宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

1月のトピック「年末年始のマーケットは波乱の展開だが、平成最後の紅白でのサブちゃんの「まつり」熱唱、正月3が日の初詣の人出、マグロ初競りなどの身近なデータは年末年始の景気の底堅さを示唆」

2019年01月07日

(7~9月期マイナス成長を反映した18年の「今年の漢字」・「災」)

18年の「今年の漢字」が「災」になったと大きく報道された。日本漢字能力検定は12月12日に毎年、その年1年の世相を表す「今年の漢字」を発表している。一般の人がはがきやインターネットで投票し、多く票を集めたものが選ばれる仕組みで、その年の世相を表すものとして注目される。京都・清水寺で同寺貫主が揮毫し、メディアにより大々的に報道される。18年で24年目を迎えたが、振り返ると選ばれた漢字がその年々の景気の良し悪しを映している。

18年7~9月期実質GDP成長率・第2次速報値は自然災害の影響が大きく前期比年率▲2.5%のマイナス成長だった。また、夏場の自然災害の影響で、景気動向指数を使った機械的な景気の基調判断が、それまでの「改善」から、9月分・10月分は下方修正され「足踏み」になった。11月分も「足踏み」の見込みである。18年の「今年の漢字」である「災」は、このような景気の落ち込み要因を示唆するものになった(図表1)。

平成最後の夏には、北海道胆振東部地震、大阪府北部地震などの地震、平成30年7月豪雨、台風21号、24号の直撃、記録的猛暑など、自然災害が多発した。北海道胆振東部地震では、北海道全域で電力が止まる「ブラックアウト」も生じた。自然災害は日本各地で人々の生活を脅かした。景気にも悪影響を及ぼした。

なお、「災」が選ばれたのは、投票開始直前の10月下旬に新潟中越地震が発生した04年以来。04年は一時的もたつきのあと景気拡張局面が継続した。18年も景気のもたつきも一時的で、10~12月期実質GDP成長率は前期比年率プラス成長に戻ると予測される。

(「笑点」の視聴率「その他の娯楽番組」部門で週間第1位の多さなどが暗示する「高齢者の消費マインド低迷」)

「笑点」がビデオリサーチ社の視聴率調査、「その他の娯楽番組」部門で週間第1位を取る回数が少ないと、四半期ごとに発表される実質個人消費が高まる傾向にある。逆に部門1位を多発していると個人消費が良くない可能性がある。

日曜の夕方に買い物やレジャーなどの外出をせず家でテレビを見る人が相対的に増える現象は、消費の悪化を示すサインと言えるだろう。景気に陰りが見えてくると、「笑点」の明るい笑いで暗くなりがちな気持ちを吹き飛ばしたいという人々の心を掴む面もあろう。

18年10~12月期で1位を獲得した回数は9回になった。18年はそれまで1~9月までの3四半期の合計でも8回だったことを考えると、明らかに10~12月期は1位の回数が多かった。

この状況を裏付けるデータもある。「笑点」の視聴率1位が増えてきた10月からの消費者態度指数を見ると、10月分と直近の11月分は2カ月連続で前月を下回っている。年齢階級別でみると、もともと低水準の70歳以上の階級での下落幅の大きさが気になる。消費増税まで1年を切ったことで、年金で生活し、クレジットカードを持てずポイント還元の恩恵にも浴しにくい高齢者の不安心理を高めた可能性がある。高齢者は人口が多いだけに消費の増加テンポを抑制することになるかもしれない。「笑点」は特に高齢者からの人気が高い番組だけに、こうした消費マインドの減退を示すサインになっていると言えそうだ。

警察庁によると、18年1~11月分の自殺者数の累計は19,030名で前年同月比▲4.5%であり、18年年間でも9年連続減少になりそうだ。但し、10月・11月分と2カ月連続して前年同月比は増加となっている。17年の同じ月がかなり少なかった反動もあるものの、「笑点」の視聴率と同様の動きなので気懸りだ(図表2)。

10月の消費税増税に対してはしっかりした対策が打たれるので、全体としての景気が落ち込むことはないと思われるが、幅広い目配せが欠かせない局面だろう。

(「ESPフォーキャスト調査」特別調査:注目される景気腰折れ材料の推移、再び円高懸念も)

「ESPフォーキャスト調査」では17年6月以降偶数月に、「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える(あるいは景気を反転させる)可能性がある要因」を特別調査と実施している。フォーキャスターに11項目プラス自由回答枠の中から、ひとりあたり3つまで選択してもらっている。なお、自由回答で何らかの要因が多くのフォーキャスターから指摘されたことはない。消費増税実施が「半年から1年後にかけて」の範囲内に入った18年12月調査でも、自由回答も含め国内要因で2ケタになった項目はない。

18年12月調査で第1位は「保護主義の高まり」と「中国景気の悪化」で、ともに30人である。18年2月調査では4人だったが、トランプ大統領が鉄鋼・アルミ関税引き上げに言及した直後の調査である18年4月調査で20人に上がり、12月調査では30人になった。18年になって注目度が急上昇の要因である。かつて景気腰折れ懸念材料のトップクラスで18年2月調査、4月調査、6月調査の3回で第1位だったのは「円高」である。18年6月調査の24人まで20人台であったが、18年10月調査では9人と初の1ケタ台に低下した。しかし、18年12月調査では14人と再び2ケタ台に上昇した(図表3)。

なお、この年末年始にドル円レートは1ドル110円台前半から100円台へと水準が円高方向にシフトした。ドル円レートの先行指標である日経新聞の円安の記事から円高の記事を引いたDIは、12月前半で8カ月ぶりに円高超に転じ12月後半でその幅を広げたが、それに沿った動きになった(図表4)。

(マグロ初競り過去最高値や、平成最後の紅白でのサブちゃんの「まつり」熱唱は景気の良さを示唆)

景気動向指数・CI一致指数を基準とした機械的な景気の基調判断は、直近の18年10月分で2カ月連続「足踏みを示している」になっている。緩やかな景気拡張であるため、ちょっとしたことで下振れしやすい。

CI一致指数の景気の基準判断が、9月分で24カ月ぶりに最上位の判断である「改善を示している」から「足踏みを示している」へ下方修正されたのは、夏場の台風や地震といった自然災害の影響が大きく出たことから、下方修正の基準(当月の前月差がマイナスで、かつ3カ月後方移動平均前月差の3カ月分の累計が基準以上の下降幅になった)を満たしてしまったからだ。10月分に続き11月分の基調判断も「足踏み」が継続する見込みだ。「改善」に戻るための基準は「3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇、かつ当月の前月差がプラス」である。「いざなみ景気」の73カ月に並ぶ戦後最長の景気拡張期間となる18年12月分で、タイミングよく「改善」に戻ることが期待される。

12月まで景気拡張局面が続いたことを裏付ける身近な社会現象は、平成最後の「NHK紅白歌合戦」には、50回出場を区切りとし5年前に紅白を卒業した北島三郎が特別枠で復帰し「まつり」を歌ったことだ。「やっぱりサブちゃんを紅白で見たい」というファンの期待の声を受けた出演依頼を承諾したという。北島三郎が数あるヒット曲の中で、人々の気持ちを盛り上げる「まつり」を歌った紅白は過去6回全て景気の拡張局面に当たる(図表5)。なお、バブルが崩壊した92年や、東日本大震災が発生した11年などでは、しんみりした曲調の「帰ろかな」を歌っている。

東京・豊洲市場(江東区)で1月5日朝、昨年10月の開場後初めてとなる「初競り」が行われ、278キロの青森県大間産本マグロが、記録の残る99年以降で最高値となる3億3,360万円(1kg当たり120万円)で競り落とされた。13年に付けたこれまでの最高値(1億5,540万円)の2倍の高値で足元の景気の良さを示唆する数字と言えよう(図表6)。

(正月3が日の初詣の人出の数ベスト3合計では2万人減少、「苦しい時の神頼み」が減った可能性)

正月3が日の初詣の人出が多い神社・仏閣は、警察庁が最後にランキングを発表した09年では1位は明治神宮、2位・成田山新勝寺、3位・川崎大師、4位・伏見稲荷大社であった。10年以降伏見稲荷大社が人出数をカウントしなくなった。

初詣の人出数は天候など様々な要因に左右されるが、バブル崩壊後などに顕著だったのは「苦しい時の神頼み」という要因だ。19年の正月での上位3箇所の初詣人出の合計数は936万人で、天候が良かったにもかかわらず18年の938万人から2万人減少した。「苦しい時の神頼み」的な参拝客が減った可能性がある。なお、19年はこれまで1位を続けてきた明治神宮が312万人と昨年の317万人から減少、昨年312万人で2位だった成田山新勝寺が314万人と1位になった。成田山新勝寺では外国人の参拝者の増加も寄与しているようだ。なお、明治神宮は元旦の竹下通りの車暴走事件の影響もあったのかもしれない。

(期待される12年のエコカー補助金・エコカー減税から7年目の乗用車の買い替え需要)

東京23区清掃一部事務組合の18年11月の1作業日当たりの粗大ゴミは6カ月ぶりに前年同月比で増加に転じた。09年から12年にかけての家電エコポイントを使った耐久消費財の購入が多かった。近年の内閣府の「消費動向調査」によると、カラーテレビは8~9年程度、電気洗濯機は10年程度、乗用車は9年程度で平均の買い替え時期を迎えるようだ。4K放送が開始されたことや消費税引上げ前の駆け込み需要などからも、19年はカラーテレビなどの買い替え需要が期待される。

また、東日本大震災のあとのエコカー補助金・エコカー減税により、乗用車販売台数が12年から14年にかけて多かった(図表7)。12年に購入した乗用車を、車検のある7年目で乗り換える人にとっては、19年に買い替え需要が出る可能性がある。

(共和党大統領の時、米国大統領選挙前年のNYダウは上昇傾向)

19年の年初は日米の株価下落、急激な円高ドル安など波乱の展開となったが、12月の雇用統計で非農業部門雇用者数が前月差31.2万人と大幅に増加し、米国景気が足もと堅調なことを示唆したことから1月4日の米国株はNYダウが746.94ドルの大幅高となった。週明け月曜日1月7日の日本株も、1月4日の日本テレビ系列「金曜ロードショー」で「風の谷のナウシカ」放送されたことで、いわゆる「ジブリ効果」もあり、前場で551円41銭高と大幅上昇した。

NYダウの上昇率は81年以降でみると大統領就任1年目は平均+14.4%、中間選挙の年の2年目は同+6.9%、大統領選挙の前年は同+15.2%、大統領選挙の年は同+2.5%となっていて、大統領選挙の前年は平均上昇率が最も高い。しかも下落はオバマ政権2期の15年のみで▲2.2%と小幅下落である。経済政策運営が比較的うまくいったのであろうか、共和党の大統領の時は5回とも上昇している(図表8)。現在マーケットが悲観的に予想しているほどには、米国の景気や株価動向は悪くならないかもしれない。