宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

4月のトピック「足元の国内景気のもたつきは、寒波・大雪・花粉、政治の国内要因、予測不能なトランプリスクなどによる。早い桜の開花、地方場所最高更新した大相撲春場所懸賞本数など、景気拡張を示唆」

2018年04月03日

(2年ぶりに悪化した日銀短観・大企業・製造業・業況判断DIだが、水準は高水準。事前の想定よりは良い数字)

3月調査の日銀短観では大企業・製造業・業況判断DIは+24と8四半期ぶり悪化した。但し、「良い」が「悪い」を20ポイント以上上回るという高水準は継続している。12月調査(旧)の+25から1ポイント程度低下、12月調査(定例見直し後・新)の+26から2ポイント程度低下した。16業種中、鉄鋼や非鉄金属など8業種が低下した。足元、円高の影響や原材料高の影響などで一服感が出たようだ。鉄鋼や非鉄金属などは6月までの先行き見通しも低下となった。米国が鉄鋼25%、アルミ10%の追加関税を発動し、日本も対象となったことが嫌気されていよう。但し、製造業全体では13年6月調査以降20期連続して「良い」超のプラスである。+24は12月調査の見通し(新)+21より3ポイント改善している(図表1)。つまり想定していたより良かったということになる。また6月までの先行き見通しも+20と20台を維持していることから、息の長い緩やかな景気拡張局面が継続していることを示唆する数字と言えよう。

(大企業・製造業・業況判断DIと相関が強い鉱工業生産指数も1~3月期前期比8四半期ぶり減少見込み)

日銀短観・大企業・製造業の業況判断DIは、鉱工業生産指数と相関が強い。鉱工業生産指数・2月分速報値・前月比は+4.1%と2カ月ぶりの増加になったが、1月分の前月比▲6.8%減少をカバーするほどの前月比ではなかった。このため、先行きの鉱工業生産指数3月分を経済産業省の先行き試算値最頻値前月比(+0.5%)で延長した場合は1~3月期の前期比は▲2.0%、3月分を製造工業予測指数前月比(+0.9%)で延長した場合は1~3月期の前期比は▲1.9%と、どちらも8四半期ぶりの減少になる見込みだ。3月調査日銀短観で、大企業・製造業の業況判断DIが12月調査から低下したことと整合的だ。

(鉱工業生産指数のもたつきは一時的。4~6月期の前期比はプラスに戻る見込み)

先行きの鉱工業生産指数4月分を前月比(+5.2%:製造工業予測指数の前月比)、5月分・6月分を各々前月比ゼロで延長した場合、4~6月期の前期比は+7%程度のプラスになる見込みだ。先行き生産の景気拡張基調が続くことを示唆する数字だろう。18年3・4月分を製造工業予測指数前月比で延長すると、4月分はリーマンショックが発生した08年9月分以来の水準に戻る(図表2)。経済産業省の基調判断は2月分でも「生産は緩やかに持ち直している」と1月分と同じ判断継続となった。1~3月期が前期比マイナスになっても一時的であるとみている証拠だろう。

(景気動向指数の一致CIを使った景気の基調判断、3月分も一致CI前月差上昇なら「改善」継続に)

景気動向指数の一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年1月分まで同じ最高の基調判断で推移してきている。2月分では一致CI前月差が上昇に戻るので、17カ月連続して「改善を示している」という同じ判断が続くことになろう。2月分の一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は2カ月連続下降、一方、7カ月後方移動平均の前月差は上昇に戻ると予測する。

なお、3月分の鉱工業生産指数が製造工業予測指数などからみて前月比プラスになりそうなことは、3月分の一致CI前月差が上昇を維持する可能性が高いことを意味する。この場合は18カ月連続して「改善を示している」という判断が続くことになろう。万一、3月分の鉱工業生産指数が前月比マイナスになると、3月分の一致CI前月差が下降になり、3カ月後方移動平均の前月差の動向から見て、「足踏み」に転じる可能性が大きくなってしまう。

(日銀短観・中小企業・製造業・業況判断DIは91年8月調査以来の水準継続。全規模・全産業は前回から改善)

なお、3月調査の日銀短観はしっかりしている面も多い。例えば、中小企業・製造業の業況判断DIが挙げられる。中小企業・製造業の業況判断DIは16年9月調査で▲3と3四半期連続マイナスになったあと16年12月調査では+1とプラスに転じ、17年12月調査で+15と9月調査より5ポイント改善し5期連続プラスになった。なお、中小企業・製造業の業況判断DIは定例見直し後でも元の数字と変わらなかった。+15は91年8月調査+20以来の水準である。今回18年3月調査でも+15で変わらなかった。なお、3月調査の「最近」+15は12月調査の「先行き」見通しが+12になるとみていたのに対し、3ポイント上回る数字になった。足元の景況感が予測より大きく改善するという結果になった。中小企業・製造業の景況感が相当しっかりしている内容となった。

全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9月調査の▲48に近かった09年3月調査の▲46を底に上昇し、東日本大震災による一時的落ち込みなどを挟んで13年9月調査で+2と07年12月以来のプラスになった。その後は消費税率引き上げによるもたつきなど様々な動きがあったが緩やかに改善している。今回18年3月調査では+17で17年12月調査(新)より1ポイント改善した。円高や天候不順の影響などがあったものの、それを跳ね返しての改善だ。全規模・全産業という全体の景況感は19期連続してプラスの水準だ。景気が底堅いことを示唆する数字だろう。但し、全規模・全産業の「先行き」業況判断は+12と、「最近」+17から5ポイント悪化する見通しである。全体としてみた、企業の景気の先行きには不透明感が強いことを示唆していよう。

(GDPの概念に近い設備投資の2018年度計画・前年度比、全規模・全産業で+2.0%の増加スタート)

18年度の売上高計画は、大企業・中堅企業・中小企業、製造業・非製造業の、組み合わせ6つで中小企業・非製造業の0.0%以外のすべてのカテゴリーで増加になっている。マイナスのカテゴリーがないことは明るい数字と言えよう。雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は人手不足感が一段と強まってきていることを示唆する数字となった。大企業・全産業では▲22で12月調査の▲19(新・旧同じ)より3ポイント不足超が拡大した。92年2月調査の▲24以来26年1カ月ぶりの水準である。一方、中小企業・全産業では▲37で12月調査の▲35(新)より2ポイント不足超が拡大した。こちらは91年11月調査の▲38以来26年4カ月ぶりの水準である。バブル景気の「山」直後の人手不足感になっていることがわかる。こうした環境下、18年度の設備投資計画が3月時点としてはしっかりしたものとなっている。

18年3月調査の18年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+2.3%。一方、18年度の中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は▲16.8%だった。18年度の全規模・全産業の設備投資計画・前年度比は▲0.7%になった。一方、ソフトウェア投資額と研究開発投資額は、2018年度計画・前年度比は製造業・非製造業と大企業・中堅企業・中小企業を掛け合わせた6カテゴリー全てで増加となっている。このためGDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの設備投資」の2018年度計画・前年度比は、大企業・全産業で+2.7%。一方、18年度の中小企業・全産業で▲10.8%だった。18年度の全規模・全産業では+2.0%になった(図表3)。18年度は設備投資の伸びが期待される。

(予測不能なトランプリスクに市場は翻弄され、国際金融市場の乱調が継続)

1月下旬をピークに、最近にかけ、戻す局面もあるものの、米国・日本とも株価の下落基調が続いている。米国景気は足元堅調に推移しているが、そこに法人税引き下げやインフラ投資増加という財政拡張的な経済政策が実施されることになった。市場でこうした環境下、FRBが政策金利を以前の予想より早いペースで引き上げるのではという思惑が強まったことが株価下落の一因だろう。

また、最近トランプ政権の主要閣僚の交替が相次ぎ、鉄鋼とアルミニウムの関税引き上げや、中国製品に制裁関税を課すという保護主義的な動きをトランプ大統領が打ち出したことなども嫌気されたとみられる。まさに予測不能なトランプリスクに市場は翻弄された状況だ。米中貿易戦争を懸念する向きも多いが、トランプ大統領は無理難題を相手に吹き掛けて、落ち着きどころを捜す交渉を得意とするタイプとみられ、今後の成行きを注視したいところだ。

(FOMCの利上げは淡々としたペースか。米国の保護主義的な措置発動に対しTPP11は交渉における重要カードに)

しかし、悪い話ばかりではない。パウエル新FRB議長の下で開催された最初の3月のFOMCでは、ドットチャートからみて18年の利上げ回数は極めて4回に近いものの3回に据え置かれた。淡々と引き上げるという感触だ。過度な利上げペースへの市場の懸念は一旦収まった。

また、米国抜きのTPP11が合意し、3月8日にチリのサンディアゴで11か国が署名したことも明るい動きだろう。米国がアメリカ・ファーストと保護主義的な措置の発動を行うことに対し、TPP11のメリットは米国との交渉における重要なカードとなろう。

(寒波・大雪の悪影響に続き、85年以来では05年に次ぐ史上2番目のスギ・ヒノキ花粉の飛散量はマイナス要因に)

今年は天候要因などが国内景気に悪影響を及ぼした(図表4)。1月・2月の寒波・大雪の影響が大きかった。生鮮野菜などが大幅に上昇したため、主婦が節約したい時に使う、もやしの購入が大幅に増えた。家計調査・二人以上世帯の平均購入額をみると、1月は107円と約8年ぶりの高水準になった。

春になってスギ・ヒノキ花粉の飛散量は多く、3月28日までに東京・大田区では通常年の3倍近い、85年以来では05年に次ぐ史上2番目の飛散数となり、外出などの妨げとなり消費のマイナス要因となっている。4月1日の笑点の視聴率が関東地区その他娯楽番組で週間第1位であることや、4月1日の中央競馬GIレース大阪杯が前年比▲1.6%になったことにも影響していそうだ。

(観測史上3番目の早さの東京の桜の開花。主要百貨店大手3月の売上高増収。大相撲懸賞地方場所最高更新)

しかし今年は寒い冬の後に、早い春が来た。東京の桜の開花は3月17日と観測史上3番目の早さだった。平年は3月26日だが、それより5日以上早い3月21日以前に開花した年は、景気後退になったことは一度もない。春物需要が出るなどプラス面が多いからだろう。主要百貨店大手5社の3月の売上高は全社増収で、売上高・前年同月比の単純平均は+3.6%と2月分の+3.2%を上回った。

大相撲春場所の懸賞本数は1,825本と、これまで地方場所最高だった前年春場所の1,707本を6.9%上回った(図表5)。これで7場所連続前年同場所を上回り、企業収益・広告費の増加基調が反映されることになった。

(完全失業率はバブル期直後の水準まで低下。雇用の良さ反映し拾得届現金の対遺失届現金比率45%まで上昇)

完全失業率は、大雪で職探しができなかったという特殊要因が若干あるにせよ、1月分2.4%、2月分2.5%と低水準だ。小数点2位まででは1月分は2.36%、2月分は2.48%である。2.36%は93年4月の2.31%以来の低水準になる。

雇用環境の良さは、警察庁から公表している1~2月分の自殺者数が前年比▲8.5%減少していることや、警察庁の遺失届現金が15~17年と3年連続80億円台と高水準で、それに対する拾得届現金の比率が17年には45%まで上昇してきたことなどにも現れていよう(図表6)。

(目先の懸念材料は一段の円高進行だが・・。日米長期金利差は大きく過度な円高の可能性は小さいか)

1~3月の経済指標が天候要因などの影響で一時的にもたついたものになっても、景気の基調はしっかりしていよう。但し、目先の懸念材料は円高が一段と進むことだ。内閣府の今年1月の調査では採算レートは中堅・中小企業で1ドル=106.4円、上場企業で同100.6円だ。万一、安倍政権が揺らぐことになると海外投資家はアベノミクス終焉とみて現在と逆方向のマクロ政策を意識してしまう可能性もある。しかし、日米長期金利差は大きく3%近くにあることを考えると1ドル=100円を割り込む円高が長期間定着する可能性は小さいと思われる。