宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

2月のトピック「「マイナス⾦利付き量的・質的⾦融緩和」導⼊で混乱⼀旦収拾。⾒かけ弱いが実態しっかりの⾝近データも」

2016年02月03日

「申・騒ぐ」の格言どおり、マーケットは、中国景気減速懸念等で年明けから波乱の展開

 「未・辛抱、申・酉・騒ぐ」という兜町の格言があるが、2016 年は年明けから波乱の展開になった。中国景気減速懸念、中東情勢、原油価格の一時30 ドル割れ、北朝鮮核実験などの悪材料が相次ぎ、日経平均株価は初めて年初から6 日間連続で下落した。人民元基準値の4 年9 ヵ月ぶり安値やサーキットブレーカーなども中国株安につながった。

 2015 年の中国の実質GDP は前年比+6.9%と90 年(+3.9%)以来25 年ぶりの低い伸び率となった。中国は共産党結党100 周年の2021 年に、2010 年の2 倍のGDP にする小康社会の完成を目指すが、目先、在庫削減、生産能力削減等で成長率鈍化は避けられない。中国景気の減速のペースは不透明で、世界経済に対する大きな懸念材料だ。

 中国・国家統計局の製造業PMI は1 月分は49.4 と12 年8 月以来の低さになった。ESP フォーキャスト調査1 月特別調査で、中国・国家統計局製造業PMI 見通しを聞いたところ16 年後半から改善するという見方がコンセンサスになっている。

FRBの金融政策、ESP フォーキャスターは16 年3 回の利上げを見込む

 FRB は12 月16 日、金融政策を決めるFOMC で、実質的なゼロ金利政策を解除することを決めた。利上げ局面に入ったことが、世界のマネーの動向に大きな影響を及ぼしている。FOMC メンバーのドット・チャートからは16 年中4 回の利上げが見込まれるが、ESP フォーキャスターは3 回利上げを見込んでいる。1月27 日FOMCでは政策金利維持を決めた。

 米国では実質GDP が15 年4~6 月期に前期比年率+3.9%成長と堅調な伸びだった。7~9 月期は同+2.0%、10~12 月期は同+0.7%に低下した。鉱工業生産が10 月分~12 月分まで3 カ月連続前月比マイナス。原油安でエネルギー産業が弱いようだ。こうした心配な面があるが、雇用面などはしっかりしている。雇用総合的指標のLMCI は5~12 月分は8 カ月連続プラス。16 年は大統領選挙年である。現在のオバマ大統領が民主党出身なのでジンクス的には、実質経済成長率は15 年の+2.4%よりやや高まりそうだ。

日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入

 日本経済は企業収益増加が賃金上昇・消費増加、設備投資増へ結びつく好循環が弱いながらも生じていることで景気の底上げがなされてきた。金融危機前以来やバブル崩壊翌年以来という節目のデータも散見される。マーケットの混乱から好循環の流れが途絶えることに配慮したのだろうか、1 月29 日、日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入した。一部に出ていた金融緩和政策の限界説を払拭し「マイナス金利」「量」「質」の3 つの次元で追加緩和可能なスキームを示し、物価目標達成への本気度を改めて示したかたちだ。マイナス金利導入というサプライズはマーケットへの効果が大きかったようだ。また、金融機関経営へのマイナスの影響を幾分でも抑えるため、当座預金を3 層に分けて限界的部分にマイナス金利を適用することで配慮をした。あとは、経済環境が不透明でも、企業がいかに自信を持って、賃金引上げや設備投資増加を実行するかにかかっている。

 全国CPI コア前年比は11 月分・12 月分で+0.1%とプラスに転じたが、今後の上昇ピッチはかなり緩やかだろう。原油価格下落を新興国経済悪化と絡めて悪材料とみる向きが多いが、日本の景気にとって、原油価格の下落は交易条件の改善でプラスの面が多いとみられる。

非製造業・業況判断DI はロイター・QUICK 両短観とも1 月調査は10 月調査と比べ同水準またはそれ以上

 日銀短観12 月調査、大企業・業況判断DI は、製造業・非製造業とも9 月調査と同じ水準。大企業・非製造業・業況判断DI・9 月・12 月調査の+25 は91 年11 月調査の+33 以来23 年10 カ月ぶりとバブル崩壊直後の高水準。非製造業・業況判断DI はロイター短観でもQUICK 短観でも、1 月調査は10 月調査と比べ同水準またはそれ以上だ。雇用吸収力が大きい非製造業の・業況判断DI が良いことは、11 月分有効求人倍率1.27 倍と91 年12 月分(1.31 倍)以来24 年ぶりの高水準、さらに12 月調査の全規模・全産業の雇用判断DI が▲19 と、92 年5 月調査以来、23 年7 カ月ぶりの水準になったことと、整合的だろう。雇用環境の改善などで15 年の自殺者数の速報値は2 万3971 人、前年比▲5.7%。18 年ぶりに2 万5 千人を割った。

鉱工業生産指数など主要経済統計の現状は「足踏み」状態

 主要経済統計からは景気の現状は「足踏み」状態という感じだ。鉱工業生産指数は15 年4~6 月期、7~9 月期と前期比減少。10~12 月期は増加したものの11、12 月分速報値の前月比は2 カ月連続減少した。本来は鉱工業生産指数、鉱工業出荷指数の内数となるはずの、中小企業製造工業生産指数、中小企業製造工業出荷指数の12 月分速報値の前月比を確認しておこう。中小企業製造工業出荷指数は景気動向指数・一致系列に採用されているので景気を判断する時には無視はできない統計だ。中小企業製造工業生産指数の前月比は+1.1%、中小企業製造工業出荷指数の前月比は+0.7%とどちらも増加になった。鉱工業指数の動きと逆である。鉱工業指数が2010 年基準になっているのに、中小企業の指数が2005 年基準のままであるなどの違いが影響しているのかもしれない。いずれにしても経済統計の結果はある程度幅を持ってみる必要がありそうだ。

 実質GDP の前期比は15 年4~6 月期マイナス、7~9 月期プラスの後、2 月15 日発表の10~12 月期は暖冬の影響のため個人消費が大きく落ち込みそうでマイナスになりそうだ。このところ一進一退状況だ。また、景気動向指数は5 月分から11 月分まで一致CI を使った基調判断が「足踏みを示している」となっている。こちらも当面「足踏み」判断が続きそうだ。

 但し、速報性がある「景気ウォッチャー調査」(12 月調査)の現状判断DI は前月比上昇、季節調整値は3 カ月連続50 超と明るい動きもみられる。

見かけは弱いが、実態はしっかりの、身近な景気関連データも

 景気に関連性が大きい身近な社会現象は、苦しい時の神頼みではないが景気の先行きに対する不安心理が強い面があるのかもしれない現状下で正月三が日の初詣の人出が増加するなど、一部に景気弱含みや踊り場を示唆するものあるが、依然として概ね景気底堅さ示唆している。

 昨春の北陸新幹線開業効果が続き、金沢兼六園入園者数の前年同月比は11 月分+51.8%、12 月+103.2%、1 月+103.8%と高い伸び率が続いている。また平成の大修理を終え、5 年ぶりに天守閣の中に15 年3 月27 日から入場可能となった姫路城の入城者数は3 月以降12 月まで前年同月比3 ケタの伸び率だ。

 但し、実態はしっかりだが、見かけが弱いデータもある。例えば、中央競馬の年初からの累計売上(売得金)は、昨年の前年比は+3.6%で4 年連続増加となった。しかし、16 年は1 月31 日までで▲3.5%の減少だ。一見悪化したようだが、開催日数が昨年の1 月は9 日間、今年は8 日間と1 日少ないことが影響している。

 昨年11 月の大相撲九州場所の懸賞は1579 本、名古屋場所の1509 本を上回り、地方場所過去最多を更新した。好調な企業収益下、広告費は増加した。しかし、今年の初場所は1872 本と過去最高だった昨年秋場所の1979 本を抜けなかった。スポーツニッポンによれば、照ノ富士65 本、遠藤99 本と休場の影響でキャンセルが出たようだ。両者合計164 本減の模様だ。加えてインフルエンザによる休場者も多く実質的には2000 本前後になったはずが、過去2番目の水準にとどまった。千秋楽結びの一番は森永賞(人気投票一位の取組に東京場所で懸る。初場所では10 年ぶり日本人優勝がかかった琴奨菊の一番に)が懸らなかったため60 本だった。テレビの相撲中継を見て数えている人の中には、過去最高だった昨年初場所・秋場所の61 本に比べ減ったと思った人もいたようだが、実質的には同水準維持であり、悪化はしていない。

 東京の桜の開花日が平年の3 月26 日より5 日以上早い、1953 年以降10 回のケースでは景気は後退局面になったことがない。春になり、明るい話題が多くなるようだと、景気も足踏み状態を脱し上向いていこう。