宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

5月のトピック「消費増税の反動減は「想定内」というデータが多い。GIレースの売上、「嵐」の新曲「GUTS!」の売上も良さそう。夏以降の消費立ち直りにエルニーニョ現象が水かける懸念も」

2014年05月07日

 消費増税の反動減は「想定内」という感じが、いち早く数字で確認できたのはマーケットニュース(MNI)社が調べた百貨店サーベイだった。3 月は予想通り駆け込み需要もあり各社とも前年同月比+20%超の大幅増加であったが、4 月13 日まではその反動で大方が2 桁減となった。しかし、3 月分と4 月分(~13 日まで)の前年比の単純平均は各社とも2 月分より高かった。

 5 月1 日に発表された主要百貨店4社の4 月分売上高も前年同月比▲7.9%~▲15.3%で3 月分の同+22.0%~+36.0%と比べ絶対値で見て半分弱の伸び率にとどまった。また、4 月分の乗用車の新車新規登録届出台数は前年同月比▲5.1%で3 月の同+16.7%と比べ絶対値で見てこちらも半分弱の伸び率にとどまった。97 年4 月分では▲12.8%だった。どちらも反動減は「想定内」という感じだ。

 なお、内閣府はホームページで「消費税率引き上げ後の消費動向等について」を公表している。5 月2 日公表分によると、家電量販店主要5 品目の税抜ベース販売金額・前年比は2 月分+40%、3 月分は+92%と増加だったが、4 月は第1 週が▲19%、第2 週が▲2%、第3 週が▲12%、第4 週が▲13%の減少となっている。こちらはまだ前年比マイナス幅縮小基調にはなっていない。一方、スーパーの飲食料品(除く生鮮食品)販売金額の前年比は2 月分+0.4%、3 月分は駆け込み増で+6.6%の増加となったが、4 月第1 週は▲17.4%、第2 週は▲9.8%、第3 週は▲6.8%、第4 週は▲6.1%である。マイナス幅は少しずつ小さくなっている。

 「4 月から消費税が5%から8%に引き上げられることで、景気が一時的に悪化する」、という予測が前回引き上げのあった1997 年当時よりも今回はかなり早く発表された。代表的なものは2004 年から始まったオールジャパン民間エコノミストのコンセンサス調査である「ESPフォーキャスト調査」だ。14 年4 月のエコノミストの予想平均では、14 年度の実質成長率は+0.71%と1%割れ。13 年度は+2.25%と2%台の成長が見込まれている。こうした予測は1 年ぐらい前には出ていた。13 年3 月のエコノミスト予想平均でも、14 年度の実質成長率は+0.31%と1%割れ。13 年度は+2.20%と2%台の成長が見込まれていた。この予測値の背景は、4~6 月期は駆け込みの反動でマイナス4%台の前期比年率の成長率になってしまい、景気の一時的落ち込みはやむを得ないという見方が大勢であることを意味していた。

 こうした予測の浸透効果もあったのだろう。人々は4 月の消費税率引き上げ前から、増税の景気への影響を慎重にみていたようだ。今年は正月三が日の初詣の人出が前年より増えた。明治神宮は316 万人で前年より3 万人増、成田山新勝寺は305 万人で同5 万人増、川崎大師は300 万人で2 万人増だった。前回消費税が引き上げられた97 年は正月三が日の初詣の人出は逆に減少していた。96 年はバブル崩壊後で最も景気の良かった年だったので、人々も無防備だったのかもしれない。あまり初詣に行かず遊びや買い物にだけ出かけたのだろう。今回は人々の神頼み的な動きの増加に先行きに対する不透明感が感じられるが、その分、影響を既に慎重に見ていた。

 実際に経済統計の数字をみても前回97 年の引き上げ時よりも企業の慎重姿勢がうかがえる。例えば、鉱工業在庫率指数は2010 年を100 とした指数で直近の14 年1 月分が99.3 で13 年8 月分110.7 をピークに9 月から5 カ月連続で低下、低下幅は11.4 ポイントとなった。96 年8 月分から97 年1 月分では低下した月と上昇した月がほぼ半分ずつ、低下幅は半分以下の6.0ポイントにとどまっていた。もっとも3 月分速報値で鉱工業在庫率指数は105.9、前月比+2.6%で2 カ月連続の上昇になった。但し、13 年9 月分が108.2 で、105.9 という水準は13 年9 月分までの水準を下回っている。これまで企業は在庫を慎重にコントロールしてきていると考えられる。

 鉱工業生産指数3 月分速報値は前月比+0.3%と2 カ月ぶりの増加になった。製造工業生産予測調査によると、4 月分は前月比▲1.4%、5 月分は前月比+0.1%である。なお、非耐久消費財の実現率は+2.6%、予測修正率は+4.0%になった。消費財生産の先行きはそれなりに底堅いとみられる。今回の消費増税では、賃金上昇・夏のボーナスの増加、設備投資の増加や13 年度補正予算などの経済対策などによる景気の好循環が、消費増税の悪影響をある程度は打ち消す効果があるとみている。1~3 月期の輸出は弱含んだが、大雪で米国の1~3月期の実質経済成長率がわずか前期比年率+0.1%になったことや、自動車産業のように国内需要対応に振り向けた業種もあった特殊事情もあるようで4~6 月期以降持ち直すとみられる。景気後退局面入りする可能性は小さいだろう。

 前回97 年の消費税率引き上げ時期はアジア通貨危機のほか、北海道拓殖銀行や山一証券といった大手金融機関の経営破綻があった。消費増税の影響に加えて金融機関の不良債権問題が重くのしかかったのだ。幸いなことに今回は環境がまったく異なる。

 4 月17 日に4 月調査の「ロイター短観」が発表された。日銀短観が3 カ月ごとの調査なのに対し、ロイター短観は毎月調査する。4 月分は消費増税後の景況感が表れているとして判断されていよう。3 月は製造業の業況判断DIがプラス18 だったが、4 月はプラス25 と前月比7 ポイント上昇した。しかし、4 月前半の時期の調査だと、回答者が3 月の好調な販売指標を4 月上旬に見て答えている可能性もあることに留意が必要だ。景況感の良さが持続した可能性もある。回答者により判断にばらつきがありそうで、ある程度幅を持ってみた方が良さそうだ。97 年4 月に消費税率が3%から5%に上がった後もロイター短観(当時はテレレート短観200 社ベース)の製造業の業況判断DIは3 月のプラス18 から4 月はプラス23 と前月比5 ポイント上昇していた。下落は5 月になってからだった。

 4 月分の東京都区部消費者物価指数ではいよいよ消費税率が5%から8%へと引き上げられた影響が指数に反映された。日銀の3 月の金融経済月報の最後に掲載された(BOX.図表)には消費増税による物価上昇率の押上げ幅の試算値が掲載されている。それによると4 月分の東京都区部消費者物価指数の押上げ幅は、生鮮食品を除く総合が1.7%ポイントである。

 実際の4 月分(中旬速報値)の生鮮食品を除く総合の前年同月比は+2.7%と3 月分の+1.0%から消費税率引き上げ分だけ上昇するという結果となった。一部で懸念されていた消費税増税の影響以上に物価が跳ね上がるという動きは、マクロ的にみるとなかったと言えそうだ。

 身近な社会データは4 月に入ってもしっかりしているものが多い。「笑点」が、「その他の娯楽番組」の視聴率(関東地区)第1 位になったのは、昨年10 月は全週だった。台風の影響で買い物やレジャーを手控え日曜の夕方家にいた人が多かったのだろう。10 月分の消費総合指数は前月比0.6%低下した。今年は1~3 月期では2 月2 日までの週の1 回にとどまっている。4 月は、全ての週で第1 位にはならなかった。

 中央競馬の売得金の年初からの累計前年比は3 月30 日までで+5.4%だったが、4 月27 日まででは+4.2%であり、それなりの伸び率を保っている。今年のGIレースの売上(売得金)は、フェブラリーステークス、高松宮記念と2 レース続けて前年比減少したが、3 レース目となった4 月13 日の桜花賞で初めて前年比+8.5%の増加に転じ、翌週20 日の皐月賞でも前年比+7.8%であった。

 4 月30 日、人気アイドルグループ「嵐」の新曲「GUTS!」が発売された。メンバーの二宮和也さんが主演を務める日本テレビ系ドラマ『弱くても勝てます』の主題歌だ。 人気グループ「嵐」の曲が初めてオリコンシングルランキング年間第1位になったのは08 年8 月発売の「truth/風の向こうへ」。それに次ぐ08 年の第2 位を獲得したのが同年6 月発売の「One Love」だった。 「One Love」は「嵐」の22 枚目のシングルCDにあたる。今年2 月発売の「Bittersweet」が42 枚目のシングルCDだ。国民的人気グループとしての直近21 枚のシングルCDの初動売上枚数を景気局面別に比べると、12 年6 月発売の「Your Eyes」など景気後退局面で発売された5 曲の平均は約42.7 万枚。10 年11月発売の「果てない空」など景気拡張局面で発売された15 曲の平均は約51.7 万枚でおよそ9 万枚の差がある。景気拡張局面での発売でも国立競技場のコンサートチケット発売時期と重なった10 年7 月発売の「To be free」のように約42.6万枚という少ないケースもある。また景気の谷が1 回で09 年3 月発売の「Believe/曇りのち、快晴」で約50.1 万枚だった。大雑把に見て、初動50 万枚が景気局面の分岐点と言えそうだ。

 「GUTS!」は、ちょうど消費税率引き上げから30 日たった時期の発売だ。嵐ファンであれば初回限定版を買いたいだろうから、ファンの財布のしまり度合いがどの程度かを見る指標になる。嵐のファンは娘と一緒に「嵐」を楽しんでいる30~40代の主婦層が多いと思われる。こうした消費者の節約度を見るのに絶好の機会だ。28 日・29 日の俗にいう発表日前入手のフライングゲット分が30.8 万枚だったようで、前曲「Bittersweet」の最初の2 日間の29.1 万枚を上回ったようだ。

 但し、ウクライナ情勢などの海外要因の他にも、2 つぐらい不透明材料がある。景気に関し気懸りな点のひとつは、日銀の金融政策に対する認知度が低下していることだ。日銀が「生活意識に関する世論調査」で「量的・質的金融緩和」を行っていることを「知っている」と回答した人は3 月調査で全体の23.2%にとどまった。前回12 月調査30.2%、前々回9 月調査の29.4%から低下した。実質金利がゼロでお金を借りることが有利な状態にあるにもかかわらず、銀行・信金合計の貸出は1 月分の前年同月比+2.3%から3 月は+2.1%に鈍化した。また、貸出の鈍化の影響があるのかマネーストックもこのところ伸び率が鈍化している。1 月分と3 月分の前年同月比をみると、M2 は+4.3%から+3.5%へ、M3 は+3.5%から+2.9%へ、広義流動性は+4.5%から+3.7%へといずれも鈍化している。しかも広義流動性は季調済前月比が2 カ月連続マイナスになってしまっている。せっかくの量的・質的金融緩和の効果が世の中に広く伝わっていく必要があろう。

 第2 の懸念は、「夏には5 年ぶりにエルニーニョ現象が発生する可能性が高い」と気象庁が4 月10 日に発表したことだ。4月の消費税率引き上げで落ち込んだ消費が夏には立ち上がる、という期待が広がっているが、エルニーニョ現象が発生すると経験則上、冷夏になる可能性が大きく、エルニーニョ現象発生で景気回復へのシナリオが狂うおそれがある点だ。