宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

11月のトピック「保護主義台頭への懸念、自然災害などで、かげりが見える足元の経済指標。下振れリスクを跳ね返し、景気拡大が継続することを期待する局面に。「まんぷく」の高視聴率、日本シリーズ対戦カードに明るさ」

2018年11月02日

(9月の景気基調判断が下方修正「改善」から「足踏み」へ。背景に地震や台風による生産・出荷の落ち込み)

9月分の景気動向指数・速報値では、一致CIの前月差が▲1.6程度と2カ月ぶりの下降になると予測される。予測通りだと、3カ月後方移動平均前月差の3カ月連続の下降となり、その3カ月合計が▲1.20になる。判断基準の目安である▲1.02を超えるマイナス幅となり、16年10月から続いてきた「改善を示している」から「足踏みを示している」へ24カ月ぶりに基調判断が下方修正されるとみられる(図表1)。翌週、発表される7~9月期の実質GDPが前期比年率▲0.9%程度のマイナス成長になりそうなことと合わせて、2週連続足元の景気のもたつきを示唆する指標とそれに関する報道がなされよう。

9月分速報値の鉱工業生産指数が前月比▲1.1%減少、さらに鉱工業出荷指数が前月比▲3.0%と生産を上回る減少となった。景気動向指数・一致CIによる2年ぶりの判断悪化の背景には、一致CIに採用されている、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数という生産・出荷関連指標の悪化がある。

9月に発生した北海道胆振東部地震や、2度の台風の上陸の影響などがマイナス要因になったとみられる。出荷の減少率が生産を上回った理由は、米中貿易戦争の影響が足元で大きく顕在化し、需要が大幅に減少した影響と言うよりも、月末の台風の影響などで予定していた出荷が出来ず、出荷待ちの在庫が積み上がった一時的な面が大きいように思われる。その証拠に、10月上旬の貿易統計で前年比+13.9%増加した輸出の中で、大きく増加した品目が、挽回生産をしたとみられる自動車、半導体等電子部品であったことが挙げられよう。

(「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える可能性がある要因」は「保護主義の高まり」と「中国景気の悪化」)

「ESPフォーキャスト調査」では17年6月以降偶数月に、「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える(あるいは景気を反転させる)可能性がある要因」を特別調査としている。フォーキャスターに11項目プラス自由回答枠の中から、ひとりあたり3つまで選択してもらっている。なお、自由回答で何らかの要因が多くのフォーキャスターから指摘されたことはない。消費税増税1年前の18年10月でも、自由回答の答えは3個、内容は消費税増税と日銀の出口戦略だった。国内要因ではこれまで2ケタになった項目はない。

18年10月調査で第1位は「保護主義の高まり」で28人である。18年2月調査では4人だったが、トランプ大統領が鉄鋼・アルミ関税引き上げに言及した直後の調査である4月調査で20人に増え、6月調査では22人、8月調査は30人だった。今年になって注目度が急上昇の要因である。トランプ大統領の動向からみて当面「保護主義の高まり」が上位に挙げられそうだ(図表2)。

第2位は「中国景気の悪化」である。17年6月の第1回調査では27人が指摘した第1位の項目だった。17年秋の共産党大会が終わった後の景気の悪化を懸念する向きが多かったため、17年10月調査で28人、12月調査で29人と第1位をキープしていたが、18年に入って中国景気の底堅さが意識されるようになると2月調査以降は1位を明け渡し6月調査で13人まで低下したが、米中貿易戦争の懸念が高まる中、直近の10月調査で26人まで戻してきた。

(リーマン直後月以来の日経平均下落幅の10月でも、サッカー日本代表金星の翌日は291円88銭上昇)

10月の日経平均株価は月間で2,199円58銭安となった。下落幅はリーマン・ショック直後の08年10月(2,682円88銭)以来10年ぶりの大きさだった。9.1%という下落率は、英国国民投票でEU離脱派が勝利した16年6月(9.6%)以来の大きさだった。10月2日に約27年ぶりの高値を付けたあとの急落だった。急落局面の中で大きく前日比で上昇した日は10月17日の298円88銭高だった。前日の10月16日、森保ジャパンになって3試合目のサッカー日本代表がキリンチャレンジ杯で当時世界第5位のウルグアイと対戦し、4対3で勝利し、金星を上げていた。17日の上昇幅は10月では31日の463円17銭、30日の307円49銭上昇に次ぐ3番目の上昇幅である。古くは「ジョホールバルの歓喜」と言われる97年11月16日イランを3対2で破って初のワールド杯出場を決めた試合の翌日11月17日の1,200円80銭高や、今年のロシアワールド杯での唯一の勝利となった6月19日のコロンビア戦(2対1)の翌日6月20日の276円95銭高などと同様、国民的な人気スポーツであるサッカーの日本代表が大活躍すると、翌日の日経平均株価は上昇するというジンクスは今回も守られた(図表3)。

(雇用情勢「変調」を言う前に、今年と昨年の9月のカレンダーを比べて営業日の数を数えてみよう)

9月の雇用関連データは有効求人倍率が1.64倍と8月より0.01ポイント上昇し、74年1月以来の高水準を記録した(図表4)。また9月の正社員の有効求人倍率は1.14倍、9月の新規求人倍率は2.50倍と、ともに過去最高を記録した。また9月の完全失業率は2.3%と8月より0.1ポイント低下した。雇用環境の良さも背景に9月の自殺者は前年同月比▲8.4%の減少、1~9月の累計で▲6.4%の減少となり、年間で2万人割れの可能性も出てきた。

総じて9月の雇用関連データは良い内容だったと思うが、「雇用情勢に変調も」という一部報道が見られた。9月分の新規求人数が前年同月比▲6.6%と、約2年ぶりにマイナスに転じたことに注目したようだ。しかも09年11月以来の主要産業全てでマイナスだと書いていた。「企業は事業の見通しが良くなければ採用を抑制する」と見たようだ。しかし、ここは9月のカレンダーを今年と昨年で比べてみた方が良い。昨年の9月は日曜日が4日、土曜日が5日、祭日が2日だが祭日が土曜日と重なったのが1日あった。今年の9月は日曜日が5日、土曜日が5日、祭日が2日で、土・日と重なってはいなかった。つまり営業日が今年の方が2日少ない。1日あたりの求人数が同じと仮定すると、営業日減少分だけで約10%新規求人が減ってもおかしくないと考えられ、前年同月比▲6.6%は実質的にはそれなりのプラスの伸び率と解釈することも可能だろう。なお、新規求人の9月分季節調整済み前月比は+1.7%と増加している。

今年の9月のカレンダーは貿易統計の予測を混乱させた。9月分の貿易収支は1,313億円の黒字になったが、事前に赤字予測が多かった。9月上中旬が▲3,168億円の赤字であったからだ。9月上中旬では輸出が前年比+1.0%、輸入が+17.2%とどちらも増加であった。9月下旬分を計算してみると4,481億円の黒字で、輸出の前年比は▲5.4%、輸入が▲11.7%であった。9月上中旬の営業日は昨年と同じ13日であったが、今年の9月下旬は休みが多く営業日が昨年よりも2日間少なかったため、かなりの攪乱要因となったようだ。9月のカレンダー要因が、必要以上に人々の景況感を悪化につながっていないか懸念される。

(笑点の視聴率10月は全て第1位、10月の消費者マインドが悪化は懸念。要注視のエルニーニョ現象)

日曜日の夕方日本テレビ系列で放映されている「笑点」の視聴率がビデオリサーチ(関東地区)の「その他娯楽番組」のジャンルで第1位をとることが多いと、消費活動が抑制されている可能性が大きい傾向にある。買い物やレジャーに出かけずに、夕方「笑点」を見る人が通常よりも多くなっていることを意味するからだ。10月は4週とも全て「笑点」が第1位となった。好天に恵まれた10月28日の視聴率が20.8%と高かったことが気に懸る。株価下落、米中貿易戦争への懸念、自然災害、景気足踏みに関する報道などで必要以上に消費者のマインドが悪化することが懸念される。

10月の「消費者マインドアンケート調査」で暮らし向きに関する5段階の回答を「景気ウォッチャー調査」と同様の手法でDIを作成すると41.1になり、9月の42.7より1.6ポイント低下、調査開始の16年9月以降で最低水準となった。10月の「消費動向調査」消費者態度指数は43.0と前月に比べ0.4ポイント低下した。43.0は17年1月以来21カ月ぶりの低水準である。

10月上旬、10月中旬のエルニーニョ監視指数・海面水温の基準値偏差はともに、エルニーニョ発生の目安の+0.5℃を上回る+0.8℃である。今年の冬は暖冬をもたらし消費にマイナスに作用するエルニーニョ現象が発生する可能性が高くなったことからも、10~12月期、1~3月期の消費動向は要注視だ。

(毎週最高視聴率が23%台の「まんぷく」、「ソフトバンク対広島」日本シリーズは景気底堅さ示す身近なデータ)

しかし、平成最後の夏の自然災害による景況感の落ち込みを跳ね返すような身近な社会現象も多数ある。

NHK朝の連続テレビ小説18年度後期の「まんぷく」は初回視聴率が23.8%と、01年度後期の「ほんまもん」の23.1%以来17年ぶりの高水準でスタートし、以降も毎週の最高視聴率が概ね23%台と高い視聴率を記録している(図表5、図表6)。「まんぷく」は安藤サクラ主演、その夫役は長谷川博己。インスタントラーメンを開発した日清食品創業者の安藤百福氏の妻・仁子(まきこ)さんをモデルにしたドラマである。安藤百福氏は波乱万丈の人生をおくったが何度も敗者復活戦で立ち上がり、とうとう世界の食文化に革命を起こす大発明をした人であることはよく知られている。そうした夫を支えた主人公のドラマが支持されていることは、世の中の前向きな風潮を表しているように思われる。

JRA中央競馬の売得金年初からの累計前年比は10月で週を追うごとに少しずつ伸び率を高めている。9月24日まででは+1.4%だったが、10月2日+1.5%、10月21日+1.7%、10月28日まででは+1.8%まで上昇した。売得金は名目GDPとの相関が高いので、景気の底堅さを示すデータのひとつと言えよう(図表7)。

今年の日本シリーズの対戦カード、「ソフトバンク対広島」も景気の底堅さを示唆している。不思議なことに日本シリーズの対戦カードは、景気と密接な関係がある。86年以降17年までのデータでみると、セ・パ両リーグの人気ランキング(シーズン前に発表される読売新聞の世論調査をもとに作成)の合計数が2~5のケースは18回あるが、そのうち景気拡張局面は17回で、景気後退局面は1回だけである。逆に不人気球団が日本シリーズに絡んだランキング合計が7以上(実際には9以上はなく、7~8)の年は景気拡張局面が3回、景気後退局面が5回と景気が悪い年が多い。なお、3回の拡張局面はいずれも下剋上絡みの対戦カードが実現した年である。判官贔屓の日本人なので、下剋上で日本シリーズ出場を果たした球団に対して、にわかファンになり応援する人も多いのであろう。人気ランキング合計が6の年は景気拡張局面3回、後退局面3回である。合計2~5と合計7~8の中間の結果である。また、86年~17年までの実質GDPの暦年成長率をみると、ランキング合計が2~5の年の平均は1.92%、合計6の年の平均は1.57%、合計7~8の年の平均は0.94%と、きれいに区分される。

今年の対戦カードはセ・リーグが人気3位の広島、パ・リーグはリーグ2位から下剋上で進出した人気1位のソフトバンク。ランキング合計は4である。地域的には西に偏った組み合わせで「西日本シリーズ」ではあるが、景気は拡張局面が継続していることを示唆していよう。