宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

4月のトピック「15 年、20 数年の節目を乗り越えて緩やかな景気回復継続。但し一部指標は弱め」

2015年04月01日

消費者マインドは改善の兆し

 春の訪れとともに、景気判断も徐々に明るくなってきた。代表例としては、2 月・3 月発表分連続で、景気動向指数の判断が、それまでの弱めの判断から「改善」になっていることが挙げられよう。4 月6 日発表の2 月分も3 ヵ月連続「改善」が予測される。

 春闘での賃上げのニュースなどがプラスに作用し、消費者マインドも少しずつ明るくなってきた。「消費動向調査」の消費者態度指数(一般世帯・季節調整値)は2 月分で40.7 と昨年8 月分以来半年ぶりに40 台まで戻ってきた。「景気ウォッチャー調査」の現状判断DI・季節調整値は2 月分で50.7 へ回復、消費税率引き上げ直前の昨年3 月分の53.4 以来11 ヵ月ぶりに景気判断の分岐点の50 を上回った。

 家計調査によると、2 人以上世帯の1 世帯当りの「すし(弁当)」の購入金額は1 日平均20~40 円程度だが、節分の恵方巻きが反映される2 月3 日は高額の支出となる。10 年から14 年までは5 年連続400 円台、14 年は418 円66 銭だった。しかし15 年は財布が緩み、内容が豪華になったのか、504 円88 銭と前年比約2 割上昇している。

今年の花粉飛散数は個人消費サポートか

 身近なデータではこの春は花粉の飛散数が医療費の面から、個人消費にプラスに働きそうだ。今年の東京・大田の花粉飛散数予想値(最大・最小の平均)は、85 年~14 年の30 年間の実績平均値を100 とした指数で122。飛び始めから約1 ヵ月半の3 月25 日現在で104 である。一昨年は132 で歴代第9 位、昨年は100 で歴代第11 位であった。今年は両者の間で歴代第10 位程度に相当しそうだ。

 05 年のように369 とあまりに多く飛ぶ年は人々が外出を控えることから個人消費にはマイナスに寄与するが、100 の前半台程度でほどほどに飛ぶ年は消費にプラスに働く。今年3 月分の家計調査の前年同月比は昨年の駆け込み需要の反動でマイナスにはなってしまうが、花粉飛散数はマイナス幅縮小要因になりそうだ。

15~18 年ぶり、金融危機の落ち込み克服を示唆する明るい指標

 最近は、15~18 年ぶり、あるいは22~23 年ぶりといった金融危機、バブル崩壊といった過去の問題を克服したことを示唆する明るいデータが散見される。景気は15 年度を迎え、経済の好循環が良い進展をみせていくと思われる。

 日経平均株価は、景気ウォッチャー調査・現状判断DI が上昇トレンドに転じ1 ポイント以上前月差で改善するという買いサインが1 月13 日に点灯したことを受け、その日の終値1 万7087 円71 銭から上昇し、3 月26 日以降下降気味だが、終値ベースで3 月は13 日以降31 日まで連続して1 万9000 円台で推移した。日経平均株価の1 万9000 円台は、2000 年4月以来約15 年ぶりの水準だ。98 年頃の金融危機とそれに続くIT 景気の時期以来になる。金融危機の落ち込みをやっと克服したことにつながる節目の数字と言えよう。

 2000 年4 月中旬の日経平均株価の終値をみると、週末の14 日に2 万0434 円68 銭と最後の2 万円台をつけた。4 月15日土曜日には日経平均株価採用銘柄のうち30 銘柄を24 日から入れ替えることが発表された。日経平均株価は週明けに急落し、17 日に1 万9008 円64 銭、18 日1 万8969 円52 銭、そして19 日に一旦1 万9086 円62 銭に戻したが、それが当時最後の1 万9000 円台になった。今回はそれ以来の1 万9000 円台である。

 約15~18 年ぶりに良い数字というデータは他にも結構ある。

 例えば完全失業率は14 年12 月分で3.4%まで下がったが(15 年2 月分は3.48%の3.5%)、これは97 年8 月の3.4%以来、約17 年ぶりのことである。限界的雇用関連データの年間自殺者数は98 年に初めて3 万人を超え、03 年には過去最悪の3 万4427 人を記録した。10 年からは減少基調になり、12 年に2 万7858 人と15 年ぶりに3 万人割れとなった。その後14 年の2 万5427 人まで3 年連続3 万人割れ、今年も1~2 月平均で前年比▲4%の減少となっている。

 中央競馬の売上(売得金)の前年比は98 年から11 年まで14 年間連続してマイナスだったが、これも15 年ぶりに12 年にプラスとなり、その後12 年から14 年まで3 年連続プラス、今年も3 月29 日現在+0.4%のプラスとなっている。

 大相撲春場所は初場所に続き2 場所連続で15 日間満員御礼を記録したと話題になった。これは「若貴ブーム」に沸いた90 年初場所から、その年の秋に金融危機が発生した97 年春場所までの、44 場所連続以来18 年ぶりだ。春場所の懸賞本数は1374 本と昨年九州場所で記録した1190 本の地方場所最高記録を更新した。企業収益が好調で広告費が出ていることを示唆する数字と考えられよう。

 プロ野球セ・リーグで広島のチーム成績とその暦年の名目GDP 成長率の間には相関関係がある。広島A クラスは山一證券、北海道拓殖銀行の経営破たんが起こった97 年11 月直前の97 年シーズンまでで、その後13 年にA クラスに戻るまで、15 年間連続B クラスであった。この15 年間の名目GDP 成長率の平均は▲0.6%。広島がA クラスになった13 年・14 年は1%台のプラスに戻った。

バブル期近くまでの水準回復示唆する約22 年ぶりの数字

 さらに約22~23 年ぶりの明るいデータも多い。22 年ぶりというとバブルが崩壊した91 年直後の92~93 年以来の水準ということになる。バブルのピークに近いところまで戻ってきたということを示唆する。

 日銀短観の中小企業・非製造業・業況判断DI は、13 年12 月調査でバブル崩壊直後の92 年2 月調査以来、約22 年ぶりにプラスになった。旧ベースの14 年12 月調査では▲1 だが、3 月2 日に日銀が発表した調査対象企業定例見直し後の新ベースでは14 年12 月調査は+1 になった。4 月1 日発表の15 年3 月調査では+3 だった。

 雇用吸収力がある業種が多い非製造業の景況が約22~23 年ぶりにプラス圏にあることは雇用にプラスだろう。15 年2 月 分の有効求人倍率が 1.15 倍に上昇し、92 年3 月の1.19 倍以来約23 年ぶり高水準に戻っている。バブルの時に近いところまで回復していることを示すデータである。なおこうした雇用面の改善基調が、今年の春闘での賃金引き上げの背景にあろう。

目先は弱い経済指標発表も

 但し、東京で桜が開花した3 月23 日の翌日から北風が吹く寒い日が数日続いたように、日本の経済指標も一本調子で明るい内容のものが続くわけではないだろう。4 月下旬から5 月中旬頃の指標には弱めのものも出てきそうだ。まず、4 月30 日発表の3 月分の鉱工業生産指数は2 ヵ月連続前月比減少が見込まれる。また、全国百貨店売上高は2 月分が11 ヵ月ぶりに前年同月比で増加に転じたが3 月分では減少に転じそうだ。春節の時期の中国人観光客の爆買い効果が剥落し、日本人の消費が弱いので駆け込み需要増の反動が出たと報じられよう。昨年2 月の大雪の反動で、2 月分が強かったことはあまり報じられないだろう。

 前期比年率2%台後半の増加と言われていた1~3 月期の実質GDP 成長率は、またもや期待を裏切り、現時点のデータからは、ゼロ%台の低成長率になってもおかしくない。1 月分の消費総合指数は10~12 月期の平均を0.3%下回っている。GDP の約6 割を占める個人消費は良くて横ばいといった状況だ。実質輸出の1~2 月平均の10~12 月平均比は1.9%増で実質輸入の3.7%増の約半分強だ。外国人旅行者の購入増はあっても外需は前期比マイナス寄与になりそうだ。

 しかし、東京の桜が3 月29 日に満開となったように、生産、GDP などのデータも4 月以降は好転が予測される。

 6 月初めには明るいデータが待っていよう。実質賃金は5 月初め発表の3 月分まで21 ヵ月連続前年同月比マイナスになろう。しかし、消費税率引き上げの影響が一巡し、春闘の賃上げ実施効果が出る4 月分以降は実質賃金がプラスに転じてもおかしくない。これは消費者マインドを一段と改善させ、消費増に結び着くだろう。

新しい局面示唆する史上初のデータ

 史上初、過去最高というデータも多数ある。

 ひとつ例を挙げると、外国人観光客増加を目指す「ビジット・ジャパン」が始まった03 年には521 万人にすぎなかった訪日外国人旅行者は、14 年には史上初めて1300 万人を超えた。観光庁によると訪日外国人旅行消費額は2 兆0305 億円と推計される。GDP 統計でも、14 年の実質ベースの非居住者家計の国内での直接購入、つまり外国人旅行者の国内消費は1 兆5892 億円で、居住者家計の海外での直接購入(日本人旅行者の海外での消費額)1 兆2956 億円を初めて上回った。インバウンド消費が日本経済を下支えする効果が大きくなってきていることがわかる数字のひとつである。