ホームマーケット身近なデータで見た経済動向11月のトピック「天候による一時的個人消費のもたつき表す「笑点」視聴率、消費の底堅さ示唆する「嵐」のアルバム」

11月のトピック「天候による一時的個人消費のもたつき表す「笑点」視聴率、消費の底堅さ示唆する「嵐」のアルバム」

2017年11月2日

(景気上昇を抑える可能性がある要因は、国内要因にあらず、海外要因か。但し、にわかに悪化する要因はなさそう)

41名のフォーキャスターが回答した「ESPフォーキャスト調査」17年10月特別調査によると、「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える可能性がある要因」(3つまで)で2ケタ回答になったものは、「中国景気悪化」28人、「円高」24人、「国際関係の緊張や軍事衝突」20人、「米国景気の悪化」14名、「IT部門(電子部品など)の悪化」10名である。国内要因では総選挙前の調査だったので「国内政治の不安定化」が7人で最多だったが2ケタには届かなかった。景気上昇を抑える可能性がある要因としては国内要因ではなく、海外発の要因が懸念されている。

指摘された海外要因も、北朝鮮情勢を除けば、にわかに悪材料になるものは少ないとみられる。中国の景気は、5年に1度の共産党大会が10月にあったため、直前9月分の国家統計局・製造業PMIが52.4に上昇するなど(それまでは16年10月分~17年8月分まで11カ月連続51台)一時的な上振れ感があったが、10月分では再び51.6に鈍化した。17年では中国実質GDPの前年同期比は、1~3月期+6.9%、4~6月期+6.9%、7~9月期+6.8%だったが、今後は緩やかに減速していこう。但し、高成長は保ちつつ推移するとみられ、にわかに鈍化することはないだろう。なお、11月9日公表予定の「ESPフォーキャスト調査」17年11月特別調査で3カ月ぶりに、中国景気(国家統計局・製造業PMI)予測を聞いている。共産党大会後の中国経済をフォーキャスターがどう見ているのか、結果が注目される。

(ワールドシリーズ進出チームからみて足もとの米国景気は良さそう。アトランタ連銀発表GDPナウ+4.5%)

米国景気は9月のハリケーンの影響を乗り越えてしっかりした展開となっている。7~9月期の実質GDPは前期比年率+3.0%となった。4~6月期の同+3.1%と同程度のしっかりした伸び率だ。10~12月期の実質GDPも堅調に推移しそうだ。アトランタ連銀は主要経済指標の数値を基に、独自のモデル計算で現行四半期の米GDP伸び率を推計、GDPナウとして公表している。11月1日発表のGDPナウは+4.5%になる見通しである。なお、現在の米国の景気拡張期間は11月で101カ月めで日本より長く、史上3番目の長さになる。

MLBのワールドシリーズに進出する球団と米国の実質GDP成長率との間に関連性がある(図表1)。第1次石油危機が発生した73年以降昨年16年までの44年間の実質GDP成長率の平均は+2.75%である。ヤンキースのような人気球団がア・リーグで優勝しワールドシリーズに出場する時の実質GDP成長率は高めになる。73年以降ではヤンキースは11回ア・リーグで優勝しているが、優勝年の実質GDP成長率の平均は+3.30%で44年間の平均を上回る。7回のワールドシリーズ制覇年の平均は+3.50%である。今年、ヤンキースは田中将大投手の活躍もあり5年ぶりにリーグ優勝決定戦に進出した。しかし、アストロズに敗れた。今年のア・リーグ優勝はナ・リーグ所属の05年以来2度目のアストロズで、4勝3敗で初のワールドチャンピオンに輝いた。なお、かつて1回だけワールドシリーズに出場した年の実質GDP成長率は+3.40%で平均を上回っていた。ナ・リーグ優勝は29年ぶりのドジャースだった。73年以降は5回ワールドシリーズに進出している。ワールドシリーズ出場年の実質GDP成長率の平均は+3.30%だ。ワールドチャンピオンになった2回の平均は+3.40%である。今年のワールドシリーズ進出チームからみると、足もとの米国景気は良さそうだ。

(日経平均株価が「16」連騰、連続上昇の最長記録を更新。月初の上昇連続記録は継続中、11月で「17」に)

10月2日から24日にかけて日経平均株価が16連騰し連続上昇の最長記録を更新した。これまでの最長は池田内閣が所得倍増計画を打ち出した時期に記録した60年12月21日~61年1月11日の14連騰だった(図表2)。日経平均株価はドル円レートが1ドル=110円台に入った9月後半以降上昇基調で、2万円台で推移している。10月22日の衆議院議員総選挙で与党が圧勝し、アベノミクスの継続期待が高まったことなどを背景に、11月2日の高値は2万2,540円をつけ、バブル崩壊後96年につけた2万2,666円の高値まであと一歩のところまできた。なお、日経平均株価の連騰記録は「16」で止まったが、16年7月以降続いている月初の上昇連続記録は11月で「17」になった。

(景気動向指数8月分改定値、一致CIは、リーマンショック前の07年10月以来10年ぶりの水準に)

12年12月からの「アベノミクス景気」が戦後2番目の長さの「いざなぎ景気」の57カ月を抜き、11月で60カ月目となっている。高度成長期の勢いはないと言われるものの、景気の山・谷の判定は基本的に方向性で決まるので、実感は乏しくても着実に改善していることを意味しよう。景気の長さに続き、株価の連騰期間も高度成長期を抜いた。日経平均株価が15連騰となって60~61年の14連騰を超えた10月23日には、経済指標でも明るい数字が出た。景気動向指数8月分改定値で、景気の量感を示す一致CIが上方修正され、117.7になった。これは消費税引き上げ前の駆け込みが出た14年3月分の117.6を上回り、リーマンショック前の07年10月分の118.8以来の水準である(図表3)。

今年に入って景気動向指数・一致CIとその採用系列の鉱工業生産指数は前月比こそマイナス、プラスを繰り返しているものの、水準は着実に切り上がっている。なお、鉱工業生産指数9月分速報値の102.4を10月分の製造工業予測指数の前月比で延長すると、107.2になるが、これはリーマンショック発生直後の08年10月分の107.4以来の水準に戻ることを意味する。

(雇用関連だけではなく様々な分野の経済指標で記録更新。東電エリア最大電力は東日本大震災以降の最大更新)

7月分~9月分の有効求人倍率が1.52倍と43年ぶりの高水準になり、東京23区内のホームレスが8月で695人とピークである金融危機直後である99年8月に記録した史上最高の5,798人の12%まで減少した。これまでは雇用関連の指標を中心に、久しぶりの数字になり、記録更新したというようなニュースが多かったが、最近は他の分野まで裾野が広がってきた感じがする。

東証の第一部と第二部を合計した株式時価総額(月末値)は、バブル期ピークの89年12月末が611兆円で過去最高であったが、17年9月末で628兆円と26年9カ月ぶりに更新した。さらに10月末で661兆円まで増えた(図表4)。日本企業が国内だけに依存するのではなく海外で稼ぐ、あるいはインバウンド関連で稼ぐことで、売上数量を伸ばす力をつけてきたことなども背景にあろう。日本政府観光局によると訪日外国人客数は今年1~9月期で、2,119万人となり、過去最速ペースで2,000万人超えを達成した。今年の訪日外客数は2,800万人程度になりそうで、「ヴィジット・ジャパン」のキャンペーンが始まった03年の521万と比べ5倍強になる。1~9月期の訪日客消費額は3.3兆円となった。同じ期間で3兆円超えは初めてで、年間で4兆円を突破する可能性が高い。

日銀短観17年9月調査の大企業・製造業業況判断DIは+22である。リーマンショック発生1年前、07年9月調査の+23以来10年ぶりの水準だ。東京電力エリアの最大電力は今年8月9日に5,383万Kwと東日本大震災以降最大を更新した。製造業の生産活動の堅調さが確認できるデータだろう。

(長雨や台風などの天候要因が個人消費を一時的に押下げ。10月の観光地の人出は前年比2ケタ減のところも)

足もと気になるのは非製造業である。日銀短観9月調査では大企業・非製造業の業況判断DIは+23と高水準ながら、6月調査に比べ横ばいにとどまった。前期比年率+2.5%の4~6月期・実質GDPでは、個人消費が前期比プラスだった。しかし7~9月期では関連指標から見て、実質個人消費が前期比マイナスになる可能性が大きい(図表5)。8月の関東の長雨や9月~10月の休日に重なった台風などの天候要因、昨年の円高の影響が今夏のボーナスのマイナス要因になったことなどが影響していそうだ。「景気ウォッチャー調査」では「不安」というコメントが相変わらず多く、漠然とした「不安」も財布のヒモを締める要因になっていそうだ。

10月分の各観光地の人出の前年同月比はかなり悪いところが多いようだ。吉野ヶ里歴史公園では9月の入場者が前年比103.5%増と佐賀県の補助金を活用した「子育てしたい券」が始まるなどの工夫で家族連れ客が増えて倍増となっていたが、10月分の前年同月比は天候により▲21.6%となってしまった。金沢兼六園の入園者10月分は前年同月比▲12.3%、函館五稜郭タワーの利用者も10月分は前年同月比▲15.9%と2ケタ減少になってしまった(図表6)。JRA(中央競馬会)の秋GIレースも秋華賞から天皇賞にかけての3レースが雨になり、入場人員はいずれも前年比2ケタの減少になってしまった。但し、そうした中でも売得金はプラスを推移したレースがあり、底堅さも感じさせる(図表7)。

(天候要因による消費の一時的な弱さ示す、9月半ば以降の「その他娯楽等番組」の「笑点」第1位、20%台視聴率)

最近、気になる身近なデータとして、「笑点」の視聴率が挙げられる。ビデオリサーチ関東地区の「その他娯楽等番組」の中で「笑点」が1位になることが多いことは、日曜の夕方にレジャーや買い物などの外出をせずにテレビを見ている人が相対的に多いことを意味する。昨年は23回も1位をとったが、今年は1~8月で1位は2回にとどまっていた。しかし9月17日の週以降10月29日までの6週(10月22日はサッカー中継が入り「笑点」は放送中止)のうち5週で1位だ。しかも20%台の高視聴率が3回ある。天候要因で足もとの個人消費はもたつき感が強い。

(東京23区の粗大ゴミの前年同月比6年ぶりの高い伸び率に、買い替え需要の動きの萌芽か)

しかし、内閣府が11月2日に発表した10月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.6ポイント上昇し44.5になった。内閣府は消費者心理の基調判断を「ほぼ横ばいとなっている」から「持ち直している」に上方修正した。このように消費の底堅さを示唆するデータは身近なデータの中にもある。

例えば東京23区の1日作業日当たりの粗大ゴミの前年同月比は直近の9月分で大きく伸び、エコポイントや地デジの影響が大きく出た11年半ば以来の約6年ぶりの高い伸び率になった(図表8)。カラーテレビの平均使用年数が8~9年程度で、09年から11年にかけてのエコポイント効果の買い替えがそろそろ出てくると予測されていたが、買い替え需要の動きの萌芽が出てきたと考えられよう。

また、シングルCDの売り上げ動向も個人消費の底堅さを示唆している。10月11日発売の、乃木坂46「いつかできるから今日できる」は85.0万枚、10月25日発売の欅坂46「風に吹かれても」が64.2万枚と、どちらも景気の良さを示す最初の週の売り上げによる初動50万枚を超えた。さらに、シングルCDではないが10月18日発売の嵐のアルバム「untitled」の初動が66.8万枚の売り上げとなった。10月29日までの累計では71.7万枚だ。嵐ファン、乃木坂46ファンなどの財布の紐は締っていないことを示唆するデータだろう。

(2017年11月2日現在)