宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

5月のトピック「デフレ脱却着実に。東京23 区ホームレス過去最低778 人。夏場の懸念、エルニーニョ。」

2015年05月01日

1~3 月期の実質GDP 成長率は弱めだが15 年度に入ると景気好循環の流れは強まろう

 15 年1~3 月期の実質GDP 第1 次速報値は5 月20 日に発表されるが、5 月初めの時点のデータから予測すると前期比年率+1%台程度とみられ、事前に言われていた同2%台の成長には届きそうにない。

 GDP の約6 割のウエイトがある個人消費は弱い。昨年GDP が2 四半期連続マイナス成長になったことなどで、人々のマインドが一時下振れたことが大きいと考えられよう。GDP の実質個人消費の類似指標である1~2 月分の消費総合指数が10~12 月分の平均に対しほぼ横ばいにとどまっているからだ。3 月分消費総合指数の前月比が、そこそこの伸び率になっても、過去の数字のリバイスがなければ1~3 月期のGDP の実質個人消費は前期比+0.2%程度と小幅の伸びにとどまりそうだ。但し、需要サイドの3 月分の個人消費データはしっかりしているので、個人消費の4~6 月期へのゲタは高めになりそうだ。

 消費増税前の駆け込みが大きくその反動も大きくなったと言われる14 年度は、実質GDP 成長率当初発表分は前年度比▲1%程度になってしまうだろう。しかし、春闘の賃上げ率などの動向からみて、15 年度は個人消費も持ち直していこう。4~6 月期以降のGDP 成長率はしっかりした伸び率が期待され、景気の好循環の流れは今後強まろう。今年度は原油価格が底打ちしつつも低位安定し、ドル円レートが120 円前後の円安水準で安定的に推移しそうなことも景気にはプラスに働こう。

ボックス圏の相場水準続くドル円レート

 ドル円レートは日米の金融政策の方向性の違いからみて、基本的にはドル高・円安であろう。

 米国の金融政策に関して年央以降の利上げを市場は織り込み済みである。但し、足もとの米国指標のもたつきがあり、6 月の利上げはなさそうな状況になっている。但し、1~3 月期の実質GDP 成長率が前期比年率+0.2%と弱かったのは、急激なドル高や原油安によるエネルギー産業へのマイナスの影響もあるが、寒波と西海岸の港湾ストといった特殊要因の影響が大きいだろう。

 また、3 月分の雇用統計で非農業部門の雇用者数の前月差は+12.6 万人と予想を大幅に下回ったが、これは3 月分が当初弱めに出て翌月4 月分発表時に上方修正されやすいという季節性によるところが大きいとみられる。

 雇用関連19 指標を総合したLMCI 指数は3 月分▲0.3 と上昇トレンドが一時途切れたが、4 月分以降は概ね緩やかな上昇基調に戻ろう。寒波の影響もあり、個人貯蓄率は2 月分 5.7%、3 月分5.3%で最近の平均値より高い状況だ。これは状況が落ち着くと個人消費が増加する要因になりやすいとみられよう。米国経済指標の持ち直しを確認したあとで、FED は慎重に利上げを実施すると考える。

 内閣府によると今年1 月時点の日本企業の採算レートは1 ドル=99 円程度である。またOECD によると2014 年の購買力平価は1 ドル=104 円程度である。現在の118~122 円程度のレンジ推移は日本の輸出企業にとってかなり有利に働いている。また最近の為替の変動幅は小さく、急激な円安進行で原材料コストの大幅上昇が懸念された時期とは異なろう。

 ESP フォーキャスト調査4 月分では、先行きのドル円レート直近の平均値は120 円台前半での推移となっている。

デフレ脱却の動きは着実に

 全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は昨年5 月分の+3.7%をピークに今年2 月分で+2.0%まで低下した。消費増税の影響の寄与度の+2.0%を除くと、2 月分は実質的には前年同月比0.0%となる。日銀の物価目標にほど遠い数字なので、一部には4 月30 日の日銀金融政策決定会合では追加緩和を実施するのではという見方もあったが、結局、政策変更は行われなかった。昨年10 月に日銀が追加緩和を決めた時は急激な原油価格の低下が生じている時期で、人々のデフレマインドが再び強まってしまう懸念があったため政策変更が行われたが、現在は状況が異なると判断したのだろう。原油価格も低水準ながら底を打ち上向いている。賃金も上昇の流れにある。経団連の第1 回集計では今年の大手企業の春闘賃上げは+2.59%で昨年の+2.34%を上回り、98 年の+2.56%を上回る伸び率になった。先行きGDP ギャップの縮小が見込まれ、期待インフレ率が低下する事態は回避されている。

 直近になって物価が上昇基調を強めているデータがある。天候不順で生鮮野菜の値段が上がったこともあるが、東大日次物価指数の7 日移動平均が4 月11 日以降直近29 日分まで19 日間、前年比プラスで推移している。直近の4 月29 日は0.4413%だ。これは、便乗値上げが実施されているのかもしれないと騒がれた昨年4 月3 日~24 日の22 日間以来の長いプラス継続である。また、5 月1 日発表の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は、3 月分では+2.2%に伸び率を高めた。4 月分の東京都区部・消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は、消費税引き上げの影響がほぼ一巡した4 月分でも+0.4%とプラスの伸び率をキープした。雇用環境の改善は人件費の影響を受けやすいサービス価格に影響しているようだ。企業向けサービス価格指数の前年同月比は消費税率が引き上げられた昨年4 月分以降、直近の2 月分まで+3%台で推移している。

AKB48 関連CD、花粉飛散数、金沢兼六園入園者、姫路城入城者、インバウンド消費など、景気の良さを示唆

 身近な社会現象も緩やかな景気回復を示唆しているものが多い。

 3 月に発売されたAKB48 の「Green Flash」、AKB48 の公式ライバルグループ乃木坂46 の「命は美しい」、そしてSKE48 の「コケティッシュ渋滞中」の3 曲は全て初動50 万枚を突破する売上枚数となり、景気が拡張局面にあることを示唆した。

 また、4 月8 日に発売したアニメ「妖怪ウォッチ」エンディング曲の「アイドルはウーニャニャの件」はオリコン初登場で第2 位となった。4 月26 日までで4.2 万枚売れている。子供の歌で売れる時は母親の財布の紐が緩んでいることになる。

 今年東京・大田の花粉の飛散数は過去3 年間の平均を100 として4 月22 日で127.9 である。これは歴代10 位に相当する数である。ほどほどに花粉が飛んだ年に該当し、過去の経験則からは外出を手控えるような花粉の多さではない年には、花粉症対策のマスクや薬などが売れることで個人消費にはプラスに働くことになる。

 北陸新幹線が3 月14 日に開通した金沢では、兼六園の3 月の入場者が前年同月比+58.2%、4 月分は54 万人で桜のシーズンに当たり前年同月比+39.4%増と高い伸び率だった昨年4月分と比べても、前年同月比+1.1%と増加となった。また平成の大修理を終え、5 年ぶりに天守閣の中に3 月27 日から入れるようになった3 月分の姫路城の入城者数は、前年同月比+105.1%と前年の倍以上になった。4 月分では一段の伸び率が期待されることころである。

 14 年に実質ベースで初めて外国人の国内の直接購入が日本人の海外での直接購入を上回り、GDP でも日本の成長に寄与した。インバウンド消費は今年も好調である。訪日外国人は1~3 月期で413.1 万人と前年同月比+43.7%。昨年の1341.35 万人にこの伸び率を掛けると1927 万人になり、2020 年の目標である2000 万人達成が前倒しになりそうな勢いである。外国人観光者の百貨店売上は2 月、3 月と前年比+200%を超えている。

金融機関強盗、ホームレスなど改善、3 月分の完全失業率は97 年6 月以来の3.35%で3.4%に

 限界的な雇用関連指標も良い。金融機関の店舗強盗事件は今年3 月20 日までで6 件である。全体で31 件と少なかった昨年でも同時期は10 件だったので、今年は一段と件数が減少する傾向にある。自殺者数は1 月から3 月まで3 ヵ月連続して前年同月比減少している。平均して▲3.3%の減少である。4 年連続の3 万人割れに向けて好スタートが続いている。東京23 区内のホームレスは今年1 月調査で778 人と、統計がある95 年以降最低の数字になった。過去最大は99 年8 月の5798 人だった。5月1 日発表の3 月分の完全失業率は3.4%と昨年12 月分と同水準だが、小数点第2 位までみると12 月分は3.44%、3 月分3.35%で0.1%近い差がある。3.35%は97 年6 月以来、17 年9 カ月ぶりの低水準である。

夏場の景気の懸念材料のひとつはエルニーニョ現象

 懸念されるのはエルニーニョ現象だ。4 月10 日の監視速報で気象庁は「夏までに再びエルニーニョ現象が発生される可能性が高い」とした。昨年は結局6 月以降エルニーニョ現象だった。このため、冷夏的な天候により夏場の個人消費の弱含みにつながった。

 2 月・3 月のエルニーニョ監視指数はどちらも+0.2℃であった。しかし旬のデータでみると、もうかなりエルニーニョ現象になりそうな気配である。3 月中旬の監視指数は0.0℃だったが、3 月下旬に+0.6℃と一気に上昇し、4 月上旬+0.7℃、4 月中旬+0.9℃と上昇傾向にある。今年は東京と大阪の桜の開花日の差が3 日で平年の2 日を上回ったため、冷夏になっても不思議はない。夏場の天候と消費への影響が懸念される。