宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

12月のトピック「足元、政府統計に変化の兆し。中島みゆき2度目の紅白出場も景気に前向きな動きの兆し」

2014年12月03日

悲観論を払拭する最近の経済指標

 11 月末から12 月初にかけて発表された10 月分鉱工業生産指数、家計調査、労働力調査、一般職業紹介状況、7~9 月期の法人企業統計などの指標は、世の中に蔓延する景気悲観論を打ち消すような内容と言えよう。これらを使って作成されるGDP や景気動向指数なども明るい数字になりそうだ。鉱工業生産指数・10 月分速報値は製造工業生産予測指数の前月比▲0.1%に反して、前月比+0.2%と2 ヵ月連続の増加になった。表面的な数字ではたいした差はなさそうだが、製造工業生産予測指数などと組み合わせてみると、生産は豪雨のあった8 月分を底に前月比で増加基調になっていることがわかる。

 生産指数がプラスになったことから10 月分の一致CI は前月差+0.2 以上の上昇になる可能性が大きくなった。10 月分の一致CI が+0.2 以上のプラスなら、3 ヵ月後方移動平均は前月差で2 ヵ月連続のプラスに、7 ヵ月後方移動平均は前月差で5 カ月連続マイナスになろう。一致CI を使った機械的な景気の基調判断は、現在、景気の山が数ヵ月前にあった可能性が高い「下方への局面変化」だが、これが景気拡張局面の可能性が高いことを示す「改善」に戻るには、前月差が上昇になることを前提に、原則として3 ヵ月後方移動平均が3 ヵ月以上連続して上昇すればよい。10 月分が予測通りで過去の数字が変わらなければ、1 月9 日発表の11 月分の前月差が▲1.7 程度でも、3 ヵ月以上連続して3 ヵ月後方移動平均が上昇することになるので、あとは11 月分の前月差が+0.1 でも上昇しさえすれば、「改善」に戻れる。11 月分の製造工業生産予測指数の前月比が+2.3%となっていることや、有効求人倍率に対し先行性がある新規求人倍率が10 月分は1.69 倍で前月より0.02 ポイント上昇していることなどからみて、前月差が+0.1 以上になる可能性はかなり大きいと考えられる。

10~12 月期GDP はプラス成長か

 個人消費の需要サイドの主要統計である家計調査は前年同月比は依然マイナスだが、いち早く動く前月比でみると変化が出ている。昨年度の後半は駆け込み需要が出ているので、前年同月比でみるとなかなか改善しないので景気変化の方向としては現局面では前月比でみた方が良いかもしれない。家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の10 月分の前月比は+1.5%だ。また、10 月分の対7~9 月平均比は+1.2%の増加になった。乗用車販売台数の10 月分の対7~9 月平均比は+4.6%の増加になった。個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の10 月分の対7~9 月平均比は+0.5%の増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+0.3%の増加だ。参考までに商業販売額指数・小売業の10 月分の対7~9 月平均比をみても+1.1%の増加である。供給サイドと需要サイドのデータはどちらも増加を示している。さらにGDP 統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の7~9 月期から10~12 月期へのゲタは+0.5%とプラスである。まだ10 月分だけであるが、総合的に考えると、10~12 月期第1 次速報値の個人消費は、前期比でしっかりした増加となる可能性が大きいとみられる。

 設備投資の関連データである資本財出荷指数の10 月分の対7~9 月平均比は+4.8%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同+5.4%の増加になった。また、建設財は同+1.0%の増加になった。供給サイドから推計される10~12 月期の実質設備投資は前期比増加となりそうだ。なお、実質輸出入の動向をみると輸出の10 月分の対7~9 月平均比は+4.9%の大幅増加になった。輸入は同+0.5%の増加になっている。10~12 月期の外需の前期比寄与度は3 四半期連続で前期比プラス寄与になりそうだ。

 なお、7~9 月期の法人企業統計の内容も良かった。全産業の経常利益は前期比も前年同期比もプラスになり、全産業の設備投資(除くソフトウエア)の前期比は+3.1%、前年同期比は+5.6%となった。GDP の設備投資を作成するにはその伸び率より割引かれる数字が使われるとみられるが、第1 次速報値で前期比マイナスになった設備投資が前期比プラスに転じそうな内容である。原材料在庫などを中心に在庫投資は下方修正されそうだが、内容は大きく改善すると言っていいだろう。

物価の先行指標に反転の動き

 10 月分の全国消費者物価指数は+2.9%と+3.0%を割り込み、コアの前年同月比が消費税増税分を除くと+0.9%と+1.0%割れとなった。しかし、これは足もとのエネルギー仮想等の上昇率縮小などによるものである。日銀が10 月31 日に追加緩和を実施していることから、しばらくするとCPI コアの前年比も反転に転じそうだ。足元、全国消費者物価指数の前年同月比は総じて鈍化傾向だが、企業向けサービス価格指数の前年同月比が10 月分で若干伸び率を高め、11 月分の日経商品指数が上昇基調に戻り、11 月分の企業物価指数の前年同月比が伸び率を高めそうな状況なので、これらに対し遅行性がある消費者物価指数の前年同月比の流れも近々変わると考えられよう。

 日本シリーズの対戦カードがソフトバンク対阪神と各リーグ人気第2 位同士のチームの対戦となったことから、経験則上は10 月下旬の景気は拡張局面入りしている可能性が大きい。

12 月総選挙は日経平均上昇100%

 12 月14 日が総選挙の投開票日となった。12 月投票の総選挙に関して過去の経験則で見ると、現憲法下で12 月投票の総選挙があった過去5 回の月末の株価は11 月末比で上昇している。株価は10 月頃が1 年で一番季節的に落ち込みやすい。米国株が季節的に売られやすい時期だからだ。引きずられて日本の株価も軟調になりやすい。そのあと12 月に向け米国ではクリスマス商戦が盛り上がり10 月頃を底に株価は季節的に上昇しやすい。米国株価上昇は日本の株価上昇につながる。

 80 年以降の12 月の日経平均株価の騰落を見ると上昇24 回、下落10 回。上昇確率は7 割だ。12 月に総選挙があった年は上昇率が100%であることは注目すべきだろう。元々上昇しやすい時期なのに加え、政治の清新さへの期待感が株価を押し上げるのだろう。また、12 月の景気局面は5 回とも拡張局面だ。12 月14 日が投票日の今回の総選挙は足元、景気拡張局面にあることを示唆する。

 身近な社会現象は景気の底堅さを示唆するものが相変わらず多い。大相撲九州場所の懸賞本数は1190 本と地方場所として過去最高を記録し、足もとも企業の広告支出が堅調であることを裏付けている。中央競馬のGI レースをみると11 月30 日開催のジャパンカップの売上が前年比で+19.3%となった。これで秋のGI レースの前年比は台風18 号の影響でマイナスになったスプリンターズ・ステークスを除き、10 月19 日の秋華賞以降6 レース連続してプラスである。11 月30 日までの売得金の年初からの累計前年比は+3.6%と、このところ上昇傾向で3 年連続の増加になりそうだ。

 アクティブシニアや外国人の旅行需要も相変わらず堅調だ。金沢兼六園の入場者は3 月分以降前年同月比で増加が続いていて、10 月分、11 月分はともに約2 割増と高い伸び率になっている。訪日外国人旅行者数は1~10 月分で1100.9 万人と過去最高だった昨年年間の1036.4 万人を上回った。円安の効果もあり今年は1300 万人超が見込まれる。

中島みゆき紅白出場は12 年前同様景況感にプラスか

 紅白歌合戦に中島みゆきさんが12 年ぶりに2 度目の出場をすることが決まったことも景気にとって明るい兆しと言えそうだ。前回は2002 年に出場し、NHK「プロジェクトX」の「地上の星」を歌い全出場歌手の中で最高視聴率を記録した。紅白をきっかけに年明け後、CD を購入する人が増えた。オリコンヒットチャート登場130 週目で第1 位になった。これは杉良太郎の「すきま風」の147 週目、千昌夫の「北国の春」の134 週目に次ぐ史上3 番目の遅咲きの第1 位の記録となった。

 この歌は「プロジェクトX」というNHK の人気番組の主題歌で、皆がよく知っている歌のはずだ。だから、改めてCD が売れるというのは、やはりちょっと不思議な感じがする。ただ、NHK の紅白歌合戦の時には2 番の歌詞を間違えテロップが消えた。やはりあそこに何が書いてあったのだろうと、気になった方も多かったのではないかと思う。歌詞を間違えたことが不幸中の幸いというか、注目を集めてCD を買う人が増えたのだろう。「地上の星」の歌詞を改めて多くの人が確認したことで、やはり地道に一人ひとりが持っている技術力とか、創造力とか日本人独特の木目細かなサービス、そういったものを活用して頑張っていくということが大事なんだと感じた人が多かったのだろう。一人ひとりが「地上の星」になって頑張ることの大切さを感じ取ったことが、その後の息の長い「いざなみ景気」につながった面もあると思われる。

 今回はNHK 朝の連続テレビ小説「マッサン」の主題歌「麦の唄」を歌うとみられる。日本で初めて国産ウィスキーを作った夫婦が主人公のドラマだ。12 年前と同様、前向きの変化につながることを期待したいところだ。