宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

1月のトピック「逆転目立った14 年。景気認識も「逆転」か。商品番付・東西の横綱「インバウンド消費」・「妖怪ウォッチ」に引き続き消費下支えを期待」

2014年12月25日

「逆転」が2014 年のキーワード

 「税」が14 年の今年の漢字に選ばれたが、仮に漢字2 文字で良ければ14 年のキーワードは「逆転」だと思う。逆転に次ぐ逆転の展開が続く「ルーズベルトゲーム」は4~6 月期に放映された連続ドラマだ。当初は視聴率が低迷していたが最終回で当該クールの第2 位まで順位を上げた。さらに、その後発表された録画再生率で「笑っていいとも・最終回」などを抑え、第1位となったことで評価が逆転した。他にも、日本シリーズやMLB ワールドシリーズの出場チームなど「逆転現象」が目立った。

 12 月になっても、男子フィギュアスケートで羽生結弦選手が流血事故から完全復活し、今季世界最高点を出しグランプリ・ファイナル優勝。日本人初の2 連覇を果たすという逆転劇を演じた。サッカーJリーグでは、ガンバ大阪が、参加数18 チーム・前期後期の 2 ステージ制ではなく1 シーズン制となった05 年以降で、勝ち点差14 をひっくり返しての最大の逆転優勝を果たした。

 12 月24 日に発表された大相撲初場所の新番付発表でも、一時は西三段目84 枚目まで大きく陥落していた土佐豊という力士が18 場所ぶりに幕内復帰を果たすという「逆転」劇があった。幕内経験者では麒乃嵐の東三段目25 枚目を下回り、戦後最も低い地位から復帰したことになる。土佐豊は前頭筆頭だった11 年名古屋場所で左膝を損傷し、1 年後の名古屋で再び痛めて3場所全休した。手術をして半年間のリハビリで、「普通に歩けなかった」ところから復帰した。

 また、12 月10 日には気象庁が「エルニーニョ現象は既に夏から発生していたと考えられる」と発表、一時は消滅したかとも思われていたエルニーニョ現象が14 年6 月から発生していたことを認めた。

 足もと、景気は悪くなっているという見方も多いが、そうした景気認識も逆転しそうだ。

「GDP」統計が11 月景気ウォッチャー調査に影響か

 11 月調査の「景気ウォッチャー調査」では、初めての珍しい現象が起こった。「GDP」という用語を景気判断の理由の説明に使った人が9 人もいた。これまでは14 年8 月調査で1 人いた程度だ。7~9 月期のGDP は消費税再引き上げの判断材料として注目されていた。しかも、事前の予測に反してマイナス成長だったことがショックだったのだろう。「GDP」を挙げた回答者では「良くなっている」「やや良くなっている」というコメントは皆無だった。

 また、急激な円安を背景に「為替」に関するコメントをする人が増えた。物価上昇への懸念等に結びつけたコメントが多かった。現状判断の理由、説明に「為替」に関してコメントした人は7 月調査で4 人、8 月調査で8 人の一桁にとどまっていたが、11 月調査では52 人になった。半分超が「やや悪くなっている」「悪くなっている」の理由に挙げている。11 月調査では先行き判断の理由に為替を挙げた人が110 人と3 ケタにのぼった。

 7~9 月期第1 次速報値で実質GDP がマイナス成長になったのは、天候不順をはじめ様々な要因があるが、統計技術的な要因で約6 割を占める個人消費が想定外に弱かったことが主因だろう。個人消費の弱さを消費増税の影響が予想以上に大きかったからだとみる向きも多いが、需要サイドの基礎統計である家計調査のサンプルの弱さについては、日銀が10 月の展望レポート「本文」で詳しく指摘している。またGDP の個人消費の類似統計でありほぼ同じ数字になる消費総合指数の7~9 月期は前期比+0.7%というのが一番初めの発表だった。しかしGDP の個人消費は+0.4%だったので0.3 ポイントも下振れるという異常事態になった。年率ベースでは1%強の下振れだ。毎回季節調整をかけ直すGDP 統計では、リーマンショックから時間が経っていてその影響が剥落してきているため、現時点では数字の変化が大きいのであろうか。

「水準」でみるとエコノミストの予測は正しかった

 7~9 月期の実質GDP は第2 次速報値(改定値)でも下方修正になった。エコノミストの予測が「またしてもはずれた」と話題になったが、不幸にも統計技術的な様々な要因が重なっていることが原因だと思われる。例えば12 月8 日の7~9 月期GDP第2 次速報の公表時点で、前年度・前々年度という過去の数字が大きく変わったことも理由のひとつだ。

 第2 次速報値段階の14 年7~9 月期の値を(過去の数字が変わらなかったと仮定して)第1 次速報値段階の4~6 月期の値と比べると、実質GDP は前期比▲0.2%、設備投資は前期比+0.7%である。各々第1 次速報値の▲0.4%、▲0.2%から改善しており、エコノミストの事前の平均予測に近い伸び率になる。12 年度の設備投資の伸び率は+0.7%から+1.2%へ、13 年度の設備投資の伸び率が+2.6%から+4.0%と上方修正されており、過去の数字が大きく変わったことが、事前の予測に反して設備投資が下方修正された要因のひとつであろう。

 7~9 月期の実質GDP が下振れ、それを受けて景気ウォッチャーのマインドが下振れたという悪循環が生じた可能性がある。しかし、2 月に発表される10~12 月期の実質GDP は足元の関連データから判断ししっかりしたプラス成長に戻る見込みだ。欧州などの景気のもたつきが懸念されるが、米国は7~9 月期の実質GDP が最終推定値で前期比年率+5.0%と個人消費が一段と改善したことで上方修正された。10~12 月期へのゲタが上方修正されたことで、12 月分が前月比ゼロでもGDP の7 割弱を占める米国・個人消費の10~12 月期は前期比年率+4.2%と高い伸び率になることになっている。米国中心に世界経済は底堅く推移することが期待される。

 急激な円安や原油安による不安もだんだんと落ち着いてこよう。春闘での賃上げも期待される。もたつき局面を乗り越えてデフレから脱却し、景気の好循環局面がいよいよ始まりそうだ。

15・16 年度2 年続けて高めの成長率か

 15 年度の実質GDP 成長率では、14 年度の後半がしっかりした伸びになるため、前年度からのゲタが高くなる。16 年度は17年4 月の消費増税に絡んだ駆け込み需要が見込まれる。14 年度のマイナス成長の後は、2 年続けて1%台後半の実質GDP 成長率になる可能性が大きいだろう。

 景気にとって明るい材料をひとつ挙げよう。日経MJ による2014 年ヒット商品番付で東西の横綱は「インバウンド消費」と「妖怪ウォッチ」だった。インバウンドとは、他地域から観光目的などで訪れる客や、その客を受け入れること。日本の場合は、外国からの訪日旅行者を示す。「インバウンド消費」と「妖怪ウォッチ」が消費を盛り上げる流れは、2015 年にも受け継がれよう。

「インバウンド消費」と「妖怪ウォッチ」の両横綱は2015 年も健在

 日本政府観光局によると、11 月の訪日外国人数は116.9 万人。前年同月比は+39.1%と、14 年の中では1 月の+41.2%に次ぐ高い伸び率になった。過去最高の訪日外国人数は13 年通年の1036.4 万人だが、14 年1~11 月分で既に過去最高を大きく上回る1217.8 万人となった。14 年12 月22 日には成田空港で1300 万人達成のセレモニーが行われた。

 14 年が1300 万人を超えたことで、20 年の2000 万人目標達成に向け順調に推移している。最近の円安基調やアジア諸国向け観光ビザの発給要件緩和が主因だ。

 観光庁によると訪日外国人の旅行消費額は7~9 月期では5505 億円と、同期の名目GDP(原系列)の0.46%に上る。10 月1日からは消費税の免税対象がほぼ全品目に広がった。日本百貨店協会の調査(対象46 店舗)では外国人観光客の売上高・前年同月比は10 月分2 倍強、11 月分2.5 倍強となっている。地方の免税店が増加していけば、「地方創生」とも絡めるアイディアとともに、今後さらなる経済効果が期待できよう。

 子どもの歌がヒットすると景気が良いことが多い。オリコンランキングが始まった60 年代後半以降、子どもの歌のミリオンセラーは「黒猫のタンゴ」をはじめ5 曲あるが、発売は全て景気拡張局面に当たる。親が子供にCD を買ってあげられる余裕があるからだろう。子どもを中心に大ブームとなっている「妖怪ウォッチ」関連の2 枚のCD が14 年10 月下旬に発売されたが、どちらも12 月14 日までで約9 万枚ずつと順調に売れている。人気グループ、嵐と人気アニメ「妖怪ウォッチ」が大みそかの第65 回NHK 紅白歌合戦で共演するという。企画枠で初出演し、同作の主題歌「ゲラゲラポーのうた」などを披露する男女3人組、キング・クリームソーダと5 人組ユニット、Dream5 のステージに嵐が登場。ジバニャン、フユニャンら同アニメのキャラクターと一緒に紅白を盛り上げるという。

 「妖怪ウォッチ」の人気妖怪ジバニャンが大好きなアイドルとしてアニメの世界ではおなじみの「ニャーKB」が現実の世界でAKB48 とコラボレーションすることが12 月16 日『第4 回AKB48 紅白対抗歌合戦』が開催された東京ドームシティホールで発表された。AKB48の島崎遥香ら7 人が妖怪ウォッチのゲーム内のレア・キャラクター「ツチノコパンダ」と一緒にコラボレーションしたグループ「ニャーKB with ツチノコパンダ」を結成し、CD デビュー(タイトル、発売日未定)する。この新曲は、テレビ東京系『妖怪ウォッチ』の15 年1 月9 日放送分からエンディングテーマとして流れる。嵐効果・AKB 効果で「妖怪ウォッチ」関連のCD が一段と売れそうだ。

 妖怪ウォッチに関するゲームや玩具など関連グッズの販売が好調である。12 月20 日に公開されたアニメ映画「妖怪ウォッチ誕生の秘密だニャン!」が土日2 日間で興行収入16 億2889 万円を記録した。配給の東宝によると、同社配給作品では過去最高の記録ということだ。これまでの最高は2004 年公開のジブリ映画「ハウルの動く城」の14 億8300 万円(最終興収196 億円)だったということだ。