業・非製造業「先行き」業況判断DIは▲5で「最近」の▲2より3ポイントの悪化が見込まれていた。マイナスだった97年当時に比べ、現在の方がかなりしっかりしている水準であると言えよう。

 中小企業・製造業の業況判断DIは、12月調査では+1となり07年12月の+2以来のプラスになったが、3月調査では3ポイント改善し+4になった。07年6月以来の高水準である。一方、中小企業・非製造業の業況判断DIは12月調査で+4と92年2月の+5以来21年10カ月ぶりのプラスになったが、3月調査では4ポイント改善し+8になった。91年11月以来の高水準である。

 全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9月調査の▲48に近かった09年3月調査の▲46を底に上昇し、13年9月調査で07年12月以来のプラスで、+2になった。14年3月調査では+12で12月調査の+8から4ポイント改善した。91年11月の+12以来の水準で、企業の景況感は着実に改善していると言えよう。全規模・全産業の「先行き」見通しが「最近」より11ポイント低下しても、+1と消費税引き上げの影響を含めてもプラスであることは景気の底堅さを示唆していよう。

 生産・営業用設備判断DIは09年6月調査では、大企業・製造業が38、中小企業・製造業で38と「過剰」超の高水準であった。そこから5年間弱の間概ね改善傾向にある。3月調査では各々6、4まで低下した。全規模・全産業ベースでは「最近」がゼロになった。「先行き」は▲1と不足超だ。「最近」の不足超は、21世紀になってからは06年12月▲1と07年3月調査の▲1の2回だけであり、6月調査が予測通りになれば、画期的なことである。足元の生産・営業用設備判断DIが低下傾向であることは、企業が設備投資を実施する環境に近づいていることを示唆していよう。

 2月分速報値の鉱工業在庫指数は前月比▲0.8%と7カ月連続の減少になった。鉱工業在庫率指数は100.6、前月比1.7%上昇で6カ月ぶりの上昇になった。これまで企業は在庫を慎重にコントロールしてきているが、大雪の影響で一時的に鉱工業在庫率指数が上昇したとみられる。企業は出荷の大幅増加は駆け込み時の一時的なものとみているようで在庫の動きを慎重に管理しているようだ。鉱工業在庫率指数は昨年8月分で112.5という水準をつけた後、2月分は100.6まで低下している。低下幅は11.9ポイントである。96年8月分は103.9で、2月分の99.1まで4.8ポイント低下にとどまっていた。

 2月調査の「景気ウォッチャー調査」で分野・業種毎に現状判断DIと、消費増税後の景況感見通しである2~3カ月先の先行き判断DIを比較すると、駆け込み需要と反動の大きさがわかる。

 一番景況感の落差が大きいのは家電量販店で現状判断DIは統計史上最高の78.9だが、先行き判断DIは22.4と56.5のギャップがある。次に大きいのが乗用車、自動車備品販売店で、現状60.3に対し先行き23.9でその差は36.4である。3番目は百貨店で現状58.1、先行き34.7でその差は23.4である。このように変化幅が大きいのは小売関連業種である。一方、サービス関連は比較的両者の差は小さく全て1ケタである。中にはレジャー施設関連のように現状44.9で先行きも48.0と逆転している業種さえある。2月の大雪の影響の方が、消費税引き上げの影響よりも大きいという判断なのだろう。

 限界的な雇用関連指標と言える自殺者数は、1月分2058人で前年比▲16.1%の減少、2月分1851人で前年比▲14.1%の減少となった。3年連続3万人割れ、5年連続減少に向けて好スタートを切っている。雇用状況はしっかりしている。2月の「景気ウォッチャー調査」では、雇用の現状水準判断DIは65.3と過去最高である。これは2月分で1.05倍まで上昇してきた有効求人倍率の先行指標であり、同じく先行指標である新規求人倍率と同様、改善傾向にあることからみて、雇用の改善基調は当面続きそうだ。

 身近な社会データは、消費税引き上げ前の経済環境が97年春よりも良好であったことを示唆しているものが多い。

 大相撲の懸賞本数は今年初場所1198本で前年比+18.8%の増加、春場所は1166本で前年比+21.5%の増加で、過去最高水準だった。1100本台は昨年までは2011年初場所の1127本一度だけだ。前回の消費税引き上げ年である97年は、初場所578本・前年比▲6.3%、春場所484本・前年比▲21.9%とどちらも前年比で減少していた。

 毎年2月に7日間開催されるさっぽろ雪まつりの観客数は、今年は240.2万人だった。東日本大震災直前だった11年以来の240万人台で歴代第3位の水準である。大通り会場は193.3万人でこちらも史上3番目の観客数であった。ちなみに97年は全体で217.43万人、大通り会場は176.8万人であった。

 JRA(中央競馬会)の年初から売得金の前年比は3月30日までで+5.4%と増加している。20年ぶりの3年連続増加に向けて好調なペースで推移している。

 老舗のプロレス団体のひとつである全日本プロレスのチャンピオン(三冠ヘビー級王者)は大相撲元横綱の曙である。曙は3月18日に宮原健斗を破り4度目の防衛を果たした。曙が王者であり続けていることは、日本企業の復活機運を示唆していると言えよう。

 1~3月期で「笑点」がその他の娯楽番組で視聴率(関東地区)1位になったのは、2月2日までの週の1回にとどまった。

 消費税率引き上げ後の実際の景気動向の見極めは、予断を持つことなく「景気ウォッチャー調査」や消費者態度指数など、早期に動向が判明しそうな経済指標の実際の数字がどうなるかで判断することになろう。