宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

目につく逆転現象。2 月には景気動向指数による景気の基調判断にも及ぶ

 昨年から今年にかけて身近なデータでは「逆転現象」が目についた。例えば、4~6 月期の連続ドラマでは池井戸潤氏の原作で2 作品が放送された。「花咲舞が黙ってない」の方は10%台後半の高い視聴率が続き高評価だった。しかし、「ルーズヴェルト・ゲーム」は10%台前半の視聴率が続き、評価は高くなかった。決して諦めない主人公たちの逆転につぐ逆転の物語だったが、視聴率も最終回で17.6%を記録し、「逆転」でクール第2 位に浮上した。さらに、録画再生率では見事第1 位であったことが判明し評価を高めた。また、夏の甲子園の予選決勝で星稜高校が0 対8 から大逆転で甲子園出場を決めた。12 月にはサッカーJ リーグのガンバ大阪の史上最大の逆転優勝。今年1 月には箱根駅伝で、1 区・2 区で最下位だった山梨学院大学の大逆転でのシード権獲得があった。

 「逆転現象」は身近なデータから遂に2 月には経済統計にも及んできた。景気動向指数による景気の基調判断は昨年8 月分以来11 月分まで「下方への局面変化」であった。それは、景気の山がそれ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示唆する弱い判断だった。しかし、2 月6 日に12 月分速報値が発表され、通常の流れでは「下方への局面変化」から景気後退局面にあることを示す「悪化」に進む基調判断が、異例の経路を辿り景気拡張局面にあることを示す「改善」に上方修正された。景気判断の大逆転だ。

 2 月12 日発表の12 月分の機械受注は事前予想を大きく上回る伸び率になり、1~3 月期の見通しを含め3 四半期連続増加見込みとなった。内閣府の判断も11 月分の「持ち直しの動きに足踏み」から「緩やかな持ち直し」に上方修正された。2 月16日発表の10~12 月期の実質GDP 第1 次速報値では3 四半期ぶりのプラス成長になった。

 3 月6 日発表予定の1 月分速報値の景気動向指数は前月差上昇幅が12 月分より大きくなり、景況感の機械的判断が「改善」の状況にあることが、再確認される見込みだ。

しっかりしている企業収益動向

 企業収益の動向はしっかりしている。法人企業統計によると10~12 月期の全産業・経常利益は前期比+10.0%増、前年同期比+11.6%増とどちらも2 ケタの伸び率になっている。企業収益の好調は、14 年度の3 兆円超の補正予算作成にあたって、公債費を減額しつつ税収の上振れ分を歳入に計上するほどだ。14 年度の実質GDP 成長率が、当初の政府経済見通しのプラス成長から約2%分下振れてマイナス成長が確実視される状況と相反する状況だ。

 企業収益が良いと広告費も伸びる。広告費の代理変数とも言える大相撲の懸賞本数は1 月の初場所で1625 本と過去最高を記録した。千秋楽結びの一番には特例措置で史上最高の61 本が懸った。地方場所の最高は昨年11 月に開催された九州場所の1190本だが、3 月の大阪場所で記録を更新する可能性が高いだろう。

 企業の経営環境の良さが雇用状況の改善に結びついている。有効求人倍率が12 月分・1 月分で1.14 倍と22 年9 カ月前の92年4 月分の1.14 倍以来の高水準となったことをはじめ、雇用環境は良い。限界的な雇用の数字と言える自殺者数は、12 年から14 年まで3 年間連続して3 万人を割り込んだ。15 年の1 月分でも前年同月比▲2.5%と改善基調が継続している。

「インバウンド消費」と「妖怪ウォッチ」の両横綱は2015 年では堅調

 日経MJ の2014 年ヒット商品番付で東西の横綱は「インバウンド消費」と「妖怪ウォッチ」だった。インバウンドとは、他地域から観光目的などで訪れる客や、その客を受け入れることである。日本の場合は、外国からの訪日旅行者を示す。「インバウンド消費」と「妖怪ウォッチ」の盛り上がりは、2015 年になっても継続している。

 2014 年に1341.4 万人と過去最高になった訪日外国人数は2015 年1 月では121.8 万人、前年同月比は+29.1%と高い伸び率になった。昨年は1 月下旬から春節が始まっていたが、今年は2 月中旬~下旬であり、2 月の中国系の訪日外国人の伸びは相当高かったとみられる。また、スノーレジャー需要もあり、訪日外国人全体の伸び率は高いものになったとみられる。訪日外国人数は20 年の2000 万人という目標達成に向け順調に推移している。円安基調やアジア諸国向け観光ビザの発給要件緩和が主因になっている。

 観光庁によると2014 年訪日外国人の旅行消費支出額は2 兆305 億円で過去最高となった。一人当たり15.1 万円支出している計算になる。昨年の訪日外国人の旅行消費支出額は名目GDP の0.42%に上る。昨年10 月1 日からは消費税の免税対象がほぼ全品目に広がった。日本百貨店協会の調査では外国人観光客の売上高・前年同月比は1 月分2.8 倍強という高い伸び率になっている。2 月分はさらに伸び率が上昇していそうだ。なお、地方の免税店が増加していけば、「地方創生」とも絡めるアイディアとともに、今後さらなる経済効果が期待できよう。

 子どもの歌がヒットすると景気が良いことが多い。親が子供にCD などを買ってあげられる余裕があるからだろう。子どもを中心に大ブームとなっている「妖怪ウォッチ」関連で現在発売中の4 枚のCD 売上枚数は合計で40 万枚を超えている。妖怪ウォッチに関するゲームや玩具など関連グッズの販売なども好調である。

個人消費関連は1 月分中心に弱含みだったが、足元持ち直し基調に転じるものも

 1 月分の個人消費関連の指数は弱めなものが多かった。物価上昇に消費税引き上げ分も加味されて実質化されている、家計調査の実質消費支出は前年同月比▲5.1%で10 カ月連続マイナスになった。また、百貨店売上高は東京、大阪では前年同月比プラスの伸び率となったが、全国ベースでは前年同月比▲2.8%と10 カ月連続マイナスの伸び率である。景気の好循環がなかなか地方に届いていないという面に加えて、1 月には日本海側で大雪が降ったことも影響していそうだ。

 金沢兼六園の入園者数は消費税率が引き上げられた昨年4 月分以降も前年同月比でしっかりしたプラスの伸び率が続いてきたが、1 月分で▲13.2%と減少した。しかし2 月分では+6.8%の増加と持ち直した。佐賀県の吉野ケ里歴史公園の入園者数も1 月分で▲8.1%と減少したが2 月分では+14.0%の増加とこちらも持ち直した。

 中央競馬のGI レースの売上(売得金)年初からの累計前年比は、昨年の2 月の開催が関東の大雪の影響のため不規則だった反動で読みづらかったが、3 月1 日までで+1.4%増加した。今年最初のGⅠレースのフェブラリーステークスの前年比は+3.2%の増加になった。

春闘ではそれなりの賃上げが期待され、景気の好循環局面が始まろう

 このところ日用品の中で価格が値上がりしているものも散見されるので、CPI の伸び率が鈍化しても消費者の財布の紐はきつくなっている面もありそうだ。実質賃金が19 カ月連続して前年同月比マイナスだということも心理面でマイナスになっていよう。消費マインドの改善が目先の注目点だろう。消費動向調査の消費者態度指数や景気ウォッチャー調査の現状判断DI は11 月分を底に12 月分・1 月分と緩やかではあるが、どちらも連続して改善しているのは明るい兆しだ。

 全体として企業収益が好調な中、春闘ではそれなりの賃上げが期待される。消費税率引き上げの前年同月比への影響が4 月分になると剥落することを考えると、実質賃金の前年同月比は15 年度のどこかでプラスに転じる可能性が高いとみられる。賃金所得の増加が報じられるようになると、人々が安心し、個人消費の増加に結びついていくという、景気の好循環局面が始まりそうだ。