宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

7月のトピック「強まっているエルニーニョ現象など懸念材料を乗り越え、景気好循環継続を期待」

2015年07月01日

6 月調査日銀短観で全規模・全産業の業況判断DI は横ばいに。景気動向指数判断も5 月分「足踏み」に下方修正か

 日銀短観の内容は、日銀がある本石町の発表日の天候に表れる傾向があるが、6 月調査は「梅雨」といった状況で、全規模・全産業の業況判断DI は「最近」「先行き」とも+7 で、3 月調査の「最近」と同水準となり判断改善基調は一服、真夏の太陽のようなかなり明るい数字は大企業の設備投資計画など一部にとどまったかたちだ。全規模・全産業の業況判断のもたつきは、目先発表される主要経済指標に4~6 月期の鉱工業生産指数(在庫調整などで前期比減少?)、実質GDP(前期比年率0%台?)など弱いものも予測されることなどもあり、企業の景気の先行きには不透明感が強いのであろう。但し、景気の好循環が再認識されれば、先行き、業況判断の持ち直しが期待されよう。

 景気動向指数の基調判断は2 月に発表された12 月分から6 月発表の4 月分まで景気が拡張局面にあることを示す「改善」が続いてきたが、7 月6 日発表の4 月分一致CI は生産関連指標や、前年同月比の消費関連指標などが悪化し前月差マイナスになろう。このため3 ヵ月後方移動平均の前月差は3 ヵ月の累積では1 標準偏差分(0.98)以上下方に振れ、判断は「足踏み」に下方修正される見通しだ。

景気ウォッチャー調査や日銀短観の中の明るい動き

 但し、企業収益増加が、設備投資増加につながり、賃金上昇から消費増加をもたらすといった景気の好循環が基調の流れとしてある。景気ウォッチャー調査は、季節調整値も合わせて判断すると緩やかな持ち直し基調だ。ローカル・アベノミクスの動きもあり4・5 月分で2 ヵ月連続して現状判断DI は11 地域で50 超えとなった。連続は統計史上4 度目のことだ。景気回復に広がりが出てきていることがわかる。

 日銀短観6 月調査でも2015 年度の大企業の設備投資計画は前年度比+9.3%と力強い数字になった。製造業は+18.7%と2 桁の高い伸び率であり、非製造業は+4.7%である。中小企業の設備投資計画は例年3 月調査が弱く、その後は調査の度に改善していく傾向がある。全産業の設備投資計画は前年度比▲15.7%だ。一方、GDP の設備投資の概念に近いソフトウェアを含み土地投資額を除くベースでは、2015 年度は大企業では前年度比+10.3%、中小企業は▲12.1%である。全産業・全規模の設備投資計画は前年度比+5.6%で、2014 年度の前年度比+4.6%に続き、しっかりした計画になっている。今後の設備投資動向に期待が持てる数字だ。

 大企業・非製造業・業況判断DI では、6 月調査は+23 と3 月調査の+19 から4 ポイント改善した。3 期連続の改善であり、16 期連続のプラスであることは、内需の底堅さを反映し、非製造業は底堅い動きが続いていることを示唆していると言えよう。但し、関連データのロイター短観やQUICK 短観では大幅改善だったので、改善幅は小幅で物足りない結果となった。雇用・所得環境が改善していることに加え、訪日外国人のインバウンド消費の増加などがプラスに働いていよう。「小売」は3 月調査の+5 から今回6 月調査では+22 へと17 ポイント改善した。

強まりつつあるエルニーニョ現象が懸念材料

 なお、大企業・非製造業では「先行き」は+21 と「最近」の+23 から2 ポイントの悪化が見込まれている。「小売」の「先行き」は+19 と「最近」の+22 から3 ポイント悪化している。エルニーニョ現象が強まっていることから夏物商戦などの不透明さを見込んでいるのだろうか。

 6 月10 日に監視速報で気象庁は「エルニーニョ現象が続いており、強まりつつある。今後、冬にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い」とした。5 月12 日の「エルニーニョ現象が発生しているとみられる。今後、秋にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い」より、表現が強まっている。旬のデータをみると、3 月中旬の監視指数・基準値偏差は0.0℃だったが、6 月上旬で1.4℃、6 月中旬で1.7℃と急速に上昇している。21 世紀になってからの基準値偏差で最大は09 年12月と10 年1 月の1.1℃であった。97 年春から98 年夏まではエルニーニョ現象が発生していて、梅雨明けが98 年は8 月2日頃と8 月にずれ込んだ。7 月10 日に発表予定の6 月分の基準値偏差は98 年の4 月の1.5℃以来の水準になりそうだ。エルニーニョ現象が発生すると冷夏になりやすいが、消費者物価指数でデフレートした実質大型小売店販売は夏物消費が鈍化し、97 年・98 年と7~9 月期の前年同期比は各々▲0.4%、▲0.6%とマイナスだった。ちなみに7~9 月期・前年同期比の81 年から14 年までの平均は+0.7%だ。

秋以降、消費者物価指数前年比は上昇へ。予想物価は上昇率の先行き上昇を期待

 全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)(消費増税の影響を除く)は昨年10 月分以降、前年比1%割れである。4 月分は0.0%、5 月分は+0.1%で、7 月分ではマイナスの可能性もある。但し、これは原油価格の動きによるところが大きく、今年の秋以降前年比は上昇しよう。

 物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDP ギャップ)は内閣府の試算で15 年1~3 月期は▲1.6%と、14 年10~12 月期の▲2.4%からマイナス幅が縮小した。15 年4~6 月期の実質GDP 前期比年率は芳しい伸び率が見込めそうにないので需給ギャップは改善しないだろうが、7~9 月期以降は潜在成長率を上回る成長になると思われ、需給ギャップの改善が見込まれ、先行きの消費者物価指数の前年比の上昇要因になると思われる。

 また、今後、予想物価上昇率が徐々に高まる期待が持てる。東大日次物価指数の7 日移動平均は4 月11 日以降直近6 月29 日分まで80 日間連続して、前年比プラスで推移している。2011 年8 月6 日~10 月6 日の62 日間を超え、2008 年2 月23日~2009 年5 月17 日の449 日間以来の長さになった。食料品・日用品といった身近な物価が上昇を続けていることは、待っていれば安くなるというデフレ期待を変えることにつながろう。また、足元の企業向けサービス価格は、原油価格の動きにより前年比マイナスとなっている企業物価指数と対照的にプラスの伸び率だ。

 日経平均株価はギリシャ支援協議決裂で6 月29 日には前日から596 円下落はしたものの2 万円台を維持した。その前に、6 月24 日には96 年12 月以来18 年1 ヵ月ぶりに20900 円台を付けた。これは5 月分完全失業率が3.31%と97 年4 月の3.24%以来18 年1 ヵ月ぶりの低水準になったことなどと並び、金融危機の直前の水準まで回復したことを意味する。

 5 月分有効求人倍率は92 年3 月(1.19 倍)以来、23 年2 ヵ月ぶりの1.19 倍になった。15 年3 月に卒業した高校生の就職率は97.5%と92 年以来23 年ぶりの高水準だ。なお、日経平均株価が96 年の高値22666 円を超えれば、次は92 年の23000円台が意識される。92 年はバブル景気の山の91 年2 月の翌年である。23 年前の水準まで経済データが良くなったと受けとられれば、予想物価上昇率も上向くだろう。

 物価の第三の変動要因として、原油価格下落の影響は大きい。まだ低水準ながら原油価格は底打ちしており、それを受けて、ガソリン価格は4 月20 日から6 月29 日にかけて10 週連続で上昇している。

 全国CPI コア前年比が16 年度前半に1%台後半を付ける可能性はあると思う。

身近な社会現象は景気の良さを示唆

 身近な社会現象は、概ね景気の底堅さを示唆している。

 6 月17 日発売のアニメ「妖怪ウォッチ」エンディング曲の「ようかい体操第二」は初動3.1 万枚の売上枚数で、オリコン初登場第4 位だ。子供の歌が売れる時は母親の財布の紐が緩んでいることを意味しよう。

 訪日外国人旅行者数増加が続いている。「インバウンド消費」は今年も堅調である。外国人観光客の百貨店売上高は2 月分以降5 月分まで4 ヵ月連続して前年同月の倍以上である。

 また、3 月14 日に北陸新幹線が開通した金沢では、兼六園の6 月分の入園者数は前年同月比+81.6%の増加である。また平成の大修理を終え、5 年ぶりに天守閣の中に3 月27 日から入れるようになった姫路城の5 月分の入城者数は前年同月比+352.2%である。

 中央競馬売上(売得金)年初から6 月28 日までの累計前年比は+2.3%である。年初からの累計前年比は上昇傾向で、4年連続増加へ順調に推移してきている。

 雇用環境が良好であることを受けて、自殺者は2012 年から3 年連続3 万人割れのあと、今年1~5 月分は前年比▲3.7%と減少で4 年連続3 万人割れになるとみられる。東京23 区内ホームレス1 月調査で778 人と史上最少を更新した。金融機関店舗強盗は5 月20 日までで今年は10 件にとどまり、年間で31 件と近年最少だった昨年の18 件を下回っている。