宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

10月のトピック「足もとの景気指標の動向は真逆のものも。悪天候要因除くと身近な指標は底堅い」

2014年10月02日

 日本の景気に対する見方は、足もと不透明さを増している。アベノミクスによる中長期の緩やかな景気回復基調が底流にあり、短観的には消費税率引き上げで大幅ではあるものの比較的短期的な振幅があるというのが、従来の基本的な見方であった。しかし、2 月の大雪・8 月豪雨などの異常気象の影響が大きいことと、足もとの経済指標が様々な理由でまだら模様となり強弱感が対立し解釈が難しいという状況にあり、足もとの景気の不透明感が強まっている。

 家計調査や鉱工業生産指数などの主要指標では、増税後の個人消費の想定外の弱さや在庫調整局面入りという指摘がなされているが、真逆の内容となっている指標も多い。景気の悪さを指摘する指標として、家計調査による消費や所得の減少、鉱工業生産指数の減少、自動車などの在庫積み上がりが挙げられる。しかし、商業販売統計の小売業の売上は2 ヵ月連続前年同月比プラスで、毎月勤労統計では8 月分の「特別賞与」は2 ケタの前年同月比増加である。また生産指数と一緒に、景気動向指数・一致系列に採用されている中小企業出荷指数・前月比は7 月分+1.9%、8 月分+2.0%と2 ヵ月連続増加で、さらに中小企業の出荷指数・前年比が在庫指数・前年比を上回る傾向が続いている。この在庫サイクル図の動きも鉱工業生産指数と全く違う。在庫調整局面と言われる自動車、電気機械の日銀短観9 月調査の大企業業況判断DI が改善するなど、一方的な悪化に疑問を投げかける結果も出ている。数量重視から高付加価値重視になって利益を出そうとする企業の戦略の変化などが影響している可能性もある。

 機械的な判断である景気動向指数の一致CI を使った景気局面判断は、10 月7 日発表の8 月分で残念ながら「(下方への)局面変化」に下方修正されることが確実視され、1 月を山とする景気後退説が台頭してしまう可能性がある。しかし、後退期間は短く8 月頃を谷として回復局面に既に入っている可能性が大きいことになろう。9 月分以降11 月分まで一致CI の3 ヵ月後方移動平均の前月差が3 ヵ月連続増加することへのハードルはかなり低く、景気が拡張局面にあることを示す「改善」に戻ることも比較的容易であろう。消費税の10%への増税を判断しなければならない現在の局面は、従来になく経済指標の解釈の仕方が難しく、幅広いデータから慎重に見極める必要がある状況と言える。

 9 月30 日に発表された経済産業省発表の8 月分の鉱工業生産指数(2010 年基準)が前月比▲1.5%と2 ヵ月ぶりの減少になり、7~9 月期の前期比も減少が見込まれるという結果になったが、一方で中小企業庁発表の8 月分の中小企業生産指数(2005年基準)は前月比+1.1%で2 ヵ月連続増加と真逆の動きになった。また8 月分は鉱工業出荷指数が前月比▲1.9%と減少なのに対し、中小企業出荷指数は+2.0%と2 ヵ月連続の増加である。このように政府統計でも結果が最近はまだら模様だ。10 月1 日に発表された9 月調査日銀短観は、大企業・製造業の業況判断DI が6 月調査の+12 から1 ポイント改善し+13 になった。事前の予測では+10 程度への2 期連続悪化が見込まれていたが、結果は2 期ぶりの改善となった。6 期連続「良い」超が続いている。日銀短観は比較的景気は底堅いことを示唆する方の指標と言えそうだ。

 問題なのは、7 月分の家計調査のおそらく実体以上の弱さである。これを基礎データのひとつとするGDP 実質個人消費・類似データの消費総合指数は、7 月分で前月比▲0.6%となった。このため7~9 月期実質GDP の前期比年率+4%台の増加は難しくなった。

 7 月分の二人以上世帯の実質消費支出は前年同月比で▲5.9%だった。6 月分の▲3.0%より減少率が拡大した。消費税率引き上げの負担増が効いているという解釈がなされている。しかし、他の統計と比べると家計調査が弱すぎる感じがする。供給側の統計では7 月分の商業販売額・小売業は前年同月比+0.6%だ。家計調査は項目別の日次データがわかるなど、極めて有用なデータである。しかし、二人以上の調査世帯数が約8 千であり、サンプル数の少なさから振れやすい統計である。また毎日、例えば「さんま」何グラム、何円まで記入する負担は大変であり、長い期間回答をお願いすることは難しい。二人以上の世帯では同じ世帯が6 ヵ月間しか回答しない。このため1 年後に前年同月比を比較する際には全く違う世帯と比較することになる。

 最近の回答世帯では比較的低所得層が多いのではないかと思われる内容である。家計調査は支出に注目が集まるが、勤労者世帯の収入のデータもある。「臨時収入・賞与」は前年同月比▲2.9%とマイナスだ。今年はボーナスが前年より伸びたところが多いと報じられている状況とは全く異なる内容である。7 月分の毎月勤労統計によると「現金給与総額」は前年同月比+2.4%だ。ボーナスや一時金の「特別給与」は+7.3%だ。4 月からのベースアップ分の追加支給なども含まれていようが、家計調査の▲2.9%と+7.3%ではその差が10%超もある。毎月勤労統計との比較でも家計調査の収入面の弱さが目立つ。幅を持ってみる必要があろう。

 なお8 月分の家計調査では、「特別給与」は前年同月比2 ケタの増加になった。実質消費支出は前年同月比▲4.7%とマイナス幅が縮小し、実質消費支出(除く住居等)季節調整済み前月比は+2.1%と増加し、7 月分の弱すぎた数字からは回復した。毎月勤労統計8 月分速報値「特別給与」は前年同月比+14.4%だ。8 月分速報値の小売業の売上高は前年同月比+1.2%となった。3 ヵ月連続低下と報じられた8 月分景気ウォッチャー調査・先行き判断DI は、季節調整値では前月比上昇だ。今後出てくる景気指標の改善を期待したいところだ。

 7 月30 日から8 月26 日の期間の異常気象は、台風12 号・11 号が連続して接近・上陸するとともに前線が日本付近に停滞し、そこへ暖かく非常に湿った空気が連続して流れ込み、各地で大雨となったためだ。気象庁により「平成26 年8 月豪雨」と命名された。8 月分降水量は異常で、近畿地方は平年の3.85 倍、四国地方は同3.74 倍と1946 年の月次統計開始以降最高となった。また広島で土砂災害の被害が出た中国地方は、同2.76 倍で第3 位の記録である。8 月19 日夜から20 日明け方にかけて広島市を中心に猛烈な雨となった。

 「平成26 年8 月豪雨」は消費増税後の反動減からの景気回復に水をさした。8 月分の景気ウォッチャー調査の現状判断で雨・台風・土砂災害についてコメントした人(気温についての天候コメントを除く)を数えると全体の回答者1860 人中1 割強の191 人だった。約1 ポイント分8 月分の現状判断DI を下押しした。

 消費税引き上げ後も、限界的な雇用関連データと言える自殺者数は、前年同月比減少率が 4 月分の▲6.8%から7 月分の▲11.9%まで順調に拡大傾向だった。しかし8 月分では減少基調を継続したものの▲1.1%の小幅マイナスになった。中でも広島県は、前年比増加数が17 人で兵庫県の24 人に次いで2 位。また前年比増加率は+43.6%で、+50.0%の高知県、+45.5%の熊本県に次いで第3 位である。広島県警に問い合わせたところ自殺者の詳細はまだ把握されていないとのことで、土砂災害との関係は不明だが、なんらかの関係はありそうだ。

 東北四大まつりのひとつ山形花笠祭りは雨で3日目が中止になったことで、人出が昨年の90万人から63 万人に落ち込んだ。富士吉田市が発表している富士登山者数(7 月3 日~8 月31 日)は今年17.6 万人、前年比▲24.2%で、データのある2000 年からの15 年間では過去8 番目だが、07 年以来の10 万人台になった。減少の要因は、今シーズンはじめに残雪が多かったこと、マイカー規制の日数が増えたことなどもあるが、台風等による天候不順が大きく影響したようだ。

 こうした天候要因による悪影響を除けば、身近な社会現象は景気の底堅さを示唆するものが依然多いようだ。

 日曜夕方の放送の「笑点」視聴率が、今年は「その他の娯楽番組」で第1 位になる週がほとんどなく、日曜の夕方には出かけている人が多いことを示唆している。7~9 月期は1 度も第1 位にならず、消費の底堅さを示唆している。

 7 月の金融機関店舗強盗は昨年4 件発生したが今年は31 日に発生した1 件だけだ。昨年2 件だった8 月は、今年は20 日までで0 件だ。生活が苦しく包丁を持って郵便局に押し入る人は減っているようだ。

 中央競馬の売上(売得金)は9 月14 日までの週まで6 週連続で年初からの累計前年比が+2.4%と安定した動きのあと9 月21 日までの週で同+2.6%、そして9 月28 日までの週で同+2.7%と上昇してきている。3 年連続増加に向けて前進していると言える状況だ。

 大相撲の懸賞は初場所1198 本、春場所1166 本。夏場所1165 本、名古屋場所1166 本になった。4 場所連続1100 本台は史上初であった。夏場所での1 本6 万2000 円への値上げの影響はなかった。さらに秋場所は1381 本と初場所の1198 本という過去最高記録を大幅に更新した。初日は結びの一番白鵬と千代大龍に39 本が懸かった。14 日目の結びでの白鵬対新入幕で注目された逸ノ城の取組には36 本、そして千秋楽結びの白鵬対鶴竜には47 本懸かった。企業が広告費を出していることを意味すると思われる。