宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

6月のトピック「4月以降の景気・物価動向は概ね『想定内』。大相撲の懸賞も3場所連続1100本台」

2014年06月03日

 内閣府は5 月30 日に「景気動向指数研究会」を開き、直近の「景気の谷」が2012 年11 月だったと暫定的に認定した。直近の「景気の山」は2012 年4 月と既に暫定的に認定されているので、景気後退期間は7 ヵ月間と戦後では51 年10 月までの4ヵ月に次ぐ2 番目の短さになった。欧州債務危機や再び70 円台の円高定着となったことなどが景気後退の主因であった。12年11 月を底として、翌12 月に発足した安倍政権のアベノミクス効果により、景気は約1 年半の拡張局面を続けている。

 4 月の消費税率引き上げの影響はこれまでのところ、一時的な落ち込みで景気後退にはならないという、想定の範囲内の動きになっているようだ。

 全国百貨店売上高4 月分は、3 月の駆け込みの反動もあり前年同月比▲12.0%と2 ケタ減少だが、下落率としては3 月分の+25.4%増の反動減としては小幅にとどまった。6 月2 日に発表された5 月分の大手百貨店売り上げは各社減少となったものの、その減少率は4 月より縮小して前年比1 ケタ台になった。消費税の販売への悪影響については、大きくはなかったと言えよう。

 同じく6 月2 日に発表された5 月分の新車新規登録届出台数は前年同月比▲1.2%の減少で、4 月分の▲5.5%から減少率が縮小した。うち乗用車は前年同月比▲1.3%で、4 月分の▲5.1%から縮小している。

 雇用はしっかりしている。内需がしっかりしてきたので、非製造業での円安によるコスト増の悪影響を需要増でカバーできたことなど雇用をめぐる環境は改善している。4 月分の完全失業率は3.6%という水準まで低下し、4 月分の有効求人倍率は1.08倍という水準まで上昇してきた。6 月3 日に発表された所定外労働時間指数の季節調整済み前月比は▲0.4%と3 月分が+2.3%も増加した翌月としては底堅かった。景気動向指数・一致指数に採用されている規模30 人以上の所定外労働時間指数でも▲0.5%にとどまり3 カ月前に比べ改善したため、4 月の一致DI では有効求人倍率とともにプラス符号となるようだ。

 また、消費増税の物価への影響も概ね想定内の動きのようだ。4 月分の全国消費者物価指数・総合指数は2010 年を100 とした指数が、消費税率を5%から8%に引き上げた影響を主因に103.1 となり、前月比は+2.1%の上昇、また前年同月比は+3.4%の上昇と3 月分の+1.6%から1.8 ポイントの上昇となった。91 年7 月分の+3.5%以来22 年9 ヵ月ぶりの上昇率だ。07 年10月から08 年12 月にかけて15 ヵ月連続で上昇して以来、5 年4 ヵ月ぶりの11 ヵ月連続のプラスとなった。

 日銀の3 月の金融経済月報の最後に掲載された(BOX・図表)には全国と東京都区部それぞれに、総合・生鮮食品を除く総合・食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の3 タイプに対し、フル転嫁を仮定した場合の影響と、4 月はまだ旧税率が適用される電気代などの経過措置の影響を含むベースの押上げ幅の試算値が掲載されている。それによると4 月分の全国消費者物価指数の押上げ幅は、総合が1.9 ポイント、生鮮食品を除く総合が1.7 ポイント、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合が1.5 ポイントである。4 月分の実績は総合が1.8 ポイント、生鮮食品を除く総合が1.9 ポイント、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合が1.6 ポイントだったので、概ね想定に近い前年同月比になったと言えそうだ。

 また、総合指数の季節調整済み指数は4 月分が102.8 で前月比+1.9%上昇した。生鮮食品を除く総合指数の季節調整済み指数は4 月分が102.9 で前月比+2.1%上昇した。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数の季節調整済み指数4 月分は100.4 でこちらは前月比+1.8%上昇した。この数字からは、日銀試算の増税による押上げ分を小幅上回って、物価が上昇した感がある。

 次に1 ヵ月早くデータがわかる5 月分の東京都区部消費者物価指数をみると、総合の前年同月比は+3.1%と4 月分の同+2.9%から上昇率を高め、11 ヵ月連続のプラスになった。5 月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、+2.8%で4 月分の+2.7%から若干上昇率を高め、13 ヵ月連続のプラスになった。5 月分の前月比は+0.3%だった。前年同月比は、92 年4 月分の+2.9%以来22 年1 ヵ月ぶりの高い上昇率だ。日銀の試算では経過措置の影響がなくなると、東京都区部では生鮮食品を除く総合は0.2 ポイント前年同月比が上がることになっている。5 月分の総合は0.3 ポイントの上昇だったが生鮮食品を除く総合が0.1 ポイントの上昇にとどまったので、5 月分では、税率引き上げ分を除くと、物価は生鮮食品では上昇したが残りの品目の合計ではわずかに鈍化したと考えられよう。

 景気に敏感な身近なデータでもあるCD 売り上げは4 月以降も好調だ。初動で50 万枚を突破するCD があると景気は拡張局面であることが多い。4 月30 日に発売された嵐の今年2 作品目のシングル「GUTS!」が、初動で50.1 万枚を記録し、5 月21 日に発売されたAKB48 の今年2 作品目のシングル「ラブラドール・レトリバー」が、初動で166.2 万枚を記録した。4 月・5 月と連続して50 万枚突破CD が出ていることは、消費税率引き上げ後でも人々の財布の紐が締っていないことを示唆する明るい材料だ。

 4 月に入ってから、5 月26 日から6 月1 日までの週まで、「笑点」の視聴率がその他娯楽番組における週間トップを1 度も獲っていないことも好材料だ。これは、人々が日曜日の夕方に出かけている可能性が高いと考えられ、笑点ファンの方々には申し訳ないが、景気が悪くないことを示唆する現象だと考えられよう。

 また、4 月以降のJRA(中央競馬会)売上高が好調に推移している。G1 レースの売得金は、2 月のフェブラリーステークスや3 月の高松宮記念で前年比減少していたが、4 月13 日の桜花賞から5 月25 日のオークスまで6 レース連続前年比増加となった。特にオークスは前年比+13.0%と2 ケタの伸び率になった。6 月1 日の日本ダービーでは前年比▲0.7%になってしまったが、出走取消などの特殊要因によるところが大きいとみられる。

 大相撲夏場所が横綱・白鵬の29 度目の優勝で幕を閉じた。夏場所は鶴竜の横綱昇進による13 年ぶりの3 横綱体制(曙、武蔵丸、貴乃花の01 年初場所以来)に加えて、新鋭の平幕・遠藤が初めて髷(まげ)を結って登場するなど、様々な話題を集めた。この夏場所で満員御礼になったのは10 度で2 ケタに乗った。国技館で満員御礼が2 ケタ台になったのは97 年夏場所以来17 年ぶりのことだ。この夏場所から懸賞1本がそれまでの6 万円から6 万2000 円に変わった。消費税率が引き上げられたことに伴う措置だ。それにもかかわらず、幕内取り組みへの懸賞は15 日間で1165 本となり、夏場所としては07 年の1109 本を上回る最多となった。過去最高記録の初場所1198 本、春場所1166 本に続き、初めて3 場所連続で1100 本を超え、企業の収益改善による広告費アップが裏付けられた。

 雇用情勢の改善や賃金もそれなりに上昇の動きも出ているため、夏のボーナスが伸びれば、6・7 月からの消費が支えられると考えている。企業業績は改善しており、多くの企業が賞与での対応を示しているため、マクロ的にみて夏のボーナスは増えるだろう。また、6 月12 日(現地時間)にはいよいよサッカーワールドカップのブラジル大会が始まる。日本代表が活躍すれば消費のサポート材料になろう。