ホームマーケット身近なデータで見た経済動向11月のトピック「中国景気減速の影響は依然懸念されるが、国内景気の底上げも様々な指標で確認できる」

11月のトピック「中国景気減速の影響は依然懸念されるが、国内景気の底上げも様々な指標で確認できる」

2015年11月4日

ESP フォーキャスト調査10 月特別調査:16 年に中国・製造業PMI50 を上回るとの見方先行きほど強まる

 2005 年に世界の名目GDP の5.0%だった中国経済は2014 年に13.4%になっている。中国経済の規模が拡大した状況下での、中国景気減速は世界経済全体に対する大きな懸念材料だ。財新の製造業PMI の8 月分速報値が悪化し、発表日の8 月21 日(金)・24日 (月)の世界同時株安の引き金となった。NY ダウの下落幅ランキングでは両日とも歴代ワースト10 位以内に入った。中国の製造業PMIは財新、国家統計局ともその後50 割れではあるが、やや持ち直し、人民元の安定推移と併せ、市場動向の鎮静化に寄与している。なお、財新のPMI は10 月分から速報値の公表は取り止めとなり一本化された。11 月2 日発表の10 月分は48.3 と9 月分から1.1 ポイント上昇した。国家統計局の製造業PMI は、10 月分は49.8 と前月比横這いだった。ESP フォーキャスト調査の10 月特別調査では、中国・国家計画統計局の製造業PMI 見通しをオールジャパンのエコノミストに聞いた。来年に入ると50 を上回る見方が徐々に優勢になるという見方がコンセンサスだ。

 中国共産党は11 月3 日に2016~20 年「5 カ年計画」の草案を公表した。「中高速成長の維持」を目標とし、働き手の減少が潜在成長率を押し下げていることに対応し、定年を段階的に引上げ、一人っ子政策を廃止するなどの内容で、最終年の2020 年までにGDP と所得水準を10 年比で倍増する目標も示した。習近平国家主席は「目標到達には年平均+6.5%以上の成長が必要だ」と明言した。中高速成長を維持する政策が先行き採られよう。

9 月の「景気ウォッチャー調査」では先行き判断の中国関連コメントに落ち着き

 9 月調査の「景気ウォッチャー調査」では、現状判断DIは前月比低下、2 カ月連続景気判断の目安となる50 を下回った。中国の景気減速などが悪影響になっている。現状判断での「中国」関連のコメントは8 月では34 人、9 月では37 人とやや増加。中国関連の現状判断DIをつくると、8 月43.4、9 月42.6 とやや低下傾向にある。但し、全体からの乖離は各々5.9 ポイント、4.9 ポイント低い1 桁にとどまっている。現状判断での「株価」関連のコメントは8 月では33 人、9 月では27 人と、世界同時株安発生直後の調査だった8 月に比べると9月はやや落ち着いた。株価関連DIをつくると、8 月32.7 で全体からの乖離は16.6 ポイントの2 桁マイナスだった。9 月は40.8 とやや持ち直し全体からの乖離は6.7 ポイントマイナスと1 桁にとどまった。悪化度合いが拡大している感じはない。

 先行き判断での中国関連のコメントは7 月45 人から8 月は176 人まで急増して中国動向が先行きの大きな不透明材料であることを示唆していたが、9 月では98 人と2 桁に戻りやや落ち着いた数字になった。中国関連・先行き判断DIをつくると、7 月47.8 から8 月は37.4まで落ち込んだが、9 月は42.3 に上昇した。先行き判断での株価関連のコメントは8 月で142 人、9 月では72 人、株価関連先行き判断DIをつくると、8 月35.4、9 月は39.6 となっている。中国は金融緩和など景気対策を実施していることもあり落ち着きを取り戻した。

日・米ともに10 月の金融政策変更なし。東大日次物価指数7 日移動平均10 月25 日~29 日+1.6%台

 米国の金融政策に関しては、最近の世界経済・金融動向の不透明さや、足元の米国雇用統計の非農業部⾨雇用者数や生産の弱さなどから10 月の利上げは見送られた。但し、「次の会合で誘導目標を引き上げるのが適切かどうかの決定にあたっては、雇用の最大化と物価上昇率2%という目標に向けた現在の前進ぶりと今後の改善の予測の両方を評価していく」と声明に明記し、12 月のFOMC で利上げを検討することが示された。米国では実質GDP が4~6 月期に前期比年率+3.9%成長と堅調な伸びになった。7~9 月期は同+1.5%に低下したが、在庫投資を除けばしっかりした伸び率になった。5~8 月分は持ち直し基調だった雇用の総合的指標のLMCI は9 月分で0.0 と足元の雇用データは弱含み基調のものもある。

 日銀は10 月30 日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を賛成多数で決定した。決定会合は12 時17 分に終了した。展望レポート発表と一緒の決定会合の終了時間は最近3 年間の過去6 回では、最短が13 年4 月26 日の12 時30 分、最長が12 年10月30 日の14 時41 分であることから、今回はかなり早いと考えられる。今回の決定に関し意見が割れて紛糾したような感じは全くしない。2%の物価安定目標の達成時期を従来の「16 年度前半」から「16 年度後半」に後ずれさせたが、主にエネルギー価格が弱含んだためで、追加緩和の検討には至らないということなのだろう。9 月分の鉱工業生産指数は前月比+1.0%、10 月分の製造工業生産予測指数も前月比+4.1%で、10~12 月期の生産は持ち直しが期待できるという内容の指標が、決定会合の前日29 日に公表されたことも、現状維持判断を支持しただろう。

 全国CPI コア、前年比は5・6 月分+0.1%。7 月分0.0%。エネルギー価格の影響で8・9 月分は▲0.1%だが、コアコアは17 年1 カ月ぶり24 カ月連続プラスだ。東大日次物価指数の7 日移動平均が4 月11 日以降直近10 月30 日分まで203 日間連続、前年比プラスで推移、8 月31 日~9 月6 日、9 月19 日~21 日、10 月3 日、10 月19 日~24 日、30 日は+1.5%台、25 日~29 日は+1.6%台になっている。原油価格下落の影響大で全国CPI コアが前年比マイナスだが、景気にとってプラスの面も多い。日銀は物価目標2%達成時期を、2016 年度後半に後ずれさせたが、賃金が順調に伸びる中での後ずれなら問題ないだろう。

2015 年「今年の漢字」候補に「節」

 日本経済は企業収益増加が賃金上昇・消費増加、設備投資増へ結びつく好循環が弱いながらも生じていることで景気の底上げがなされてきた。最近は約18 年ぶり(金融危機前以来)や約23 年ぶり(バブル崩壊翌年以来)という節目のデータも多いので、戦後70 年、高校野球100 年、2015 年今年の漢字候補に「節」も考えられよう。但し、賃金や経済投資は企業収益の増加幅ほど伸びていないことも事実だ。10 月16 日の経済財政諮問会議で麻生財務大臣から提出された資料では「経営陣には過去最高水準の企業収益を、更なる収益力の向上に向けた投資や従業員の給与などに振り向けることが求められているのではないか」との記述があった。

日本シリーズ対戦カードは景気足踏みと整合的。嵐アルバム売上、週間記録更新など景気プラス材料多し

 景気に関連性が大きい身近な社会現象は、一部に弱含みや踊り場を示唆するものあるが、依然概ね景気底堅さを示唆している。

 プロ野球・日本シリーズ、進出チームのその年の初めの人気度ランキング合計をみると、人気度ランキング合計2~5 は景気拡張局面が多く、合計7~8 は景気後退局面が多い。その中間で6 は拡張、後退が約半々だ。今年のソフトバンク対ヤクルトの人気度ランキング合計6は、最近の景気足踏み状況と整合的なデータと言えなくはない。

 訪日外国人旅行者数増加が続いている。1~9 月の前年比+48.8%で昨年の数字を伸ばすと1995.9 万人に。中国人の前年比が7月+105.1%、8 月+133.1%、9 月分+99.6%と振幅はあるが相当高い伸び率だ。金沢兼六園入園者数の前年同月比は7 月分+98.1%、8 月分+76.0%、9 月分+105.5%、10 月分+72.4%と高い伸び率が続いている。

 中央競馬の年初からの累計売上(売得金)はシルバーウィークで3%台まで上昇し、11 月1 日まで累計+3.3%。4 年連続増加へ向けて順調だ。秋のG1 は天皇賞までの4 レース全てで前年比増加となっている。

 10 月21 日発売の嵐のアルバム「Japonism」は初動82.0 万枚となった。9 月2 日発売のシングルCD「愛を叫べ」の初動が46.2 万枚と、分岐点50 万枚を下回ったので次の動向が懸念されたが、宮城スタジアムでのコンサートに続き、「Japonism」が嵐の全音楽作品で最高の週間売上枚数を記録した。明るい動きと受け止められよう。10 月28 日発売の乃木坂46 のシングル「今、話したい誰かがいる」は初動62.6 万枚で、同グループ史上初動最高記録を更新した。

 景気動向指数は5 月分から8 月分まで一致CI を使った基調判断が「足踏みを示している」となっている。景気のもたつきに対し、国債を発行することなく補正予算が組まれることになりそうだ。鉱工業生産も予測指数からみると10~12 月期は3 四半期ぶりに増加が見込まれる。景気動向指数の機械的な基調判断も早ければ2 月上旬発表の12 月分には「改善」に戻ろう。