宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

6月のトピック「○○以来や過去最高水準の経済指標が続々発表。「笑点」視聴率、大相撲懸賞等も明るい内容に」

2017年06月02日

(東日本大震災直前以来のレベルの売上高。経常利益は過去最高水準)

12年11月を谷とする現在の景気拡張局面は17年5月で54カ月と戦後3番目の長さとなった可能性が大きい。9月には58カ月となり高度成長期の「いざなぎ景気」の57カ月を抜くと思われる。こう言うと「そんな実感はない」という意見の方が多いと思われるが景気の山・谷は方向性が重要だ。昨年前半を中心とした1年半近くの景気の踊り場を乗り越えて景気は拡張を続けているとみられる。
6月1日に発表された17年1~3月期の法人企業統計・全規模・全産業の季節調査値は、足元の景気は意外と底堅いことを裏付ける興味深い数字になった。まず売上高の前期比は+2.2%と4四半期連続増加し、339.2兆円になった。東日本大震災(11年3月)発生直前の10年10~12月期343.1兆円以来の水準にやっと到達した。10年10~12月期当時の営業利益は12.4兆円、経常利益は13.1兆円だが、17年1~3月期では営業利益は16.1兆円、経常利益は20.4兆円で、利益率はかなり改善していることがわかる。17年1~3月期の営業利益の前期比は3四半期連続、経常利益の前期比は4四半期連続で増加している。ちなみに営業利益、経常利益とも16年10~12月期・17年1~3月期と2四半期連続して過去最高水準を更新した。

(企業収益に比べ出遅れ感のある設備投資。今後の伸びに期待)

過去最高水準の企業収益の割には、直近の設備投資の水準はまだ過去に比べて低い。それでも「ソフトウエアを除く設備投資」は3四半期連続して増加し、10.54兆円まで回復した(図表1)。これはリーマン・ショックの発生(08年9月)直後の08年10~12月期10.47兆円とほぼ同じで、08年7~9月期の11.5兆円以来の水準である。しかし、いざなみ景気時の最高の06年10~12月期の13.8兆円、消費税が5%に引き上げられた97年の10~12月期の13.4兆円、バブル景気直後の過去最高水準だった91年10~12月期の15.3兆円にははるかに及ばない。
但し、明るいデータも足元出てきている。例えば、日本経済新聞調査の17年度の設備投資当初計画は前年度比+13.6%の大幅増加である。企業収益水準からみて、企業が自信を取り戻す中で設備投資が出てくることが期待される局面である。

(4月分鉱工業生産指数はリーマン・ショック時08年10月以来の水準に回復)

鉱工業生産指数・4月分速報値の前月比は+4.0%と2カ月ぶりの増加になった。季節調整値は103.8とリーマン・ショック時08年10月分107.4以来の水準に回復した。4月分の生産をみると、15業種のうち輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業など11業種が増加した。また、鉱工業出荷指数・4月分速報値前月比は+2.7%とこちらも2カ月ぶりの増加で、季節調整値は101.1となった。出荷指数は生産指数と違いリーマン・ショック時の水準にはまだ遠いものの、消費税率引上げ直前の14年3月分107.4以来の水準に回復した。経済産業省の基調判断は16年11月分から回17年4月分まで6カ月連続で「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断になった。

(4月分の有効求人倍率は1.48倍と43年2カ月ぶりの高水準に)

4月分の有効求人倍率は1.48倍でバブル期最高の90年7月分の1.46倍を抜き、74年2月の1.53倍以来43年2カ月ぶりの高水準になった。2004年から統計がある正社員の有効求人倍率は0.97倍で過去最高になった。
雇用吸収力の大きい非製造業の景況感を日銀短観・業況判断DIでみると、直近の3月調査で大企業は+20と高水準にあり、中小企業も+4と「良い」超のプラスである。バブルが崩壊した後、中小企業の業況判断DIは92年8月調査から13年9月調査まで長期間にわたってマイナスだったが13年12月調査以降(新しい調査対象企業ベース)でマイナスになっていない。非製造業の景況感が中小企業でも「悪い」超にならない状況にあることが、有効求人倍率など雇用関連の数字がしっかりしている主要因だろう。
ヤマト運輸が宅配便の基本運賃を27年ぶりに値上げする。人手不足でもサービスの質を落とさない一方で、賃上げも値上げもできずにいた日本の運送業が転機を迎えていることの表れだ。宅配貨物取扱個数は今年1月分で前年同月比+12.3%と2ケタ増になった。うるう年の反動減がある2月分も同8.4%増としっかりした伸び率だ。需要があるのに人手が足りず、サービスの値段を上げざるを得なくなっている。

(前年比マイナスを脱する主な「物価指数」。但し、日銀物価目標2%に届かず、17年の金融政策は不変の見通し)

景気に関しても先行き「不安」を感じる人々が多い中、賃金上昇率がイマイチなことなどもあり、デフレから脱却できないと思い込んでいる人々も多いようだ。しかし、注目度が低いが極めて速報性がある、内閣府「消費者マインドアンケート調査」5月分(5月20日までのデータを集計し5月25日に発表)で、1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は76.2%と、16年9月の調査開始以来最大の数字になった(図表2)。
直近の物価指数・前年同月比の動向をみると、昨年とは明らかに変化している。日銀国際商品指数・5月分が11.9%上昇、また日経商品指数17種・5月分が15.5%上昇と高めの伸び率になっている。商品指数に続いて上昇する傾向にある国内企業物価指数は昨年12月までの下落から1月分で0.5%の上昇に転じ、4月分で2.1%まで伸び率を高めた。昨年まで概ね0.1%~0.3%の上昇率が続いていた企業向けサービス価格指数も4月分では0.7%の上昇と伸び率を高めている。4月分まで前年同月比で下落を続けてきた東京都区部消費者物価指数・生鮮食品を除く総合は5月分で0.1%と上昇に転じた。主な物価指数の前年同月比はマイナスを脱した。
日銀が金融政策の目標にしている全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合は、昨年は下落基調だったが、今年1月分で0.1%の上昇に転じ、4月分では0.3%上昇になっている。同指数の予測平均値をオールジャパンのエコノミストのコンセンサス予測の「ESPフォーキャスト調査・5月調査」でみると、16年度実績の▲0.2%の低下に対し、17年度は0.81%上昇、18年度は0.99%上昇となっている。
但し、高い方の予測をしている8人の平均値でも、17年度1.10%、18年度1.45%と、日銀の物価目標の2%には届かない。日銀の17年度の金融政策に関する予測は、短期の政策金利は現状維持という意見が全員で、長期金利の誘導目標も現状程度という見方が9割である。日銀の金融政策は、今年は動かない見通しだ。

(依然として根強い「不安」感。景気ウォッチャー調査の先行き不安DIは41.7と分岐点50を下回る)

これまで企業収益の割に設備投資がそれほど出てこなかったり、なかなかデフレからの脱却の実感が沸かなかったりするのは、人々の中に漠然とした「不安」感が強いためであろう。
「景気ウォッチャー調査」4月調査で要因別DIを作成してみた(図表3)。調査期間中に北朝鮮のミサイル発射実験があったため「北朝鮮」に関するコメントは、3月分の現状ゼロ、先行き3人に比べ、4月調査では現状11人、先行き63人と増えた。しかし先行きのコメント数で「不安」を下回った。「不安」は将来の社会保障や国際情勢などに対し感じている人が多いようだが、漠然としたもののようだ。「先行き判断」で「不安」とコメントした人は、トランプ大統領誕生直後の1月が81人と最近のピークで、2月に53人と低下した。3月は55人だったが、4月で69人と再び増加してきた。なお「米国大統領」は景気判断の材料にならなくなってきているようだ。前向きの経済活動のためには「不安」の払拭が必要な局面だろう。

(「笑点」の視聴率ランキングから早めにわかった堅調な1~3月期の個人消費)

最近の身近な社会データには明るいものが多い。「笑点」の視聴率ランキングはそのひとつだ。5月中旬に発表された1~3月期の実質GDP第1次速報値は前期比年率+2.2%となったが、6割近くを占める個人消費が同+1.4%としっかりした伸び率になったことが大きい。1~3月期の個人消費が堅調そうなことは1~3月期に「笑点」の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)が「その他娯楽番組」という分野で、第1位になった週が1度もなかったことから早めに予測できた(図表4)。
直近で0回は14年7~9月期と16年1~3月期だが、いずれも実質個人消費の前期比年率は+1.3%としっかりした伸び率になっていた。「笑点」が放送される日曜日の夕方5時30分に家でテレビを見ずに、買い物やレジャーのために外出している人が相対的に多かった可能性が大きいからである。

(新横綱・稀勢の里人気もあり、大相撲夏場所の懸賞本数2153本と過去最高更新。企業収益、広告費堅調示唆)

このところ大相撲は、久し振りに日本出身横綱の稀勢の里が誕生したこともあり、盛り上がっている。稀勢の里もファンの期待に応え怪我をおして出場した春場所では、見事に新横綱として優勝した。人気の新横綱が期待に応えて優勝したケースは15日制になってからは、大鵬、隆の里、貴乃花に次いで稀勢の里で4人目だ。ファンを元気づけることにつながり、いずれも景気は拡張局面になっている。
5月に開催された夏場所では7日目の稀勢の里対御嶽海の取組に森永賞も含めて61本と史上最高タイと受付制限いっぱいの懸賞がかかった。61本かかったのは今回で5回目だが、14日目や千秋楽という終盤以外では初めてだった。残念ながら稀勢の里は11日目から休場となってしまったので、千秋楽の61本は幻になってしまった。但し、夏場所全体では前年比+14.0%、2153本と初の2千本台の懸賞がかかった(図表5)。3月開催の春場所は1707本、前年比+2.1%で地方場所として最高本数を更新したが、夏場所では一段と懸賞がかかった。背景として、円高などにより企業収益が鈍化した昨年前半の景気の踊り場を脱し、為替が安定し世界経済が回復していることもあり、企業収益が良くなってきて、企業も広告費を出す余裕が出てきていることを示唆していよう。
なお、夏場所千秋楽の取組で、森永賞がかかったのは横綱・白鵬の全勝優勝を決めた結びの一番でなく、夏場所後に新大関に昇進することが決まった髙安の千秋楽の取組だった。新大関・髙安に対してもファンの期待が大きいことを示していよう。7月開催の名古屋場所での、人気力士の期待に応える活躍が、人々の気持ちを元気にし、息の長い景気拡張につながることを期待したい局面だ。

(2017年6月2日現在)