宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

1月のトピック「正月3が日初詣人出など依然不透明感強いが、日本の景気・物価に統計面で明るい動きが」

2017年01月04日

(17年正月3が日初詣トップ3の人出は前年より微増、景気ウォッチャー調査先行き判断「不安」コメント数増加)

今年の初詣の正月3が日の人出の多い寺社のトップ3をみると、最も多い明治神宮が318万人で前年比1万人増、1月2日にNHK「ブラタモリ」で紹介され3日の参詣者が多かった成田山新勝寺が311万人で前年比2万人増、NHKラジオ第一「ゆく年くる年」で紹介された川崎大師が308万人で前年比1万人増となった(図表1)。今年の初詣の人出は昨年比微増である。NHK番組の影響や、天気が良く暖かかったこともかなり影響しているとみられるが、苦しい時の神頼み的な参詣客増加もあるとみられ、景気などの先行きに対する不安心理が強い面があるのかもしれない。
日本の景気足踏み状況が長期間続いたこと、東北・北海道を台風が直撃する異常気象、トランプ氏が次期米国大統領に決まった後のマーケットの急激な変動などから、人々の不透明感や先行きの不安心理が根強いとみられる。16年6月分を底に最近は改善傾向にある景気ウォッチャー調査でも、先行き判断で「不安」をコメントした人は、9月調査36人、10月調査53人、11月調査69人と増えている。

(17年の箱根駅伝の関東地区テレビ視聴率は往路・復路平均では前年より僅かに低下)

青山学院大学が史上初の箱根駅伝3連覇&大学駅伝3冠になった。また、往路も復路も3年連続で制したのは1937年の日大以来となった今年の箱根駅伝だが、関東地区のテレビ視聴率は往路27.2%、復路28.4%で、前年に比べて各々▲0.8%、+0.6%となった。往路・復路の平均では今年は27.8%で昨年の27.9%を0.1ポイント僅かに下回った。テレビ中継を見ずに、外出した人が僅かに多かったのではないか。正月の個人消費の底堅さを示唆する数字の可能性があろう。

(景気動向指数の機械的景気判断が「足踏み」から「改善」に、日本の景気統計に明るい動き)

日本の景気は、方向性がはっきりしない不透明な状況が15年後半から16年末近くまで続いてきたが、16年10~12月期になって、改善の兆しが見え始めた。長期にわたり「足踏み」が続く異常事態だった景気動向指数の基調判断は、約1年半ぶりに12月7日発表の16年10月分で「改善」に戻った。それに先立ち、一致指数に最も影響を与える鉱工業生産指数が16年8月分で「緩やかな持ち直し」に上方修正され、今もその傾向が続いている。在庫調整が終了し、生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っている。日銀短観16年12月調査・大企業・製造業・業況判断DIは+10と16年9月調査の+6から1年半ぶりに上昇した。但し、12月調査の16年度下期の想定為替レートは103円36銭と実際の為替の動きとは逆に9月調査の107円42銭から円高に振れた。こうしたところに、まだ企業の慎重な見方が感じられる。

(2015年度の実質個人消費は12月7日までのマイナスではなく、12月8日からは前年度比+0.5%)

16年7~9月期実質GDP第2次速報値は前期比年率+1.3%と、第1次速報値の+2.2%から基準改定や季節調整替えの影響で下方修正されたが、12年10~12月期から13年7~9月期の4半期連続増加以来、3年ぶりの3四半期連続増加になった。15年度の実質GDPは前年比+0.9%から+1.3%になった。上方修正の主因はQEから基礎統計が変わった個人消費で、前年度比▲0.1%のマイナスから+0.5%のプラスへ上方修正されたことだ。QEで使われた家計消費状況調査がこのところ弱めの数字になっていたことなどの影響であろう。
なお、 12月21日の経済財政諮問会議で決定された「統計改革の基本方針」の中で、家計消費状況調査をしっかりした内容にするために、「調査の質の更なる向上の観点から、調査票回収督促及び内容審査の強化に必要な措置を講ずる」という対応方針と、「予算措置などの状況を踏まえ、 2017年度を目標に実施する」という実施日程が示された。

(欧米諸国に追いつく2011年の基準改定で、現実味帯びるアベノミクス第1の矢の的GDP600兆円)

2011年基準への改定により、研究開発費が設備投資にカウントされたことなどの影響で15年度の名目GDPは大きく上方修正された(図表2)。過去最高水準の名目GDPである16年4~9月期の537兆円を今後各半期年率+2.3%成長で延長すると、20年度下期595兆円、21年度上期602兆円になる。名目GDP成長率がこれまで必要とされた3%台ではなく、15年度の2.8%等と比べ実現可能性が大きい2.3%で達成可能になった。GDPの計算が、欧米諸国が先に適用している国際基準に追いついたことで20年度頃の名目GDP600兆円というアベノミクス新三本の矢の的が現実味を帯びてきた。榊原定征経団連会長は年頭所感の中で「経団連としても、政治との連携を一層強化しながら、デフレ脱却と経済再生を確実に実現し、GDP600兆円経済への確固たる道筋を付けるため、主体的に取り組む所存である。」と述べられた。

(日本の予想物価上昇率は家計、企業、エコノミストとも上向き、短観の企業物価全般見通しは初の上昇)

日本の予想物価上昇率は足元の物価動向に左右される適合的期待の部分が大きいと言われる。足元の消費者物価指数の前年比マイナス幅が拡大していた中、物価見通しは下落基調にあったがここにきて上昇方向に変化してきた。消費者物価指数に先行する商品指数などが上昇してきたことなどが反映されていると言えよう。デフレマインドが弱まっていく局面に入ったとみられる。
2ケタの下落率が長く続いていた入着原油価格は12月上旬分(速報値ベース)で前年比▲4.8%まで縮小し、中旬分で上昇に転じそうだ。レギュラーガソリンは16年12月26日に130.3円と15年11月24日(130.3円)以来の水準をつけた。国内の商品指数も上昇傾向で、日経商品指数17種11月分は前年同月比+6.5%と14年11月の+1.8%以来の2年ぶりの上昇になったあと、12月分で+13.2%になった。
16年9月から始まった消費者マインドアンケート調査では1年後に物価が上昇するとみる人の割合が11月にかけ増加した(図表3)。16年12月調査の日銀短観では全規模・全産業ベースの物価全般の見通し平均は1年後が+0.7%、3年後が+1.0%、5年後が+1.1%となった。3年後は前回9月調査と同じ上昇率だが、1年後・5年後は前回9月調査より0.1ポイント上昇した。全規模・全産業ベースの物価全般の見通しの予想物価上昇率が上昇したのは14年3月の調査開始以来初めてだ。ESPフォーキャスト調査16年12月調査でエコノミストの予想物価上昇率も上昇に転じた(図表4)。

(16年自殺者の数字は2万2000人割れか)

16年11月分で有効求人倍率1.41倍と25年4カ月ぶりの高水準になった。しかし、雇用や賃金に関する指標は改善していても、景気に反映されていないと感じる人は多いようだ。それは12年に始まった団塊世代の大量退職で生産年齢人口の割合が前年比で毎年1%以上減少する状態が続いており、プラスの影響を受ける人が減っていたからだ。この減少率は16年から小さくなり始めており、18年からは▲0.3%と小幅になる。今後はゆっくりではあるが、賃金や所得の改善が全体としてみる個人消費に反映されやすい環境になってくるだろう。
また、警視庁が発表している自殺者数を見ても、15年は18年ぶりに2万5000人を割ったが、「統計開始以来自殺者の累計100万人超」という報道で、15年の自殺者数を知っている国民は少ないようだ。16年の1~11月の月次データを見るとすべての月で前年を下回っていて、年間で2万2000人を下回る可能性がある。自殺には病気や悩みなどさまざまな背景があるため極端に減ることはないが、景気がよくなれば生活苦といった経済的な理由による自殺は着実に減っていく。生活保護世帯数前年同月比は減少傾向にあるものの、16年9月では+0.4%とまだプラスであり、生活保護を受けている人は多いと言うのが一般常識のようだ。但し、生活保護を受けている被保護実人員は16年9月で前年同月比▲0.9%と1年1カ月連続して減少している(図表5)。こうした、限界的な雇用の数字が改善してきていることが、世の中にきちんと伝われば、漠とした不安心理から人々は幾分解放されることになろう。

(2017年1月4日現在)