宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

5月のトピック「1~3月期の鉱工業生産指数や実質GDPのもたつきは一時的か。サッカーW杯の日本代表の活躍などに期待」

2018年05月02日

(1~3月期の実質GDPは前期比横ばい程度ともたつくか)

1~3月期の実質GDPは前期比横ばい程度になりそうだ。一時的な足踏み状態だろう。最大の需要項目である個人消費は前期比マイナスになる可能性が大きそうだ。GDPの個人消費に近い内閣府の消費総合指数の1~2月平均は10~12月平均に比べ▲0.1%である。また、供給サイドのデータから作成される日銀の消費活動指数の1~2月平均対10~12月平均は▲0.1%である。3月分の月次の関連データは前月比マイナスのものが多く、1~3月期の個人消費は芳しくない結果になったようだ(図表1)。これは1月、2月に寒波や大雪の影響が大きかったことや、またそのため生鮮野菜等の値段が高くなったことなど、天候要因が影響したようだ。また今年は花粉が大量に飛散し、外出を手控える人が多かったことも原因のひとつであろう。

(85年以降最大になった今年の花粉飛散数)

スギ・ヒノキ花粉がほどほどに多く飛ぶと医薬品やマスクが売れて消費にはプラスに働くようだが、あまりに多く花粉が飛ぶと外出を手控える人が増え、消費にはマイナスである。昨年17年3月の消費はほどほどに多く飛んだ花粉の影響がプラスに働いたようだ。今年は事前の予想では昨年の倍程度との予想で、85年以降第6位になるはずだったが、4月半ばの段階で85年以降最大を記録した(図表2)。花粉が非常に多く飛んだ日のJRA(中央競馬会)入場者数が落ち込むなど、消費にマイナスに働いた可能性があったようだ。

(景気への悪材料は「円高」「保護主義の高まり」を指摘する向きが多い)

「ESPフォーキャスト調査」は偶数月に昨年6月から「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える(あるいは景気を反転させる)可能性がある要因」を特別調査として、フォーキャスターにひとりあたり3つまで回答してもらっている。

直近の4月分では大きな変化がみられた。これまで20台を維持して概ね最大の懸念材料だった「中国景気の悪化」が16人まで低下し3位になった。中国景気は昨秋の共産党大会の後もしっかりした動きが続いており懸念材料に挙げる人が少なくなったのだろう。

懸念材料の第1位は「円高」で39人のフォーキャスターが指摘した。第2位は「保護主義の高まり」で20人。前回が4人だったので、米中間の貿易問題が3月以降にわかに高まったことがわかる。第4位は「米国景気の悪化」で前回と同じ13人だった。前回2月分では20人と第3位だった「国際関係の緊張や軍事衝突」は約3分の1の7人まで低下した。

南北首脳会談の実現で融和ムードが高まっている。5月から6月初の間に行われる予定の米朝首脳会談の行方も注目される。

国内要因は依然2ケタになったものはないが、「国内政治の不安定化」が7人と総選挙直前の調査だった昨年10月分の7人と並ぶ数字になった。安倍首相の総裁3選に暗雲が出てきたことで、アベノミクスの政策変更への懸念が出てきているのだろう。

(「暮らし向き(半年後)」判断は約1年半ぶりの低水準)

内閣府の消費者マインドアンケート調査で「暮らし向き(半年後)」判断の「良くなる」「やや良くなる」の合計の最近の動きは12月分の23.4をピークに低下傾向で、直近4月分は13.4とこの調査が始まったばかりの16年9月分の12.8、10月分の12.6以来の低水準になってしまった。足もとの不透明材料が影響している可能性があろう。

(1~3月期の鉱工業生産指数は8四半期ぶりマイナス。但し一時的か)

鉱工業生産指数は1~3月期に8四半期ぶりに前期比マイナスに転じた。昨年12月分の水準が高かった反動が大きく、1月分が前月比▲4.5%になったあと、2月分は同+2.0%、3月分速報値は同+1.2%となっている。4月分の製造工業予測指数(ひと足早く2015年基準に基準改定された)の前期比は+3.1%であり、生産指数は3カ月連続で前期比プラスの伸び率になりそうだ。大局的にみると足もとで生産が大きく減少する業種はなさそうだ。

4~6月期は再び前期比プラスに転じる可能性が高い。

(3月分景気動向指数による景気基調判断は「改善」を維持)

景気動向指数による景気の基調判断は機械的に行われるものであるが、2月分確報値までで「改善」という最上位の判断が17カ月連続で続いている。3月分速報値では一段階悪化し「足踏み」となる2つの条件のひとつである3カ月移動平均に係るものが下方修正の条件を満たしそうだ。万一、一致CIの前月差がもう1つの条件で▲0.1でも下降になると「足踏み」になってしまうが、一致CI採用系列の生産指数などが前月差プラスであるため、2カ月連続して前月差プラスは維持されるものとみられる。このため18カ月連続の「改善」になろう。

(引き続き良好な雇用指標、近々実質賃金は前年比プラスも)

完全失業率を小数点第2位まででみると、1月分2.36%、2月分2.48%、3月2.52%、1~3月期平均で2.45%の低水準まで低下している。有効求人倍率は1月分1.59倍、2月分1.58倍、3月分1.59倍である。1.59倍は74年1月の1.64倍以来の高水準である。雇用状況は引き続き良好である。

雇用環境の良さは金融機関の店舗強盗にもあらわれている。1月分・2月分と0件で、3月分も20日までで2件にとどまっている。昨年の3月20日までで5件だったことからみて改善していることは明らかである(図表3)。

実質賃金の前年比マイナスが良いデータとして指摘されることが多いが、名目の現金給与総額の前年比は1月分+1.2%、2月分+1.0%と1%台にはなっている。

デフレーターが持家の帰属家賃を除く総合が1月分1.7%、2月分+1.8%と生鮮食品の上昇で高い伸び率だった影響が大きい。3月分は+1.3%に鈍化している。

春闘の賃上げも3%には届かなかったものの、まずまずの伸び率になった。近々、実質賃金の前年比はプラスに転じる可能性が大きいだろう。

(サッカーW杯日本代表活躍で視聴率高まり、勝てば日経平均上昇)

サッカーW杯の日本代表メンバーがいよいよ5月末には決まる。西野新監督のもとどんな活躍がみられるか期待される。

サッカー日本代表がW杯の試合で活躍し結果を出すと視聴率が高く、日経平均株価も上昇する傾向にある。

なでしこジャパンが2011年女子W杯で初優勝した時は試合の度に視聴率が上がった。15年のW杯で勝利した準決勝の翌日の株価は上がったが、米国に敗れた決勝戦の翌日は下がった。

男子の日本代表がW杯の決勝トーナメント1回戦に進出したのは2010年のパラグアイ戦と2002年のトルコ戦の2回ある。視聴率は歴代6位、10位と高いが、いずれも敗戦のため翌日の株価は下落した(図表4)。

なお、サッカーW杯の優勝国の実質GDP成長率を前年と開催年で比較してみると、1986年アルゼンチン以降2016年ドイツまで8回連続して開催年の方が成長率が高くなっている(図表5)。

人気スポーツであるサッカー自国の代表が大活躍することが経済面でも大きなプラスになるのだろう。