宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

10月のトピック「生産やインバウンドは自然災害の影響で一服感。しかし「改善」は継続。大相撲懸賞本数秋場所で史上最高更新、広島セ・リーグ3連覇など、景気面で明るい材料は多い」

2018年10月01日

(約27年ぶりの高値をつけた日経平均株価、景気ウォッチャー模擬売買は3連勝中)

9月28日に日経平均株価は一時24,286円10銭まで上昇し、91年11月14日以来の日中高値をつけた。最近の株価上昇の背景を見てみよう。トランプ米大統領が対中貿易戦争で2,000億ドルの購入に対して25%の関税を追加するとみられたところが、年内は10%の追加にとどまった。また、日米首脳会談の結果、2国間の「物品貿易協定」(TAG)の交渉開始で合意し、協議中は自動車への追加関税発動をしないことが決まった。このように貿易問題に関する過度な警戒感が後退した。ドル円レートが1ドル=113円64銭と9カ月ぶりの円安水準になった。こうした中、日本の株価の割安感、業績の良さが再認識されたものと思われる。

「景気ウォッチャー調査」の現状判断DI(季節調整値)は7月9日発表の6月分で48.1と前月差1.0ポイント上昇し、22,052円18銭で買い建てとなった。8月8日発表の7月分では「平成30年7月豪雨」の影響を主因に前月差1.5ポイント下降し46.6となり、22,644円31銭で売り建てとなった。豪雨の悪影響がいく分剥落した9月10日発表の8月分では前月差2.4ポイント上昇の48.1となり、22,373円08銭で買い建てとなっている。

9月末(28日)の終値は24,120円04銭で、含み益は1,746円96銭となる。現在まで景気ウォッチャーによる模擬売買は3連勝、7月9日から9月末までの利益合計は2,610円31銭とまずますのパフォーマンスである。10月9日発表の9月分が前月差▲1.0ポイント未満の下落にとどまれば、買いシグナル継続となる(図表1)。

(平成最後の夏は自然災害が多発。インバウンド需要にも悪影響か)

今夏は6月に発生した大阪北部地震と9月の北海道胆振東部地震と大きな地震が相次いだ。7月の「平成30年7月豪雨」は、中国地方中心に大きな被害をもたらした。台風も台風24号までで5個上陸した。特に台風21号、24号は「非常に強い台風」で年に2個上陸は(データがある91年以降)史上初である。

世界的に保護主義の動きが台頭していることに加え、国内では相次ぐ自然災害で鉱工業生産指数などが5月分の前月比減少の後6・7月分も3カ月連続で前月比減少となり弱含んだ。8月分は前月比+0.7%と事前予想の1%台より弱いながらも4カ月ぶりにプラスに転じた。9月分もプラスが見込まれるものの、7~9月期は前期比マイナスになる公算が大きくなった。夏場の生産は弱かったと言われるだろう。

自然災害の多さで、これまで順調に高い伸びを示してきたインバウンドが需要変調をきたしている。訪日外客数の前年同月比は6月分の+15.3%まで2月分以降2ケタの増加が続いていたが、7月分+5.6%、8月分+4.1%と1ケタの伸び率に鈍化している。

外国人観光客の百貨店売上高は6月分+52.5%のように、今年は1~6月分全て30%台以上の高い伸び率だったが、7月分+19.8%、8月分+20.0%と、うるう年の反動が出た17年2月分の+9.6%以来の低い伸び率に転じている(図表2)。日本は自然災害が多く危険だという風評が立たないことを願うばかりである。

(景気動向指数の景況判断は一時的悪材料を乗り越え「改善」継続)

しかし、日本の景気は底堅いと思われる。鉱工業生産指数などを含む景気動向指数・一致CIも5~7月分まで3カ月連続前月差が下降し、7月分では3カ月後方移動平均の前月差もマイナスに転じた。16年11月から続く「改善を示している」とうい最上位の景況判断が、一つ下の「足踏みを示している」に転じるには、あと3カ月後方移動平均の前月差の下降幅の大きさ次第というところまで7月分では追い込まれたが、何とか持ちこたえた(図表3)。

10月5日発表の8月分の景気動向指数・一致CIの前月差は+1.4ポイント程度になりそうで、23カ月連続して「改善」の判断が続きそうだ。9月分、10月分も製造工業予測指数からみて一致CIの前月差のプラス基調が続く可能性は大きく、今年末には戦後最長の「いざなみ景気」に並ぶという景気の回復基調は崩れないとみられる。

(大相撲懸賞本数は横綱・大関皆勤の秋場所で史上最高更新。企業収益、設備投資の強さと整合的な形に)

鉱工業生産指数前月比が5~7月分でもたついたのと同様、大相撲の懸賞本数も5月の夏場所と7月の名古屋場所で前年同場所が連続してマイナスとなってしまった。個人は懸賞を掛けられないので企業の動向がポイントであるが、企業収益が悪くなったわけではなく、横綱・大関の休場という一時的要因での減少だった。横綱・大関皆勤の秋場所では2,160本と史上最高を更新した(図表4)。大相撲懸賞本数の悪化の要因は一時的要因だと言う点で、自然災害などの一時的要因での悪化した鉱工業生産指数と似ている感がある。

法人企業統計によると4~6月期の経常利益は過去最高水準を更新した。設備投資の先行指標である7月分の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比+11.0%と大きく伸びた。7~9月期の見通しは前期比▲0.3%だが、実績はそれを上回り増加になる可能性が大きくなっている。日銀短観9月調査の2018年度設備投資を計画も大企業全産業+13.4%、中小企業全産業▲8.4%と、どちらも例年に比べ高めの計画になっている。

(刑法犯・犯罪や自殺は今年も大きく改善。背景に雇用所得環境改善)

8月分の有効求人倍率は1.63倍と74年1月の1.64倍以来の高水準で、一方、8月分の完全失業率は2.4%と低水準になっている。また実質賃金5~7月分は3カ月連続して前年同月比増加となった。日銀短観9月調査の雇用判断DI「過剰」-「不足」は大企業・全産業で▲23と、92年2月調査の▲24以来26年7カ月ぶりの水準になった。雇用・所得環境は良好な状況が続いている。

限界的な雇用関連の社会データである刑法犯総数(認知件数)は18年1~8月で54.2万件と、前年比▲11.2%と減少傾向にある(図表5)。自殺者数も1~8月で前年比▲6.5%であり、この伸び率のままいくと今年は2万人割れもあるかもしれない状況だ。金融危機以来3万人台があたり前だった状況とは雲泥の差がある。

(最終回23.5%とNHK朝ドラ「半分、青い。」は有終の美。自然災害など「塞ぐ影」乗り越えるエールに)

身近な社会現象も景気回復基調を裏付けるものが多い。

7~9月期の「その他娯楽番組」の週間視聴率で「笑点」が1位をとったのは1回だけだ。日曜の午後5時半に外出している人が相対的に多かった可能性を示唆している。景気が拡張局面にある目安である初動50万枚(発売最初の週)突破のシングルCDは、8月の「ジコチューで行こう!」(乃木坂46)、同「アンビバレント」(欅坂46)、9月の「センチメンタルトレイン」(AKB48)と続いて出現している。

中央競馬会の年初からの売得金の累計は9月24日現在前年比+1.4%で、7年連続プラスに向けて順調である。こうしたデータからは個人消費の基調の底堅さがうかがわれる。

18年度前期のNHKの朝ドラ「半分、青い。」の視聴率は平均21.1%と、16年度前期の「とと姉ちゃん」(22.8%)以来の高水準となった。最終回では、東日本大震災での親友の死を乗り越えて新製品発売の祝賀会を行うヒロインの姿が描かれた。高度成長期の終わりから現代までを七転び八起きで駆け抜ける物語は、自然災害などの「塞ぐ影」を前向きに乗り越えるための人々へのエールとなった感がある。

(セ・リーグで広島東洋カープ初の3連覇。デフレ脱却のシグナルに。名目成長率マイナス年の優勝なしは広島だけ)

セ・リーグで広島東洋カープが初の3連覇、27年ぶりの地元胴上げを果たした。広島は「平成30年7月豪雨」の被災地のひとつで、新聞・テレビは被災地に元気を与えたと大々的に報じた。スポーツは人々に生きる力を与える。市民球団である広島は1975年に初優勝するまでは、68年に3位になったのが最高だった。以降、広島が活躍しAクラス(1~3位)に入った年は、名目GDP成長率が高めになる傾向がある。75年以降17年までの名目GDP成長率の平均は+3.3%だが、広島がAクラス年の平均は+5.2%、広島の優勝年の平均は+5.9%である。バブルが崩壊した92年以降、広島のAクラスは94~97年までと13~14年、そして16~18年の優勝年の9回である。金融危機発生数の98~12年の失われた15年の間は全てBクラスである。親会社からの援助がなく、景気の悪い時期は思ったような補強が出きなかったのかもしれない。名目GDP成長率はマイナスになった年はその間8回ある。セ・リーグの他の5球団は全てマイナス成長年に優勝しているが、広島だけは優勝はおろかAクラスもなかった。92年から17年の名目GDP成長率の平均は+0.5%、広島のAクラス年の8回の平均は+1.8%と違いがある(図表6)。広島Aクラスはデフレ脱却のシグナルと言えそうだ。