宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

6月のトピック「4 月速報値で実質賃金上昇、緩やかながらも景気の好循環が今後も期待される」

2015年06月02日

鉱工業生産指数は緩やかな増加基調は維持、景気動向指数も「改善」継続

 鉱工業生産指数・4 月分速報値前月比は+1.0%となった。3 ヵ月ぶりの増加である。製造工業生産予測調査によると、5月分前月比は+0.5%増加、6 月分は同▲0.5%の減少である。鉱工業生産指数・季節調整値の3 ヵ月後方移動平均値は14年8 月分の97.3 をボトムに12 月分・3 月分の横這いを含み7 ヵ月連続前月比増加基調の後、4 月分で前月比▲1.0%と減少に転じ、98.7 になった。但し、製造工業生産予測で延長すると、5 月分は前月比+0.2%、6 月分は同+0.4%と増加になる。3 ヵ月後方移動平均値は、振れがあるものの、緩やかな増加基調は維持していると考えられよう。

 経済産業省の基調判断は14 年12 月分に「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」に3 ヵ月ぶりに上方修正された。15 年1 月分・2 月分・3 月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置きだった。4 月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置かれた。

 鉱工業生産指数を11 の採用系列のひとつとする景気動向指数も同様の動きとなっている。2・3 月分と2 ヵ月連続下降だったが、機械的な景気基調判断では「改善」継続となっている。景気動向指数・一致CI を使った景気の基調判断は14 年12月分以来の、「改善を示している」という判断が6 月5 日発表の4 月分でも継続になろう。4 月分は、一致CI の3 ヵ月後方移動平均と7 ヵ月後方移動平均の前月差はともに2 ヵ月連続の下降になるものの、一致CI の前月差が上昇になると予測されるので、「改善を示している」を維持する。恣意性がない機械的な景気の基調判断で、5 ヵ月連続で「改善」が続くことは、人々の景気に関する悲観的な見方を徐々に払拭させる材料と言えよう。

設備投資上方修正で、民需中心に一層の回復を確認へ

 15 年1~3 月期実質GDP 成長率・第1 次速報値は前期比+0.6%、前期比年率+2.4%と2 四半期連続のプラス成長になった。国内・民需を中心に景気回復していることを確認できる内容になった。

 民間エコノミストのコンセンサス調査である「ESP フォーキャスト調査・5 月調査」では15 年1~3 月期実質GDP 成長率の平均予測値は前期比年率+1.84%であった。+2.4%という結果は予測平均値を上回る伸び率だった。

 設備投資は前期比+0.4%、住宅投資は前期比+1.8%と、どちらも4 四半期ぶりの増加になった点も注目される。1~3月期の機械受注(除船電力を除く)の見通しは前期比+1.5%の増加であったが、季節調整替えがあったものの、実績は+6.3%と見通しを大幅に上回っての見通し達成だ。これで昨年7~9 月期以降3 四半期連続の前期比増加。半年程度の先行性を考えると、7~9 月期の増加がGDP ベースの設備投資の1~3 月期増加に対応しよう。機械の設備投資が目先増加基調であることを示唆する。

 法人企業統計が反映される第2 次速報値では設備投資は上方修正、在庫投資は下方修正が見込まれ、内容的に一段と良くなろう。15 年1~3 月期の法人企業統計(速報値)の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は+8.1%と8 四半期連続の増加になった。3 月確報分が反映されるソフトウェア開発・プログラム作成は上方修正要因になりそうだ。一方、個人企業経済調査のデータは下方修正要因になりそうだ。総合的に判断して、第2 次速報値での実質ベースの設備投資の前期比は第1 次速報値から上方修正となりそうだ。また、今回の法人企業統計からみると、仕掛品在庫と原材料在庫は下方修正要因とみられる。設備投資の上方修正、在庫投資と公共投資の下方修正で中身は入れ替わり、内容的には一段と民需を中心の景気回復を再確認することになろう。

大相撲夏場所18 年ぶりの3 場所連続15 日間満員御礼、企業収益が好調で広告費増懸賞本数は過去最多更新

 最近は、15~18 年ぶり、あるいは22~23 年ぶり、さらに27 年ぶりという、金融危機、バブル崩壊といった過去の落ち込みを克服したことを示唆する明るいデータが散見される。景気は好循環が進展し緩やかながらもデフレ脱却の流れが着実なものになっていくと思われる。

 日経平均株価は終値で4 月下旬に4 回2 万円台に乗った。これは2000 年4 月以来15 年ぶりのことだ。また、5 月19 日以降6 月1 日まで連続して2 万円台となっている。98 年頃の金融危機とそれに続くIT 景気の時期以来で、金融危機の落ち込みを克服したことを示唆する節目の数字と言えよう。また日経平均株価は6 月1 日まで12 連騰を記録したが、これは88 年2 月の13 連騰以来27 年3 ヵ月ぶりの記録だ。バブル崩壊を乗り越えた感のある数字である。

 完全失業率は4 月分で3.3%の低水準になったが、これは97 年4 月以来18 年ぶりである。限界的雇用関連データの年間自殺者数は98 年に初めて3 万人を超え、03 年には過去最悪の3 万4427 人を記録した。10 年からは減少基調になり、3 年前の12 年に2 万7858 人と15 年ぶりに3 万人割れとなった。その後14 年の2 万5427 人まで3 年連続3 万人割れ、今年も1~4 月平均で前年比▲4.1%の減少になっている。

 大相撲は、今年の初場所・春場所と2 場所連続で15 日間満員御礼を記録した。これは、「若貴ブーム」に沸いた90 年初場所から、その年の秋に金融危機が発生した97 年春場所までの、44 場所連続以来18 年ぶりということで話題になった。照ノ富士が初優勝し大関昇進を決めた5 月の夏場所も15 日間満員御礼で3 場所連続と記録を伸ばした。なお、夏場所では、初日の懸賞が151 本と、初日として最高だった今年初場所の130 本を上回り、1 日としての本数で過去最多だった1964 年初場所千秋楽の139 本さえも51 年ぶりに上回った。さらに14 日目154 本、千秋楽は158 本と次々と最多記録を更新した。横綱白鵬は2 度目の7 連覇と35 度目の優勝を逃したが、14 日目の稀勢の里との取組にかかった51本、千秋楽の日馬富士との取組にかかった 60 本の懸賞も逃した。夏場所は15 日間での懸賞は1776 本と最多記録を更新した。

 なお、中日の白鵬対大砂嵐戦に40 本の懸賞がかかる予定であったが、大砂嵐が休場し23 本は他の取組みに回り17 本はキャンセルとなった。これを入れると1793 本で1800 本に迫る状況だった。企業収益が好調で広告費が出ていることを示唆する数字と考えられる。

 日銀短観の中小企業・非製造業・業況判断DI は、13 年12 月調査で+4 とバブル崩壊直後の92 年2 月調査以来、約22 年ぶりにプラスになった。旧ベースの14 年12 月調査では▲1 だが、調査対象企業定例見直し後の新ベースでは14 年12 月調査は+1 になった。15 年3 月調査では+3 とプラス基調を維持している。4 月分有効求人倍率は1.17 倍で23 年1 ヵ月ぶりの高水準になった。こうした雇用環境の改善を受け、経団連のまとめ(第1 次集計)によると、春闘賃上げ率は17 年ぶりの伸びになる見込みだ。また4 月分速報値の実質賃金は前年同月比+0.1%と2 年ぶりに上昇した。名目の物価を押し上げた14 年4 月の消費増税から1年が経ち統計上の影響が消え、企業業績の改善や人手不足による賃上げの影響が反映された。所得の伸びが消費増につながる。デフレ基調を脱して、緩やかながらも景気の好循環が今後も期待できよう。

地方へ明るさ広がること示唆するデータ、デフレ脱却の動き

 なお、「景気ウォッチャー調査」の現状判断DI は4 月分で5 ヵ月連続上昇し53.6 になった。11 地域すべてで景気判断の分岐点の50 を上回り、景気回復の地方への広がりを示唆する内容になった。

回復示唆する身近なデータ

 身近な社会現象も引き続き緩やかな景気回復を示唆しているものが多い。5 月13 日発売の嵐の新曲「青空の下、キミのとなり」の最初の1 週間の売上である初動は50.1 万枚で、景気拡張局面を示唆する50 万枚超となった。さらに5 月20 日発売のAKB48「僕たちは戦わない」は総選挙の投票権付きなので、初日に147.2万枚を記録した。昨年の「ラブラドール・レトリバー」の146.2 万枚を上回った。初動は167.3 万枚である。

旅行への支出は底堅い。3 月14 日に北陸新幹線が開通した金沢では、5 月分の兼六園入園者数は前年同月比+71.4%の増加である。また、平成の大修理を終え、5 年ぶりに天守閣の中に3 月27 日から入れるようになった姫路城の、3 月分の入城者数は、前年同月比+105.1%、4 月分は+319.7%と大幅増加になっている。

 インバウンド消費も好調だ。訪日外国人は1~4 月期で前年同月比+43.6%、昨年の1341 万人に掛けると1926 万人にもなる。外国人観光者の百貨店売上は2~4 月と3 ヵ月連続前年比+200%超だ。GDP 統計で非居住者家計の国内での直接購入(外国人の国内消費、輸出に含まれる)の実質GDP に対する前期比寄与度は14 年10~12 月期・15 年1~3 月期と2 四半期連続して+0.1%の増加寄与だった。

エルニーニョ現象が景気の懸念材料

 なお、ギリシャ問題などの海外要因の他に景気の懸念材料のひとつとして挙げられるのは、エルニーニョ現象だ。5 月12日の監視速報で気象庁は「エルニーニョ現象が発生しているとみられる。今後、秋にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い」とした。旬のデータでみると、3 月中旬の監視指数・基準値偏差は0.0℃だったが、3 月下旬に0.6℃と一気に目安の0.5℃を上回り、4 月上旬0.7℃、中旬0.9℃、下旬1.1℃、5 月上旬1.2℃、中旬1.2℃となっている。また今年は東京と大阪の桜の開花日の差が3 日で平年の2 日を上回った。今年が冷夏になり夏物消費にマイナスに働いても不思議ではない。