宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

2月のトピック「トランプ旋風で早速、騒ぐ酉年に。日本の景気が改善局面入りの下で「神色自若」のスタンスが肝要に」

2017年02月02日

(大統領になっても変わらないトランプ氏の「ディール」重視のビジネスマン的スタイル・支持者受け狙いのWWE流暴言)

1月20日トランプ氏が米国新大統領に就任した。就任直後から選挙公約に関し次々と大統領令を出して、実行力のある強い大統領を演じている。トランプ氏は全有権者の過半数の支持を集めて大統領になったわけではないので、大統領になっても支持者であるラストベルトの白人労働者受けのアピールを重視している模様だ。「ディール(取引)」重視のビジネスマン的スタイル、支持者受け狙いのWWE流の暴言は止まらない。トランプ大統領への対応では「神色自若(重大事に直面しても少しも顔色を変えず、落ち着いているさま)」が肝要か。

(バトルロイヤルとシングルマッチの試合形式の違いからみても、トランプ大統領はTPPからの離脱を望むだろう)

TPPからの離脱は米国最大のプロレス団体WWEと結びつきが強いトランプ氏からみて、ある意味、整合的な行動だろう。トランプ氏とWWEとはトランプ・プラザでWWEの年に一度の最大の大会レッスルマニアの興行を2回開催した80年代から約30年間の深い関係にある。07年にデトロイトで開催されたレッスルマニアでリング上に立ち、2013年には長い功績からWWE殿堂入り、WWEオーナーのビンス・マクマホン夫人のリンダ・マクマホンを閣僚級ポストの中小企業局長官に任命したトランプ大統領は、WWEの大きな大会であるロイヤルランブルのメインの試合で行われるバトルロイヤルを参考にすれば、TPPからの離脱を望むだろう。1月29日テキサス州サンアントニオで開催されたロイヤルランブルのバトルロイヤルには30人が参加した。シングルマッチでは強い者が勝てるが、多くのレスラーが一度にリングに上がるバトルロイヤルでは弱者が協力して強者を倒すことが多い。日本は日米が正面からぶつかる2国間交渉を避ける狙いもあってTPPを選択した面もあろうが、アメリカが一番強いと思っているトランプ大統領にとってシングルマッチが望ましく、バトルロイヤル的な多国間交渉のデメリットが目に付くのだろう。

(トランプ大統領は支持者の象徴であるラストベルトの元労働者へのアピールに注力しているように思われる)

トランプ大統領の目は農業よりもラストベルトの産業の象徴である自動車産業に向いているように思われる。輸入車に関税や差別的待遇がないにもかかわらず、日本の自動車市場を不公平だという。これもトランプ流のディールで、高めの球を投げ、言いがかりをつけている感が強い。日本の貿易統計によれば日本からの米国向け自動車輸出(乗用車、バス、トラック)合計では2000年に188万台だったが、米国での生産等も施したことにより16年には175万台に減少している。但し、燃費が悪くサイズも大きい米国からの自動車輸入は少なく、2000年に4.6万台だったが16年には2万台になっている(図表1)。この台数の違いは要因分析などしたことがなく、ただ仕事がなくなったことに不満を持つ米国の自動車産業の元労働者へのアピールには大きな格差として都合がよいだろう。
貿易赤字が問題だとして、大統領就任当初、中国・日本・メキシコが名指しされた。16年11月分貿易統計の赤字の大きい順で、ドイツはこの月たまたま4位であった。20世紀末2000年に中国と日本の貿易赤字の米国全体の赤字に占める割合はともに19%程度で同じだったが、現在は、半分に近い40%台の赤字の中国と、10ポイントも削減し9%程度の日本を同列に並べるのは、おかしい。ただ、単純に大きい順に並べると、中国の次は日本になる。

(最後の為替介入は11年11月。その後、日本は急激な円高が何度もあっても為替介入実施していない)

トランプ大統領は為替操作国として中国と並び日本も名指しした。「他国は通貨安に依存している。中国はやっているし、日本が何年もやってきたことだ」と発言し、為替政策批判をした。日本が為替介入を最後に実施したのは民主党政権だった11年11月4日である(図表2)。その後安倍政権では介入を行っていない。外為特会の一時借入限度枠は11年度(平成23年度)の第4次補正予算で195兆円に拡大したにもかかわらず、日本は為替市場への介入を昨年のように100円を割り込む事態になっても回避してきた。
日銀の金融政策はデフレ脱却を目指すもので、為替政策として行っていないことはG7・G20でも確認されている国際的常識だろう。トランプ発言は、2月10日の日米首脳会談を控えた局面であるため「ディール」に有利なような高い球を投げてきた感が強い。金融市場関係者の中にはトランプ大統領の無理難題に対し、対応するための切り札として外為特会の廃止を指摘する意見もあるようだ。為替介入をしない象徴としての外為特会廃止である。外為特会の資産額は15年度末で157.9兆円、うち有価証券で120.9兆円ある。そのうち米国債の割合は多いはずで、外為特会廃止で米国債が売却され金利が急上昇し景気が悪化すれば、雇用増などは困難になるのでトランプ大統領は困るだろう。円高が進むので日本経済も困るが、昭和のプロレス的に足4の字固めを掛けて両者リングアウトを狙うような戦略として考えると、外為特会廃止をちらつかせることは、トランプ大統領の暴言抑制策にはなろう。プロレスは強いレスラーが一人だけでは成立しない。強い相手の対戦者となるには、それなりに通用する必殺技をいくつか持っていることが必要だろう。

(16年10~12月期の実質GDPは緩やかなプラス成長だろうが、個人消費はパッとせず)

2月13日に発表される16年10~12月期の実質GDPは緩やかなプラス成長が予測されるものの、個人消費に関してはパッとしない伸び率になりそうだ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の10~11月分平均比対7~9月分平均比は0.0%となっている。関連データの12月分をみると、前月比は増加と減少がまちまちだ。乗用車販売台数・前月比+3.3%、非耐久消費財出荷指数・同+0.1%は増加であるが、耐久消費財出荷指数・前月比▲0.9%、小売業販売額指数・同▲1.7%、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)・同▲2.1%は減少になっている。総合的に判断すると。10~12月期第1次速報値での個人消費の前月比は横ばい程度でパッとしない前期比になりそうだ。10~12月期の個人消費が弱いのは昨年度の台風の影響で野菜などの値段が高かったことと、昨年の大みそかが土曜日というカレンダー要因で年末の国内旅行への支出が少なかったという特殊要因もあるとみられる。
なお15年度の実質GDPは確報値段階で前年比+1.3%と、QE(速報値)段階の+0.9%から上方修正になった。上方修正の主因の一つはQE(速報値)から基礎統計が変わった個人消費で、前年度比▲0.1%のマイナスから+0.5%のプラスへ上方修正されたことだ。QE段階で使われた家計消費状況調査がこのところ弱めの数字になっていたことなどの影響であろう。家計消費状況調査は改善に向けた対応が17年度ではとられる見込みだが、16年度のうちはまだ統計の弱さが出るかもしれない。

(総務省「統計Today」の分析では16年10月1世帯当たりでレタスを購入時、半玉を購入した割合は43%)

16年10月に野菜価格が高騰した際、家計の生活防衛の高まりを反映した動きが出た。レタスを1玉ではなく半玉で購入した割合が4割超にも上っていたことが、総務省が家計調査の計量集計結果の活用例として「統計Today」で発表した分析でわかる。購入量に加え、購入世帯や購入頻度のデータを基にして、レタスを購入した世帯の消費行動を分析した結果、レタスの価格が高騰した16年10月について、レタスの販売が1玉(300g)と半玉(150g)の2種類だったと仮定した場合、1世帯当たりでレタスを1回購入した際、半玉を購入した割合は43%になったと分析されている。野菜価格高騰時に消費動向が一段と慎重化したことが反映された。家計調査ベースの16年10月のレタス1玉の価格は、前年同月比47%も上昇した。16年12月には落ち着きを取り戻し、1回の購入量は1玉以上に回復した模様だ。
また、もやしの購入金額は16年10月に一世帯平均98円と、4年半ぶりの高水準になった。ここにも主婦の生活防衛的行動が反映されている。11月は96円と高かったが、12月は87円へと低下し段々落ち着いてきたことがわかる。

(鉱工業生産指数・前期比は17年1~3月期では4四半期連続増加になる見込み)

長期にわたり「足踏み」が続いた景気動向指数の基調判断は、約1年半ぶりに12月7日発表の16年10月分で「改善」に戻り、11月分に続き12月分も同じ判断になりそうだ。それに先立ち、一致指数に最も影響を与える鉱工業生産指数が16年8月分で「緩やかな持ち直し」、さらに11月分で「持ち直し」に上方修正され、12月分もその傾向が続いている。在庫調整が終了し、生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っている。昨年初まで増減を繰り返してきた鉱工業生産指数・前期比は10~12月期まで3四半期連続増加となった。17年1~3月期では四半期連続増加になりそうだ。日本の景気に明るさが見えてきた。

(日本を元気にする出来事、19年ぶり誕生の日本出身新横綱・稀勢の里、2008SNAでの改善幅が世界一)

大相撲懸賞、初場所は2横綱、1大関休場で前年比▲1.2%。期待された4場所ぶりの前年比増加はならず、しかし、稀勢の里が19年ぶり日本出身新横綱になったことは明るいニュースである。千秋楽結び稀勢の里が白鵬に勝った一番に過去最多タイの61本になった。明治神宮での新横綱土俵入りには貴乃花の2万人に次ぐ1.8万人が訪れた(図表3)。平日だったことを考慮すると期待の大きさがわかる。
GDP統計で2008SNAという新たな計算方法を使用すると、日本がR&Dの設備投資化で影響が一番大きかった国であることが判明した。日本の技術力の強さが再認識されることにつながろう。

(3月23日WBC決勝戦で日本代表が優勝し、日経平均株価と連動という09年の再現が、起こることを期待)

昨年のリオ五輪で日本選手が金メダルを12個獲得した。10個以上だと大会期間中の日経平均株価は上昇するというジンクスは守られた。今年は4年に一度のWBCが開催される。優勝した第1回・第2回は大会期間中に日経平均株価上昇となった。特に、第2回優勝決定日09年3月24日は第1回決勝が休日だったことと異なり、日本の市場が開いていた。09年3月24日の日経平均株価はWBCの試合展開と連動した(図表4)。第3回は敗退した準決勝直前まで954円上昇していたが、準決勝敗退で340円下げた。今年3月のWBCの決勝戦は日本時間で3月23日、木曜日だ。日本代表が優勝し、株価が連動するという09年の再来が起こることを期待したい。

(日本生活保護受給者前年比14カ月連続減少など雇用改善続く、消費者の物価上昇予想比率も上昇中)

雇用は堅調である。16年12月分有効求人倍率は25年5カ月ぶりの1.43倍だった。16年の自殺者は22年ぶりの2万2千人割れ。16年10月分で生活保護受給者の前年比は14カ月連続減少である(図表5)。
デフレからの脱却に向けた流れが続いている。2ケタの下落率が長く続いていた入着原油価格は12月下旬分(速報値ベース)で前年比+1.9%と上昇に転じ、1月上旬分(速報値ベース)で前年比+25.1%と2ケタの上昇になった。国内商品指数も上昇傾向で、日経商品指数17種16年11月分は前年同月比+6.5%と14年11月の+1.8%以来の2年ぶりの上昇になった後、17年1月分で+22.2%になった。日経ナウキャスト日次物価指数1月分S指数は+0.40%と前月から0.25ポイント上昇した。16年9月から始まった消費者マインドアンケート調査では1年後に物価が上昇するとみる人の割合が58.9%から17年1月の66.1%へと増加した。今年の春闘で賃金が上昇し、デフレからの脱却が確実なものになっていくことを期待したい。

(2017年2月2日現在)