宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

2月のトピック「黒田投手の広島復帰がデフレ脱却目指す黒田日銀総裁を後押し」

2015年02月03日

2 四半期連続マイナスのGDPなどから先行き不安も。成田山の初詣参拝者増える

 今年の正月三が日の「成田山新勝寺」の初詣参拝者は308 万人で前年より3 万人増え、96 年の315 万人以来の多さとなった。バブル崩壊により91 年から96 年までの5 年間、成田山新勝寺の初詣参拝者は概ね増加傾向だった。「苦しい時の神頼み」をした人が多かったのだろう。その後、02 年の1 月を谷とする「いざなみ景気」の拡張局面では「何とかなった」という安心感から概ね300 万人を下回る状況が続くが、07 年の姉歯事件、08 年のリーマン・ショックが景気を直撃した時期を境に、再び参拝客は増えて300 万人近くになった。なお、14 年までは参拝者数はほとんど横ばいで、300 万人前後で推移しているが、これには若い世代を中心に、「パワースポット」が流行り始めた影響があるとみられる。15 年の308 万人への増加はこの流れに加えて、足もとの景気不透明感が重なっているものと思われる。

 日銀の「生活意識に関するアンケート調査」(14 年12 月調査)では、「1 年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか」という質問に「悪くなった」という回答が38.8%で、前回9 月調査の31.5%から増えた。「そのようにお考えになるのは、主にどのようなことからですか」という理由で9 月調査から増加したのは「マスコミ報道を通じて」「景気関連指標、経済統計をみて」「商店街、繁華街などの混み具合をみて」で、各々+2.9 ポイント、+1.9 ポイント、+2.6 ポイントだった。逆に「勤め先や自分の店の経営状況から」「自分や家族の収入の状況から」「その他」という回答割合のウエイトは減少した。各々▲0.7ポイント、▲2.7 ポイント、▲0.7 ポイントの減少だった。

 昨年秋は7~9 月期のGDPが第一次速報値も、第二次速報値もエコノミストの予想を下回り、消費税率の引き上げが先延ばしされたことから「景気は悪いのではないか」と感じた人々が多かったのだろう。GDPショックが人々のマインドにマイナスの影響をもたらしたと思われる。

身近なデータの逆転現象に続き、経済統計も2 月には逆転へ

 この「トピック」で毎月紹介してきているが、昨年は年央の「ルーズベルトゲーム」に始まり12 月のサッカーJリーグのガンバ大阪の史上最大の逆転優勝など「逆転現象」が目についた。この流れは年が明けても続いていて、いよいよ景況感も「逆転」することを示唆しているように思われる。

 青山学院大学の初優勝となった箱根駅伝では、山梨学院大学で大逆転でのシード権獲得が話題になった。14 年は2 区でオムワンバ選手が棄権し、予選会からの出場となった15 年はまたも厳しい展開となった。2 区を走る予定だったオムワンバ選手が欠場となり1区緊急投入の田代選手が区間最下位、2 区に入った選手も厳しい結果で、2 区終了時では最下位であった。しかしその後は盛り返し、7~9 区で11 位、10 区の選手が区間3 位の快走で9 位になり10 位までに与えられるシード権を逆転で獲得した。

 逆転現象は身近なデータから経済統計にも及ぼう。景気動向指数による機械的な景気の基調判断は8 月分以来11 月分まで「下方への局面変化」である。それは、景気の山がそれ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示唆する弱い判断だ。

 2 月6 日に12 月分・速報値は発表される。ここで、景気の基調判断が「下方への局面変化」から「悪化」に進むのではなく、逆転で「改善」に上方修正されよう。11 月分で3 カ月後方移動平均の前月差は2 カ月連続のプラスになってリーチがかかっている。一致CIを使った景気の基調判断が「局面変化」から「改善」に戻るには、前月差上昇で、かつ原則として3 カ月以上連続して3 カ月後方移動平均が上昇すれば良い。12 月分の一致CI前月差が+0.2 以上の上昇になるなら、3 カ月以上連続して3 カ月後方移動平均が上昇となる。12 月分の前月差は1 ポイント台の大幅上昇が見込まれる。景気拡張の可能性が高いことを示唆する「改善」に上方修正されれば、悲観的な世の中の景況感も良い方へ“逆転”しよう。

 2 月16 日に発表される10~12 月期の実質GDP第一次速報値は前期比年率+3.8%程度のしっかりしたプラス成長を予測する。円安の動きが落ち着いている。原油安のプラス効果がだんだん出てこよう。

「妖怪ウォッチ」関連の子供の歌のヒットが意味するもの

 子どもの歌がヒットすると景気が良いことが多い。オリコンランキングが始まった60 年代後半以降、子どもの歌のミリオンセラーは「黒ネコのタンゴ」をはじめ5 曲あるが、発売時期は全て景気拡張局面に当たる。親が子供にCDを買ってあげられる余裕があるからだろう。

 子どもを中心に大ブームとなっている「妖怪ウォッチ」関連では10 月29 日に発売されたDream5+ブリー隊長が歌う「ダン・ダン ドゥビ・ズバー!」と、キング・クリ-ムソーダが歌う「祭り囃子でゲラゲラポー/初恋峠でゲラゲラポー」のCD2 曲が1 月25 日までで各々10.5 万枚、10.0 万枚と順調に売れている。

 人気グループ、嵐と人気アニメ「妖怪ウォッチ」が大みそかのNHK紅白歌合戦で共演した。「妖怪ウォッチ」は14 年の紅白歌合戦も盛り上げた。Dream5 が「ようかい体操第一」を披露した。その1 時間後に妖怪たちは再登場し、ジバニャン、フユニャンら妖怪5 匹が嵐の「A・RA・SHI」を本人たちと一緒に踊った。続いてキング・クリームソーダがAKB48 らを従えて、「ゲラゲラポーのうた」を歌った。この2 曲は昨春発売だが、「ようかい体操第一」は年明けとともに100 位圏内に戻ってきた。AKB48 の島崎遥香ら7 人が妖怪ウォッチのゲーム内のレア・キャラクター「ツチノコパンダ」と一緒にコラボレーションしたグループ「ニャーKB with ツチノコパンダ」が歌う「アイドルはウーニャニャの件」は、テレビ東京系『妖怪ウォッチ』の1 月9 日放送分からエンディングテーマとして流れている。嵐効果・AKB効果で「妖怪ウォッチ」関連のCDは一段と売れそうだ。妖怪ウォッチに関するゲームや玩具など関連グッズの販売や映画の興行収入も好調である。

大相撲初場所懸賞本数史上最高更新は企業収益堅調示唆

 有効求人倍率が12 月分で1.15 倍と22 年9 カ月ぶりの高水準になり雇用環境は良くなっている。限界的な雇用の数字と言える自殺者数は、12 年から14 年まで3 年間連続して3 万人を割り込んだ。大相撲初場所の懸賞本数は1625 本と史上最大である。企業が広告費を出す余裕があることを示唆する。企業収益が堅調で、雇用環境が改善する中、世の中の景況感が明るくなる中で春闘での賃上げが期待される。もたつき局面を乗り越えてデフレから脱却する、景気の好循環局面がいよいよ始まりそうだ。

原油価格の影響度を別に示した日銀の物価見通し

 日銀が展望レポートの中間評価で2015 年度の消費者物価(コア)上昇率の見通し中央値を10 月時点の+1.7%から+1.0%へ引き下げたことで、+2.0%を目指す日銀の金融政策が失敗したというような見方もマーケットには出ているが、そうした意見は表面的な数字だけを追いすぎている感じがする。

 2001 年9 月に日銀で開催された第3 回物価に関する研究会で「物価の安定を巡る論点整理(白川方明・門間一夫)」という報告論文が提出されている。その中で物価の変動要因がまとめられている。フィリップス曲線などを使って説明される現在の日銀の物価見通しは、この変動要因に基づいて作られているように思われる。

 第1 は需要要因で、それを表す指標としてGDPギャップが挙げられている。第2 は期待インフレ要因である。GDPギャップとインフレ率の間に負の相関関係がありグラフに描くとフィリップス曲線になる。インフレ率の変動はフィリップス関係上の動きである需要要因だけでなく、フィリップス曲線自体が上下にシフトする要因もある。期待インフレ率はその変動要因のひとつである。それ以外が価格ショック、供給ショックなどと供給要因だが、これは事前の予想は難しい。これまでの日銀の物価の見通しは、主にGDPギャップと予想インフレ率をもとに作成されてきたとみられる。

 事前に予測できない今回の原油価格の急落といった供給要因は当初の見通しには入っていなかったと思われる。今回の中間評価で日銀はドルベースで原油価格の前提と、その消費者物価指数への寄与度を発表した。これにより原油価格の影響(▲0.7~▲0.8%)を除けば、2015 年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)前年度比の見通し中央値は+1.7~+1.8%であることがわかる。これまでの+1.7%という見通し中央値と変わらない。原油価格の下落はマクロモデルなどによると、名目成長率の押し上げなど総じてプラス効果が大きい。問題は原油価格の下落が、デフレマインドからの脱却を妨げることであろう。日銀の物価見通しが生鮮食品を除いたものになっているのは、一時的な変動要因に惑わされることを回避するためである。原油価格の下落の影響は別途考慮するかたちで、物価動向を判断することが大切だろう。

長いデフレの時代は15 年間Bクラスだった広島カープ

 今年のプロ野球では昨年までヤンキースにいた黒田博樹投手が広島に戻ってくる。これで前田投手との2 枚看板になり、広島の3 年連続のAクラスが期待できる状態だ。

 広島がセ・リーグで初優勝した1975 年以降2013 年までの名目GDP成長率と広島の成績を見ると、広島の活躍がデフレ脱却につながるように見える。広島がAクラスになった20 回分の名目成長率の平均は+6.0%で、最低は94 年の+1.0%だ。75年から13 年までの全期間での平均は+3.4%、最低は▲6.0%で、大きく差がある。広島の優勝年の6 回の平均の名目成長率は+7.4%、2 位の年6 回の平均は+5.9%、3 位の年8 回の平均は+5.0%である。

 広島のAクラスは金融危機が発生した97 年まででいったん終わっていた。その後の長いデフレ時代はBクラスで、13 年に3位で16 年ぶりにAクラスに戻った。14 年も3 位とAクラスが続くことに併せたようにデフレ脱却の動きが出てきた。「カープ女子」という流行語もできるほど、若い女性が新たに広島ファンになって応援している。黒田博樹投手が加わる今年もAクラス入りが期待でき、デフレ脱却を目指す黒田東彦日銀総裁への応援材料になりそうだ。