宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

5月のトピック「中国景気悪化のリスクから製造業の景況感の行方が微妙な段階、『令和』改元などは景気にプラス」

2019年05月07日

(3月分鉱工業生産指数は事前の予測比で下振れ)

4月26日に公表された平成最後の鉱工業生産指数である3月分速報値は芳しくない内容になってしまった。前月比は▲0.9%とマイナスに転じた(図表1)。3月末に公表された製造工業生産予測指数の前月比+1.3%、経済産業省の先行き試算値の同+0.4%とは逆符号となり、先行き試算値の90%の確率に収まる範囲の下限値▲0.6%を下回った。

これで1~3月期は前期比▲2.6%と2四半期ぶりの減少になった。中国景気の減速、情報関連財の在庫調整等の影響で生産は弱い動きとなっている。

(主要経済指標に弱い数字が相次ぎ、5月は景気後退説が強まる月に)

5月13日に発表される3月分景気動向指数の一致CIが前月差マイナスに、3カ月後方移動平均が5カ月連続マイナスになると予測される。これにより、2月分までの「下方への局面変化」から3月分では景気後退の可能性が高いことを意味する「悪化」に下方修正される条件を満たしてしまう。

1週間後の5月20日に1~3月期の実質GDPが発表されるが、4月27日の産経新聞によると16社中12社が前期比年率マイナス成長になると予測し、マイナス成長見込みが多数派となっている。主要経済指標に弱い数字が相次ぐことから、5月は景気後退説を唱える向きが増える月になりそうだ。

(景気は微妙な局面。但し、後退かどうかの正式な判定は来年以降に景気動向指数研究会が判断)

しかし、景気後退の判定は1年くらい後にデータが出揃ったところで、景気動向指数研究会が判断する。14年の消費税率引き上げの後も景気後退説が強まったが、最終的には景気後退と認定されなかった。景気後退と判断されるには、「長さ」「深さ」「波及度」の3つの要素を満たすことが必要だ。

19年3月分の有効求人倍率が1.63倍と74年1月分の1.64倍以来の高水準にある(図表2)ことに代表されるように、雇用・所得関連のデータが依然しっかりしており、内需の底堅さが感じられる経済指標も多い中で条件を満たすかどうか、予断をもつことなく見守りたい局面だ。

(中国景気に改善の兆しだが、トランプ大統領のツィッター投稿のように関税引上げ実施となれば世界景気に打撃)

製造業中心に景気が弱含みとなっている主因である中国の景気に足もと変化がみられる。ESPフォーキャスト調査が17年6月から偶数月に実施している景気のリスク要因に関する特別調査では、直近の19年4月調査で第1位は3回連続して「中国景気の悪化」となったが、回答数は2月調査から5減って26となった(図表3)。ESPフォーキャスト調査19年2月調査での中国製造業PMI見通しが年央以降回復する予測であることと併せて考えると、政策効果による年央以降の中国景気の持ち直しが期待されている局面だ。

国家統計局ベースの3月分の中国製造業PMIは4カ月ぶりに50超えの50.5となり、4月分は鈍化したものの50.1と2カ月連続50%超になっている。また中国向け工作機械受注の前年比は依然2ケタのマイナスだが、3月は▲44.0%と18年11月▲50.4%を底に改善傾向にある。

しかし、こうした動きに水を差す発言が出てきた。米中貿易戦争が一段と激化すれば世界景気にとって大きなマイナスになるからだ。5月5日にトランプ大統領がツィッター上で、中国からの2,000億ドル分の輸入品に上乗せしている関税について「10日の金曜日に10%の関税は25%に引き上げられる」と投稿し、制裁を強化する方針に言及した。米中貿易交渉は決着に向けて最終局面を迎えていると見られるが、トランプ大統領の発言は中国側にさらなる歩み寄りを求めるねらいがあるとみられ、交渉の行方と、5月10日に実際に関税が引き上げられるかが注目される。

(消費税率引き上げが1年後になった18年10月分以降消費者態度指数は19年3月分まで6カ月連続低下)

ESPフォーキャスト調査19年4月調査の景気のリスクで第4位になったのは「消費税率引き上げ」だった。

これまではその他回答の中で若干名が回答するにすぎなかったが、12番目の独立項目として解答欄に加えた途端に、13人と2ケタ回答になった。

消費税引き上げが1年後になった18年10月分以降、消費動向調査の消費者態度指数は19年3月分まで6カ月連続低下している。下落幅は29歳以下と70歳以上で大きい。但し、消費者マインドアンケート調査で暮らし向き判断の景気ウォッチャー説のDIを作成すると、4月調査で36.0と3月の34.0から反転している。5月9日発表の4月分の消費者態度指数が下げ止まるか注目される。

なお、自民党の萩生田光一幹事長代行が4月18日にインターネット番組で消費税率引き上げ延期に関して発言したこともあり、7月1日発表の6月調査の日銀短観の内容が注目されている。関連データのひとつ、ロイター短観4月調査の業況判断DIは、3月調査と比べ非製造業は2ポイント改善したものの、製造業は2ポイント悪化した。一方、QUICK短観の4月調査は3月調査と比べ製造業は5ポイント改善、非製造業も2ポイント改善している。両関連調査はまちまちの動きになっていて、6月調査の日銀短観が悪化するかどうかはまだわからない。

(最近の身近なデータは、JRA中央競馬の売得金、東京の桜など明るめのものが多い)

ビデオリサーチの週間視聴率調査その他娯楽番組で18年度後半に14回第1位となった「笑点」は、19年4月は(21日の週までで)第1位になった週はない。日曜日の午後5時半に外出せず自宅でテレビをみている人は相対的に少なく、個人消費にとっての環境は悪化していない可能性がある。

JRA中央競馬の売得金5月5日現在の年初からの累計前年比は+4.9%の増加で、8年連続プラスに向け順調に推移している(図表4)。令和に入って最初のG1レースであるNHKマイルカップの売得金は前年比+6.9%だった(図表5)。

警察庁が発表する月次の自殺者数は2月・3月と2カ月連続減少で、1~3月分では前年比▲4.3%と減少している。2018年の自殺者が20,840人で9年連続減少し2万1千人割れとなったが、このペースでいけば2万人割れとなる。雇用の環境の良さが背景にあろう。

東京の桜の開花は3月21日と1953年以降9番目(タイ)に早い記録となった。3月21日以前の開花の時は景気後退局面になったことはない。また開花日までの期間が11日以上開くと、概ね1年超にわたって景気拡張局面が続いている。今年は満開日こそ3月27日と早かったが、その後寒い日も多く4月7日(同)頃まで見頃であった。実質的にお花見の期間が長く、息の長い景気拡張期間になることを示唆しているようだ。

(「改元」は景気ウォッチャー調査でみて景気にプラス、令和婚、令和ベビーの動向も注目)

景気ウォッチャー調査で改元関連コメントDIを作ると3月調査は現状判断が55.6(9人)、先行き判断が59.3(97人)となった。景気判断の分岐点の50を上回っており、平成から令和への改元は景気判断にとってプラスとなっていることがわかる(図表6)。また、10連休関連コメントDIを作ると3月調査は現状判断が52.3(11人)、先行き判断が55.5(119人)で、こちらも景気判断の分岐点の50を上回った(図表7)。

改元をきっかけとした商戦が熱を帯びている。令和にあやかった商品も相次いで発売された。時代の節目は記念消費が増えやすい。今回は前回の改元と違って自粛ムードがなく、消費のプラス効果が見込まれる。

令和元年に合わせた結婚式や出産も増えるだろう。2000年には「ミレニアム婚」や「ミレニアムベビー」が話題となった。婚姻件数の前年比の推移をみると、99年▲2.9%、2000年+4.7%、01年+0.2%、02年▲5.3%、03年▲2.3%である。2000年の+4.7%の増加率は平成では現天皇・皇后両陛下のご成婚があった93年の+5.1%に次ぐ2番目に高い前年比である。令和初日の5月1日には、元AKB48グループ総監督でタレント・歌手の高橋みなみさんがIT関連企業に勤める15歳上の一般男性と結婚した。

出生数の前年比をみると、99年▲2.1%、2000年+1.1%、01年▲1.7%、02年▲1.4%、03年▲2.6%である。1999年から2018年の最近の20年間でプラスの伸び率になったのは4分の1の5年だけで、他は2006年+2.8%、08年+0.1%、10年+0.1%、15年+0.2%である。ミレニアム婚、ミレニアムベビーの影響が大きかったことがわかる。令和婚、令和ベビーの動向も注目されるところだ。