宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

4月のトピック「景気動向指数や短観など足元景気の弱さ示すが、底堅い面も。東京の桜の開花日、大相撲春場所懸賞、遺失届得現金・拾得届現金、新元号「令和」など最近の身近なデータには明るい話題が多い」

2019年04月01日

(景気動向指数の基調判断が「下方への局面変化」になっただけで「景気後退局面入り」の判断は時期尚早か)

政府は「月例経済報告」での景気の総括判断を「景気は、このところ輸出や生産の一部に弱さもみられるが、緩やかに回復している」と2016年3月以来3年ぶりに引き下げた。しかし、個人消費などの内需は堅調であることから、「緩やかに回復している」としてきた判断はそのまま維持されている。

これに先駆け3月7日に発表された1月分景気動向指数(図表1)の機械的な基調判断が、事後的に判断される景気の山が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に12月分までの「足踏み」から下方修正された。そのため、民間エコノミストの一部には既に景気後退局面だとみる向きも出てきた。政府の景気判断は甘いのではという見方だが、「景気が後退し始めた」とみるのは時期尚早だろう。

(中国景気減速などで製造業の業況判断DI大幅悪化。但し、雇用判断はしっかり、新年度設備投資計画まずまず)

4月1日に発表された3月調査の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIが+12と12月調査の+19から2期ぶりに悪化となった。悪化幅は12年12月調査以来、25期ぶりの大きさである。中国景気の減速などで足元の輸出や生産が弱含んでいることが影響したとみられる。但し、13年6月調査以降24期連続して「良い」超のプラスであり、景況感の底堅さが継続していることを示唆する数字であるとも言えよう。また、非製造業、とりわけ中小企業・非製造業の底堅さも感じられる内容だった。雇用判断は引き続きしっかりしており、19年度の設備投資計画は3月調査としてはまずまずの結果となった。次回6月調査で、今回の3月調査の先行き見通しから景況感などが上振れることが出来るかどうか、先行きの景気を占う上で注目される状況だ。

(「下方への局面変化」になった理由。昨夏の自然災害の影響と1月分の生産関連統計などのフレによる落ち込み)

景気動向指数の基調判断が下方修正されたのは、一致CIの前月差が下降となり、一致CIの7カ月後方移動平均の前月差の2カ月の累計と、3カ月の累計が振幅目安の▲0.77を超えるマイナスになったためだ。「下方への」という言葉もネガティブに響く。しかしこれには考慮すべき点がある。7カ月後方移動平均には昨夏の自然災害の影響が反映されている。景気ウォッチャー調査で自然災害に関する各種関連DIを作ってみると、落ち込みは一時的なものにとどまり、現在は回復していることがわかる。また、一致CIの1月分が大きく低下したのは1月分の生産関連などのデータが大きく落ちたためだ。12月分までの数字はそれほど悪くないので、1月に突然景気が悪化したとういよりは、統計のフレの可能性の方が大きいとみられる。

(4カ月ぶり増加に転じた2月分の鉱工業生産指数、景気動向指数の判断は「悪化」への下方修正回避)

4月5日に発表される2月分の景気動向指数の一致CIの3カ月後方移動平均が、前月差マイナスとなりそうだ。このため、4カ月連続のマイナスで「下方への局面変化」からさらに下方修正され、景気後退を示唆する「悪化」になる条件のひとつである3カ月後方移動平均の前月差が3カ月以降連続して下降になるという条件は満たす。但し、一致CIの前月差がプラスになるので、「下方への局面変化」の判断が維持されよう。

2月分の景気動向指数・一致CIは前月差が10月分以来4カ月ぶりの上昇に転じると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数の3系列がしっかりと前月差プラス寄与になっているからだ。2月分の鉱工業生産指数・速報値の前月比は+1.4%である(図表2)。

(3月分をクリアすれば景気動向指数の判断は「悪化」を回避。早ければ6月分あたりで「改善」に戻れるか)

3月分の景気動向指数でも一致CIの3カ月後方移動平均は前月差マイナスで、5カ月連続マイナスとなる可能性が大きい。1月分の生産等の落ち込みが大きかったからである。そこで3月分の一致CIの前月差がマイナスにならないことが「悪化」にならないための条件である。3月分の製造工業予測指数は前月比+1.3%と増加見通しである。

4月分になると1月分のデータが3カ月後方移動平均からはずれるので、3カ月後方移動平均の前月差はプラスに転じる可能性が大きい。さらに3カ月後方移動平均が5月分・6月分と連続してプラスになり、6月分の一致CIの前月差が0.1でもプラスになれば、景気動向指数の基調判断は「改善」に戻ることが出きる。2014年には「下方への局面変化」が4カ月続いいたあと「改善」に戻ったが、今回は早ければ「下方への局面変化」が6カ月続いたあとで8月上旬発表の6月分の公表時に「改善」に転じる可能性があるとみる。

(10~12月期に東日本大震災の直後以来の多さだった「笑点」1位を獲得した週は3月(24日まで)でゼロに)

3月分の経済指標はまだほとんど未公表だが、身近なデータには明るいものが多い。

「笑点」がビデオリサーチ社の視聴率調査、「その他の娯楽番組」部門で週間第1位を取る回数が少ないと、四半期ごとに発表される実質個人消費が高まる傾向にある。逆に部門1位が多発していると個人消費が芳しくない可能性がある。日曜の夕方に買い物やレジャーなどの外出をせず家でテレビを見る人が相対的に増える現象は、消費の悪化を示すサインと言えるからだ。景気に陰りが見えてくると、「笑点」の明るい笑いで暗くなりがちな気持ちを吹き飛ばしたいという人々の心を掴む面もあろう。

18年10~12月期で1位を獲得した回数は9回になった。東日本大震災の直後の11年4~6月期の10回以来の多さだ。消費増税まであと1年を切ったことが将来不安をもたらしたのだろうか。なお、1~3月期は2月24日までの週時点で4回とやや多い感じだったが、その後3月分では3月24日の週まで1位をつけることはなかった。3月17日までの週ではビデオリサーチのHPでランク外まで落ちた。

(東京(靖国神社)の桜の開花は3月21日、過去は全て景気後退局面にはなっていない)

今年の東京(靖国神社)の桜の開花は3月21日になった(図表3)。18年の3月17日より4日遅いが、平年の3月26日より5日早かった。1953年から実施されている気象庁の生物観測調査で、東京の桜の開花が3月21日以前と早い時は13回あり、景気は後退局面にはなったことがない。早く春が来ると春物も売れるし、お花見で人々の気分が高揚しよう。東京の満開は3月27日で開花から6日目と早かったがその直後気温が低くなったので、満開状態が長持ちをしたかたちとなった。開花から満開までの期間が長いと、景気の持続性が高まる傾向にあるが、今年も実質的に桜が長持ちをしたことで、人々の気持ちを明るくしたと思われる。(東京(靖国神社)の桜の開花は3月21日、過去は全て景気後退局面にはなっていない)

(大相撲の春場所の懸賞本数は1,938本、地方場所で過去最高更新。前年同場所比は3場所ぶりのプラス)

JRA中央競馬の売上高(売得金)の年初からの累計前年比は、3月24日までで3.1%増と堅調である(図表4)。8年連続の増加に向けて好調なスタートを切っている。

関脇・貴景勝が大関昇進を決めた大相撲の春場所の懸賞本数は1,938本と、これまで地方場所最高だった前年の春場所を6.2%上回った(図表5)。前年同場所比は3場所ぶりのプラスである。懸賞は広告費の増加、企業収益の底堅さを示唆するデータと言えよう。

(警視庁調べ遺失届得現金に対する拾得届現金の比率は13年に40%台に乗りその後上昇、18年は45.7%)

限界的雇用関連データもしっかりしている。2018年は20,835人と2万1千人を割り9年連続の減少になった自殺者数だが、2019年に入っても1月は前年同月比▲0.1%、2月は同▲1.4%と2カ月連続減少している。

金融機関の店舗強盗は18年が17件と17年の26件から9件減少し、19年は1月20日まで0件である。

警視庁によると遺失届現金は18年84.1億円となった。5年連続の増加である。紛失する確率が概ね一緒だと考えると、景気回復に合わせ持ち歩く現金が増えたことを示唆する。また拾得届現金は38.4億円と、9年連続の増加である(図表6)。遺失届得現金に対する拾得届現金の比率は2013年に41.4%と40%台に乗ったあと毎年上昇し、18年は45.7%に高まった。

(「平成」の次の元号は「令和」。「平成最後の・・・」、「令和最初の・・・」と銘打ったサービス、商品も)

今年100歳の人でも、改元という時代の変わり目を迎える経験は、1926年の「大正」から「昭和」、1989年の「昭和」から「平成」、そして今回2019年の「平成」から「令和」の3回にすぎない。めったにない一大イベントである。今回は、天皇の崩御による代替わりではないので自粛ムードがない。19年5月の新天皇陛下即位と改元は、新しい時代の到来で人々の気分を一新し、景気にとってもプラス材料になると思われる。

現在のGDP統計は1980年まで遡れる。81年から18年まで38年分、1~3月期の前期比を高い順に並べると、第1位は平成に改元された89年、第2位はミレニアムの2000年である。どちらも個人消費、設備投資がしっかりした伸び率になっている。時代の変わり目の「記念消費」などの効果は大きいようだ。また、昭和から平成への切り替えや、2000年問題に対応するための設備投資も必要になったのだろう。

現在も「平成最後の伊勢神宮参拝」をはじめ、「平成最後の・・・」と銘打った旅行などのサービス、商品などが人気である。4月1日の新元号が発表に合わせた、「令和」の文字が入った飴などの商品も即日販売された。また、今回の改元は事前に時期がわかっていたため、ゴールデンボンバーのように4月1日発表の新元号に合わせ、「新元号ソング」をどこよりも早く制作・発表・発売すべく制作の様子をレコーディングスタジオより生配信するアーティストもみられた。5月1日からの「令和最初の・・・」と銘打ったサービス、商品も出よう。時代の変わり目の「コト消費」の効果は大きいとみられる。

 (2000年のミレニアムと同じく、改元に合わせた令和婚や令和ベビーの誕生を期待。新しい希望に満ちた時代に)

時代の変わり目が事前に分かっていた。2000年には、ミレニアム婚、ミレニアムベビーなども話題になった。婚姻件数の前年比の推移をみると、99年▲2.9%、2000年+4.7%、01年+0.2%、02年▲5.3%、03年▲2.3%である。+4.7%は1961年以降2018年の58年間で、71年+6.0%、93年+5.1%に次ぐ3番目に高い前年比増加率である。出生数の前年比の推移をみると、99年▲2.1%、2000年+1.1%、01年▲1.7%、02年▲1.4%、03年▲2.6%である。1999年から2018年の最近の20年間でプラスの伸び率になったのは4分の1の5年だけ、他は2006年+2.8%、08年+0.1%、10年+0.1%、15年+0.2%である。ミレニアム婚、ミレニアムベビーの影響が大きかったことがわかる。

昭和から平成への代替わりと異なり、今回の改元は事前にスケジュールがわかっている。2000年当時と同じく、改元に合わせた令和婚や令和ベビーの誕生が期待できよう。またそれに合わせた個人消費の増加も予想されよう。

「景気ウォッチャー調査」では、先行き判断で「改元」にふれたウォッチャーが10月の2人に対し、11月6人、12月17人、1月30人、2月は60人と増えている。改元関連DIを作ると10月は景況判断の分岐点と同じ50.0と中立だったが、11月70.8、12月55.9、1月63.3、2月は63.8で50を上回っている(図表7)。