宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

11月のトピック「ミニ景気後退はついても、不況ではない。既に拡張局面入りをSMBC日本シリーズも示唆」

2014年11月05日

「何でもやる」日銀の強い姿勢を示した金融緩和拡大

 日銀は10 月31 日「量的・質的金融緩和」を拡大した。10 月31 日に9 月分全国消費者物価指数と10 月分東京都区部消費者物価指数の発表を受け、最近の原油価格の低下により全国コアCPI の増税分を除く前年同月比が9 月分で+1.0%となり、次回の10 月分で1%を割り込む可能性が大きくなった。このため、日銀は、デフレマインド転換が遅延するリスクを回避するために「何でもやる」という強い姿勢を示す、思い切った金融緩和の拡大に踏み切ったのだろう。

 FRB が10 月29 日に質的金融緩和の終了を決めた直後、予期せぬ形で日銀のさらなる緩和が実施されたため、資金供給面での不安が薄れ、世界の株式市場の上昇要因となったようだ。また、国内に目を転じると10 月31 日は、一部の朝刊で補正予算について報じられ、またGPIF の資産構成変更が発表された。「金融緩和の拡大」「GPIF」「補正予算」と材料が重なったことを好感した日経平均株価は週明けの11 月4 日には一時7 年ぶりの17000 円台をつけた。株価の上昇は資産価格効果などを通じてこのところ不透明さを増していた景気を、目先明るくする契機になろう。株価は景気の先行指標のひとつであり、景気の状況が悪ければ、金融緩和の拡大後に株価が大幅上昇することもないであろう。

 金融緩和の拡大で一時114 円台へ円安が進展した。円安の副作用を気にする向きもあるが、幸い原油価格をはじめ国際商品市況が大きく下落している。円安による輸入コスト上昇を懸念しないでも済む状況だ。

 また、円安が進んでも実質輸出が期待されたほど伸びないと言われている。製造業が円高時に海外に生産拠点を移した影響も大きいが、その分国内に残ったものは高付加価値の製品になっていよう。これまでの円安局面と違い、企業は円安が進んでも現地価格を引き下げない戦略をとっているようだ。その分、数量は出ないが、収益はしっかり確保しているようだ。なお、日銀が発表している実質輸出をみると7~9 月期は前期比年率+6.4%とプラスの伸びになってきている。

景気の基調判断の「悪化」へのもう一段の下方修正の可能性は小さく

 景気は不況というわけではないが、景気動向指数を使って判断すると1 月頃を景気の山、8 月頃を景気の谷とする「ミニ後退」が成立してしまう可能性がある、すっきりしない状況にある。もともと4 月の消費税引き上げに伴う景気の落ち込みは想定されていたが、自動車など耐久消費財の一部で予想以上に落ち込みが長引き、さらに2 月の大雪と8 月の豪雨という観測史上稀にみる異常気象が生じてしまった。このため下り坂期間が6 ヵ月を上回る可能性が大きくなり、「1 月が山、8 月が谷」とみられるミニ景気後退が意識されるようになった。

 一致CI を使った景気の基調判断が、8 月分でそれまでの「足踏み」から、景気の山がそれ以前の数ヵ月前にあった可能性が高い「下方への局面変化」に下方修正されたことも「景気後退説」を後押しした。景気後退説が台頭したため必要以上に人々の財布の紐が締まった感もある。9 月分でもやしの購入金額が増加したことは、人々の節約感の高まりを裏付けよう。

 しかし、9 月分速報値の鉱工業生産指数の前月比が+2.7%になると、持ち直しの動きが出てきた。11 月6 日発表の9 月分の景気動向指数・一致CI の前月差は+1.1 以上になりそうだ。予測どおりなら、1 月に発表される11 月分で3 ヵ月後方移動平均は前月差が3 ヵ月連続上昇になり、基調判断が景気拡張局面にあることを示す「改善」に戻る可能性が大きくなろう。「下方への局面変化」から「悪化」へ基調判断が下方修正されるには3 ヵ月後方移動平均の前月差が3 ヵ月連続下降することが条件だが、予測どおりなら、9 月分で3 ヵ月後方移動平均は前月差で6 ヵ月ぶりのプラスになり、3 ヵ月後方移動平均の前月差の連続下降が途切れ、「悪化」にもう一段下方修正される可能性は小さくなった。

 景気は底流にある回復基調は変わっておらず、緩やかに回復していくことだろう。7~9 月期の実質GDP は在庫要因と、7月分の家計調査の下方バイアスの存在などで前期比年率+1~3%程度の成長率にとどまろうが、その分10~12 月期の成長率が高めとなろう。景気に対する見方も年末・年始の頃になれば明るいものへと「逆転」しよう。

ソフトバンク対阪神のSMBC 日本シリーズ2014 も景気持ち直し示唆

 天候要因による悪影響を除けば、身近な社会現象は景気の底堅さを示唆するものが依然多いようだ。中央競馬の売上(売得金)は年初から11 月2 日までの累計前年比が+2.8%である。夏場は+2.4%がしばらく続いていたが最近上向いている。

 7 月の金融機関店舗強盗は昨年4 件発生したが今年は1 件だけだ。昨年2 件だった8 月は0 件だった。昨年3 件だった9 月も0 件だ。生活が苦しく包丁を持って郵便局に押し入る人は減っているようだ。東京23 区内のホームレスは今年8 月に914人と95 年の調査開始以来の最低を記録した。過去最高は99 年8 月の5798 人である。

 異常気象による影響か、8 月の降水量が過去最大級を記録した地域を中心に8 月・9 月の自殺者は増加したが、それでも全国ベースでは7 月の前年同月比▲11.9%の減少率からマイナスは縮小したものの、8 月同▲1.1%、9 月同▲0.3%と前年比マイナスを継続している。このように限界的な雇用関連指標は底堅い。有効求人倍率や完全失業率など、雇用指標もかなり良い水準を維持していると言える。

 景気動向指数を使った景気判断ではミニ後退があっても、ソフトバンクが日本一になったSMBC 日本シリーズ2014 が開催された10 月末には景気は持ち直し、既に谷を越えて景気拡張局面に戻っている可能性が大きいことを、ソフトバンク対阪神という各リーグ人気第2 位の球団同士の対戦カードは示唆している。

 プロ野球は、国民的人気ナンバーワンの「見るスポーツ」である。今年の読売新聞の「見るスポーツに関する世論調査」(1月27 日朝刊掲載)の「プロ野球チームの中で好きなチームは」の回答によると、巨人が好きな人は全体の27%、阪神は10%、広島は3%、中日は5%だ。これを基にセ・リーグのチームの人気ランキングを作ってみると、1 位は巨人、2 位は阪神、3 位は中日だ。一方、パ・リーグでは今年は、楽天が7%で第1 位、第2 位はソフトバンクの4%、第3 位は日本ハムの3%だ。

 セ・リーグとパ・リーグの代表が争う日本シリーズの組み合わせは、景気局面と連動するケースが多い。巨人・阪神のような人気球団が、パ・リーグの人気球団と対決した年は、景気が拡張局面になることが多い。86 年以降の結果を調べると、セ・パ両リーグの人気ランキングの合計数が2~5 のケースは16 回あるが、そのうち景気拡張局面は15 回で、景気後退局面は1回だけである。なお、唯一の後退ケースは一昨年の巨人対日本ハムのケースで、日本シリーズが行われていた10 月下旬から11 月上旬のうち、10 月は後退局面であったが、11 月は景気の谷でありその後、拡張局面入りした。今年の日本シリーズの組み合わせの人気ランキング合計は4 で、日本シリーズ開催時期は景気拡張局面である可能性大である。

 日本シリーズ直後の日銀短観の12 月調査(96 年以前は11 月調査)で、73 年以降の大企業・全産業・業況判断DI の前年差とセ・リーグの日本シリーズ出場チームの関係をみると(83 年までは主要企業短観)巨人は16 回で平均+9.6 ポイント上昇である。ちなみに、リーグ優勝しながら中日に日本シリーズ出場を許した07 年は前年差▲6 だった。中日・広島・ヤクルト・DeNA の4 球団が日本シリーズに出場した22 回の平均は▲7.1 ポイントと下落である。巨人の改善幅には及ばないが、73 年以降、阪神が日本シリーズに出場したのが3 回で平均+1.7 ポイント上昇であり、12 月短観の数値改善が期待されるところだ。なお、73 年以降、ソフトバンク(ホークス)が日本シリーズに出場したのは5 回でそのうち4 回が上昇、平均+20.0 ポイントの大幅上昇であることも景気にとって心強いデータである。

「今年の漢字」として「天」で応募

 11 月1 日から募集が始まり、12 月12 日に清水寺で日本漢字能力検定協会から発表される「今年の漢字」だが、私は「天」で応募した。
 ①2 月の大雪、8 月の豪雨と景気に大きな影響を及ぼす「天候」だった。

 ②今年大ヒットしたディズニー映画「アナと雪の女王」にも雪という「天候」に関する言葉が入っている。

 ③今年のNHK 大河ドラマは秀吉の「天下」取りを支えた「軍師官兵衛」だった。

 ④小学生の間で人気がある「妖怪ウォッチ」の主人公の名前は「天野景太」である。

 ⑤今年、ヒットした映画のひとつに「るろうに剣心」がある。主人公の緋村剣心が強敵・志々雄真実に最後に放った技刀術が飛天御剣流の奥義「天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)」である。

 ⑥女子レスリングの吉田沙保里選手が9 月11 日に世界大会(五輪+世界選手権)で、前人未到の15 連覇を達成した。その日は今年3 月に亡くなられ天国で見守る父・栄勝さんの祥月命日だった。

 といった様々な理由から「天」を選んだ。

 「今年の漢字」はその年の年末の景況感と一致することが多い。暗い意味の文字ではなく、「天」が選ばれ、年末には世の中が明るい見通しを持つようになってほしいところだ。