宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

3月のトピック「足踏み状態での戦後最長の景気拡張期間更新が続く。先行きの不安心理根強いが、桜の早期開花予報や改元など明るい材料も多い。」

2019年03月01日

(3月7日発表の、1月分景気動向指数の基調判断は「下方への局面変化」に下方修正に)

1月の「月例経済報告」で、景気の総括判断は「緩やかに回復している」に据え置かれた。この判断からみると、2012年12月から始まった景気拡張期間が1月で74カ月といざなみ景気の73カ月を抜き戦後最長になったようだ。2月の「月例経済報告」でも14カ月連続で「緩やかに回復している」との判断になった。但し、今回の景気回復は高度経済成長期のいざなぎ景気などと比較して経済成長や賃金の伸びが低く、実感なき景気回復という感が強い。通商問題の動向、中国経済の先行きなど、海外要因の下振れリスクがある。

12月分の景気動向指数による機械的な景気の基調判断は一致CIの前月差が下降になったため、「改善」に戻れず4カ月連続「足踏み」のままになってしまった(図表1)。1月分の景気動向指数では、一致CIの前月差が▲2台の大幅下降が予測される。1月分が予測通りなら、一致CI前月差は下降かつ一致CIの7カ月後方移動平均の前月差の2カ月の累計と3カ月の累計が振幅目安の▲0.77を超えるマイナス幅となり、基調判断は「下方への局面変化」に下方修正されることになろう。「下方への局面変化」は事後的に判定される景気の山が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す判断である。

なお、3月1日時点で先行系列採用の4系列が判明している。そのうち3系列が前月差プラス寄与に働くことになる。

(1月分鉱工業生産指数前月比▲3.7%と事前予測を上回る減少率に。前月比は3カ月連続減少)

景気動向指数一致CIが悪化する一番の要因は、鉱工業生産指数1月分速報値の前月比が▲3.7%の大幅減少になったことだ(図表2)。2015年を100とした季節調整値の水準は100.8と、2015年基準(2013年1月以降)の最高水準であった18年10月分の105.9から5.1ポイントも低い水準で、18年で最低だった1月分と同じ水準である。経済産業省の鉱工業生産指数の先行き試算値では、1月分の前月比は最頻値で▲2.3%。90%の確率に収まる範囲で▲3.3%~▲1.4%の見込みとなっていた。前月比▲3.7%は、下限値を下回る伸び率である。

1月分速報値の生産指数では、輸送機械工業(除・自動車工業)、無機・有機化学工業、石油・石炭製品工業の3業種だけが前月比増加で、自動車工業、電気・情報通信機械工業、そして生産用機械工業等の12業種が前月比減少と、幅広い業種がマイナスとなった。

先行きの鉱工業生産指数を、2月分は先行き試算値最頻値前月比(+0.4%)、3月分は前月比(▲1.6%:製造工業予測指数)で延長した1~3月期の前期比は▲4.4%の減少になる。また、先行きの鉱工業生産指数を、2月分・3月分を製造工業予測指数前月比(+5.0%、▲1.6%)で延長した場合は、1~3月期の前期比は▲1.4%の減少になる。18年に中国での携帯電話の普及が一服したため世界的に情報関連財が弱い。また、中国の景気減速の影響で中国向け工作機械の生産も頭打ちになっているなど弱含み要因が多い。スタートの1月が弱いので昨年に続き1~3月期の生産は前期比減少となりそうだ。

経済産業省の基調判断は、18年10月分では「生産は緩やかに持ち直している」という18年6月分以来の判断に上方修正された。11月分、12月分でも同じ判断継続となったが、19年1月分では「生産は足踏みをしている」に下方修正となった。

(「ESPフォーキャスト調査」2月調査では「中国景気の悪化」が下振れリスク第1位。中国PMIは持ち直す予測)

「ESPフォーキャスト調査」では17年6月以降偶数月に、「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える(あるいは景気を反転させる)可能性がある要因」を特別調査として実施している。フォーキャスターに11項目プラス自由回答枠の中から、一人あたり3つまで選択してもらっている。今まで自由回答も含め国内要因で2ケタになった項目はない。

直近の19年2月調査で第1位は「中国景気の悪化」で、31人である。「保護主義の高まり」は12月の30人から10人減少し20人と2位タイに後退した(図表3)。18年2月調査では4人だったが、トランプ大統領が鉄鋼・アルミ関税引き上げに言及した直後の調査である18年4月調査で20人に増加し、12月調査では30人になっていたが、米中貿易協議の進展への期待が高まったため減少したのであろう。

かつて景気腰折れ懸念材料のトップクラスで18年2月調査、4月調査、6月調査の3回で第1位だったのは「円高」である。18年6月調査の24人まで20人台であったが、18年10月調査では9人と初の1ケタ台に低下した。しかし、18年12月調査では14人と再び2ケタ台に上昇し、19年2月調査では20人と2位タイに戻った。

景気拡張期間が戦後最長になったことを示唆した政府の1月の「月例経済報告」では、海外経済の景気判断を「世界の景気は一部に弱さがみられるものの、全体として緩やかに回復している」と、35カ月ぶりに「一部に」の部分を入れる形で下方修正した。2月にはその部分を「アジア及びヨーロッパの中では」と具体的に記述した。そして2カ月とも「通商問題の動向、中国経済の先行き、政策に関する不確実性、金融資本市場の変動等によるリスクに留意する必要がある」と景気の下振れリスクを指摘した。なお、「ESPフォーキャスト調査」19年2月調査での中国のPMIの見通しは足もと1~3月期は厳しいものの、年央以降の持ち直しが予測されている(図表4)。

(「笑点」の視聴率と消費者態度指数悪化。足元の消費者マインドに陰りが)

最近の身近なデータは景気が底堅いことを示唆するものが多いが、一部に冴えないものも見られ、足元の景気のもたつき面を表しているかのようだ。

「笑点」がビデオリサーチ社の視聴率調査、「その他の娯楽番組」部門で週間第1位を取る回数が少ないと、四半期ごとに発表される実質個人消費が高まる傾向にある。逆に部門1位が多発していると個人消費が芳しくない可能性がある。日曜の夕方に買い物やレジャーなどの外出をせず家でテレビを見る人が相対的に増える現象は、消費の悪化を示すサインと言えるからだ。景気に陰りが見えてくると、「笑点」の明るい笑いで暗くなりがちな気持ちを吹き飛ばしたいという人々の心を掴む面もあろう。

18年10~12月期で1位を獲得した回数は9回になった。東日本大震災の直後の11年4~6月期の10回以来の多さだ。消費増税まであと1年を切ったことが将来不安をもたらしたのだろうか。なお、1~3月期は2月24日までの週時点で4回とやや多い感じだ。

この状況を裏付ける景気指標もある。2月の消費者態度指数(二人以上の世帯・季節調整値)は41.5になった。これで9月分43.4、10月分43.0、11月分42.9、12月分42.7、1月分41.9、2月分41.5と「笑点」の視聴率1位が増えてきた18年10月から連続して低下である。年齢別にみると、水準がもともと高かった29歳以下の落ち込みが一番だが、2月分で反転した。比較的指数が低水準の高齢者の落ち込みが目につく。消費税引き上げまで1年を切ってきた状況下で、高齢者の消費者マインドが悪化している。クレジットカードを使ったポイント還元などの対策が打ち出されても、年金以外の収入がなくクレジットカードが作れない高齢者にとっては負担増の不安が大きいのではないか。10月の消費税増税に対してはしっかりした対策が打たれるので、全体としての景気が落ち込むことはないと思われるが、幅広い目配せが欠かせない局面だろう。

もやしの購入金額は、景気が悪化した時や、生鮮野菜が天候要因などで高い時に多くなる。18年は6年ぶりの高水準になった。18年通してみると、消費環境は主婦が節約に走りたくなる環境だったのだろう。但し直近の数字である18年12月は2カ月連続で低下、78円と17年8月の76円以来の低水準になった(図表5)。幾分、生鮮野菜購入の環境に明るさが出てきたと考えられよう。

(JRA中央競馬の売上高、さっぽろ雪まつり観客数、桜の早期開花予報など、身近なデータでは明るいものも多い)

JRA中央競馬の売上高(売得金)の年初からの累計前年比は、2月24日までで3.0%増と堅調である。8年連続の増加に向けて好調なスタートを切っている。

警察庁によると、18年の自殺者数は2万835人と、2万1千人を割り込んだ。9年連続減少で20世紀の終わりの金融危機時からしばらく3万人台が当たり前だった時代とは隔世の感がある。経済生活関連の自殺が景気回復、雇用環境の改善とともに減少していることが大きいだろう。月ごとにみると、18年10月から12月まで3カ月連続して前年同月比で増加となっていることは気懸りで素直に喜べない面もあったが、19年1月は0.9%減と減少に戻った。

2月上旬に開催されたさっぽろ雪まつりでは、大通り会場と、つどーむ会場を合計した観客数は273.7万人と、過去最高を更新した(図表6)。

ウェザーニュースが2月26日に更新した今年の東京の(靖国神社)桜の開花予想は3月21日になった。18年の3月17日より4日遅いが、平年の3月26日より5日早い予想だ。日本気象協会は2月21日に更新した予想で3月20日としている。1953年から実施されている気象庁の生物観測調査で、東京の桜の開花が3月21日以前と早い時は13回あり、景気は拡張局面である。早く春が来ると春物も売れるし、お花見で人々の気分が高揚しよう。

(時代の変わり目が事前に分かっていた2000年当時は、ミレニアム婚、ミレニアムベビーなどが話題)

今年100歳の人でも、改元という時代の変わり目を迎える経験は、1926年の「大正」から「昭和」、1989年の「昭和」から「平成」、そして今年2019年の「平成」から「新元号」の3回にすぎない。改元はめったにない一大イベントである。今回は、天皇の崩御による代替わりではないので自粛ムードがみられないという特徴がある。19年5月の新天皇陛下即位と改元は、新しい時代の到来ということで人々の気分を一新し、景気にとってプラス材料になると思われる。

現在のGDP統計は1980年まで遡れる。81年から18年までの1~3月期の前期比を高い順に並べると、第1位は平成に改元された89年、第2位はミレニアムの2000年である。どちらも個人消費、設備投資がしっかりした伸び率になっている。時代の変わり目の「記念消費」などの効果は大きいようだ。現在も「平成最後の伊勢神宮参拝」をはじめ、「平成最後の・・・」と銘打った旅行などのサービス、商品などが人気である。4月1日に新元号が発表されると、5月1日からの「○○最初の・・・」と銘打ったサービス、商品も出よう。時代の変わり目の「記念消費」の効果は大きいとみられる。また、新元号や2000年問題に対応するための設備投資も必要になったのだろう。

時代の変わり目が事前に分かっていた2000年当時は、ミレニアム婚、ミレニアムベビーなども話題になった。婚姻件数の前年比の推移をみると、99年▲2.9%、2000年+4.7%、01年+0.2%、02年▲5.3%、03年▲2.3%である。+4.7%は1961年以降2018年の58年間で、71年+6.0%、93年+5.1%に次ぐ3番目に高い前年比である。出生数の前年比の推移をみると、99年▲2.1%、2000年+1.1%、01年▲1.7%、02年▲1.4%、03年▲2.6%である。1999年から2018年の最近の20年間でプラスの伸び率になったのは4分の1の5年だけ、他は2006年+2.8%、08年+0.1%、10年+0.1%、15年+0.2%である。ミレニアム婚、ミレニアムベビーの影響が大きかったことがわかる。

昭和から平成への代替わりと異なり、今回の改元は事前にスケジュールがわかっている。2000年当時と同じく、改元に合わせた新元号婚や新元号ベビーの誕生が期待できよう。またそれに合わせた個人消費の増加も予想されよう。

(「景気ウォッチャー調査」先行き判断DIから、「改元」のプラス効果が読み取れる)

「景気ウォッチャー調査」では、先行き判断で「改元」にふれたウォッチャーが10月の2人に対し、11月6人、12月17人、1月は30人と増えている。改元関連DIをつくると10月は景況判断の分岐点と同じ50.0と中立だったが、11月70.8、12月55.9、1月は63.3で50を上回っている。直近の1月のコメントをひとつ紹介すると、「改元前後に当たり、平成最後、新元号最初の記念としてのモノコト消費が活性化すると予想している」[南関東(東京都)の百貨店(販売促進担当)]と、「改元」の景況に与えるプラス効果を期待する向きが増えたことがわかる。

12月からは「即位」に関するコメントも散見されるようになった。先行き判断に関する「改元or即位」のコメント数は12月調査で23人、1月調査で38人になった。関連DIでは12月調査54.3、1月調査61.8と、どちらも景気判断の分岐点の50を上回っている(図表7)。