宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

12月のトピック「微妙な景気局面。外需の弱さを内需でカバーできるか。嵐の紅白歌合戦出場と景気局面に意外な関係が存在。「パプリカ」のレコ大史上最年少受賞あるかどうかに注目。」

2019年12月03日

(景気は後退局面の瀬戸際という微妙な局面。鉱工業生産指数・10月分速報値前月比は大幅減少)

鉱工業生産指数・10月分速報値・前月比は▲4.2%と2カ月ぶりの減少になった。15年を100とした季節調整値の水準は98.9と、16年5月分(98.5)以来の低水準になった(図表1)。10月分の大幅減少は、米中貿易戦争などで世界経済が鈍化し輸出が弱含んでいることに加え、消費税増税、台風19号等の被災、9月にコンベア、運搬用クレーン、海外向けの化学機械など一部品目で大型案件があった反動減、昨年10月分が9月の地震、台風の影響を受け挽回生産をしたことによる季節調整値への影響など、様々な要因が作用したようだ。経済産業省は基調判断を「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」から「総じてみれば、生産は弱含み」に下方修正した。

10月分の一致CIの前月差はかなり大幅な下降になると予測される。一致CIを使った景気の基調判断をみると、8月分で「下げ止まり」から景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に下方修正された。9月分に続き10月分でも「悪化」の判断が確実視される。現在、外需・生産関連は弱くても、内需関連の底堅さで景気後退は回避できるとみているが、実際回避できるかどうかは微妙である。季節調整替えも行われる鉱工業生産指数などの年間補正(来年4月頃か)などの結果を待たないとはっきりしたことは言えないような状況だろう。鉱工業生産指数の先行きを、製造工業予測指数でみると11月分は前月比▲1.5%の減少、12月分は同+1.1%の増加の見込みである。鉱工業生産指数が12月分から持ち直し基調に戻れるかどうか注目される。

政府は国・地方の歳出を8兆円程度、財政投融資4兆円程度、外為特会から捻出する約1兆円を合わせ13兆円規模となる新たな経済対策を打ち出すと日本経済新聞が伝えている。経済対策の柱は(1)災害からの復旧・復興、(2)経済の下振れリスクへの支援、(3)未来への投資と東京五輪後の経済活力の維持だ。先行きの景気の下支え要因になろう。

(消費者態度指数など、明るい材料も散見されるようになってきた)

中国・国家統計局・物流購買連合会・製造業PMIは11月分で50.2となり、4月分の50.1以来の50超えとなった。米中貿易戦争緩和の動きなどが影響したものと思われる。懸念材料の中国景気の悪化が一時的かもしれないものの、収まってきたことを示唆していよう。

景気ウォッチャー調査で「消費税・増税」関連DIをつくってみると、現状判断の回答者は19年1月調査の40人から増加し9月調査では548人、10月調査で580人になった。「消費税・増税」関連9月調査現状判断DIは50.5と、景気判断の分岐点の50を上回っていた(図表2)。「良くなった」が43人いたが、ほとんどが「駆け込み」について触れていた。しかし、10月調査で30.1まで大きく低下した。先行き判断DIでの回答者は1月調査では196人だったのに対し、9月調査では796人に大きく増えた。関連先行き判断DIは29.4の低水準になった。10月調査では455人に回答数が減少したが、関連DIは41.8まで戻した。消費税増税実施直後には一時的にせよ、消費支出が落ち込むが、そこで底打ちすると判断する人が多いことを示唆している。

消費税増税1年前となった18年10月から1年間にわたって高齢者を中心に低下を続けていた内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(二人以上世帯、季節調整値)は、19年10月分が前月より0.6ポイント高い36.2になり1年ぶりに下降が止まった。そして11月分では、前月より2.5ポイント高い38.7になったことは明るいデータだ。実際に消費税率が引き上げられると、改善方向に向くことが多かったが、今回もそうなった。下落を続けてきた高齢者のマインドが底打ちした(図表3)。

JCB消費NOW前年同月比は9月分+9.831%の後、10月分▲3.677%に落ち込んだが、11月前半分で+0.645%と若干だがプラスの伸び率に戻り、落ち込みが一時的だったことを裏付けしている(図表4)。

(景気と嵐の関係をみると、嵐が出場している10回の年末は全て景気拡張局面という不思議な関係)

平成最後となった昨年の「NHK紅白歌合戦」には50回出場を区切りとし5年前に紅白を卒業した北島三郎が特別枠で復帰し「まつり」を歌った。北島三郎が数あるヒット曲の中で、人々の気持ちを盛り上げる「まつり」を歌った紅白は全て景気の拡張局面に当たる。なお、バブルが崩壊した92年や、東日本大震災が発生した11年などでは、しんみりした曲調の「帰ろかな」を歌っている。このように国民の多くが注目する紅白歌合戦と景気の間には密接な関係がある。

人気グループの嵐は20年末までで活動休止となるが、最近では11月9日の天皇陛下奉祝曲での歌唱をはじめ、ラグビーワールドカップ日本テレビのテーマソング「BRAVE」を歌っている(70万枚を超える自身4番目の売上げ枚数を記録)。また11月3日にSNSをジャニーズで初めて全面解禁し、翌日にはインスタグラムのフォロワー数が200万人を突破したと話題になった。また、嵐が12月21日に開催される新しい国立競技場のオープニングイベントにDREAMS COME TRUEとともに出演することが11月11日に明らかになった。来年5月15、16日には同所完成後初の単独アーティスト公演を行うことも発表されている。こうした大きなイベントに嵐が出ることは、国民の関心を呼ぼう。

年末の紅白歌合戦では嵐のメンバーの櫻井翔が2年連続で白組の司会をし、嵐としても11回目の出場をする。嵐は昨年まで紅白出場10回目中8回、グループ全体で、またはメンバーの誰かがソロで白組の司会を務めている。嵐が初出場した2009年以降、景気は概ね拡張局面で唯一の後退局面であった12年も3月の景気の山のあと後退局面になったものの11月には景気の谷をつけたので、12月31日は拡張局面になっている(図表5)。紅白ではメドレーで歌ってきているが、Happinessなど明るめで元気が出る曲が多い。万一、今年後半に短い景気後退局面が成立したとしても10月か11月が景気の谷なら12月31日は拡張局面だ。嵐が活動休止する前の最後の仕事は20年の紅白歌合戦の可能性が大きそうであり、嵐の動きから見ると来年末までは景気の拡張局面継続の可能性があると言えそうだ。

(ラグビーW杯、野球プレミア12での日本代表の活躍は日経平均の押上げ材料。東京五輪2020の金メダルに期待)

史上初の決勝トーナメント進出を果たしたラグビーワールドカップでの日本代表の活躍は、日本に感動と勇気を与えてくれる明るい話題になった。ラグビーは野球やサッカーに比べてマイナー競技の印象が強かったが、開幕後は俄然盛り上がりを見せた。10月13日のスコットランド戦で勝利し決勝トーナメント進出を決めた週明け10月15日の日経平均株価は前日比408円34銭の大幅高となった。日経平均株価は大会が始まった9月20日終値で22,079円09銭だったが、大会終了後初の取引日11月5日終値が23,251円99銭で1,172円90銭上昇した。

野球の第2回プレミア12も日本代表の活躍で盛り上がった。11月17日の韓国との決勝戦に勝利し初優勝したが、日経平均株価は直後の営業日の11月18日は前日比113円44銭と上昇した。

日本が金メダルを10個以上獲得した大会では、メキシコ大会(68年)以降では大会期間中の日経平均株価は全て上昇している(図表6)。来年は東京オリンピックが行われる。64年は景気面で大規模なインフラ投資の反動が出て景気の山が10月になり、景気の先行指標である株価も大会期間中で下落となったが、今回はそうした懸念は小さいだろう。東京五輪2020では、ホームグラウンドでの日本選手の活躍に期待したいところだ。

(そのときどきの景気局面や経済状況を映す「今年の漢字」。19年は2年連続の「災」か、「和」か、それとも)

年末というと「今年の漢字」が注目される。過去の漢字を眺めていくと「今年の漢字」がそのときどきの景気局面や経済状況を映しているのがわかる。 「今年の漢字」は95年から日本漢字能力検定協会がその年をイメージする漢字1字を全国から公募し、毎年12月12日の漢字の日(いい字一字の語呂合わせ)に京都・清水寺で発表されている(図表7、図表8)。

18年の「今年の漢字」は「災」だった。北海道胆振東部地震、平成30年7月豪雨、台風21号、24号の直撃など、自然災害が多発した。ちなみに過去をさかのぼると1997年は「倒」。山一証券破綻など金融不況の年だった。2000年「金」はシドニー五輪での金メダル。01年の「戦」は米同時テロ。03年の「虎」は阪神タイガース優勝。04年「災」は新潟中越地震、台風史上最多の10個上陸など「災害」の印象の強い1年だった。リーマンショックが起こった08年は「変」だった。11年の「絆」は東日本大震災、12年、16年も00年と同じ「金」で、五輪の「金」メダルが注目されたようだ。00年以降04年と08年のようにショッキングな出来事がないと、夏季五輪の年は「金」になっている。20年も「金」の可能性が高そうだ。

今年は台風19号などの自然災害が多かったため昨年に続き「災」が選ばれるのか、それとも盛り上がったラグビーワールドカップのOne Teamや新元号令和にちなんで「和」が選ばれるか、それとも別の漢字か。どんな漢字が選ばれるかで人々のマインドを知ることができるので注目される。

(子どもの歌のミリオンセラーは全て景気拡張局面での現象。Foorin『パプリカ』がレコード大賞をとれるかに注目)

子どもの歌の大ヒットも景気と関係がある。子どもの歌はジワジワ人気が出るもので、発売日に予約して購入するアイドルグループの曲と違う。ここでは初動売上枚数ではなく、総売上枚数を見る。オリコンができた60年代後半から数えて、100万枚を売った子どもの歌は5曲しかない。「黒ネコのタンゴ」(約223万枚、1969年)、「およげ!たいやきくん」(約453万枚、75年)、「おどるポンポコリン」(約164万枚、90年)、「だんご3兄弟」(約291万枚、99年)、「慎吾ママのおはロック」(約111万枚、2000年)の5作品だ(図表9)。

「黒ネコのタンゴ」は高度成長の最後。「たいやきくん」は、第1次石油危機からの回復局面。「おどるポンポコリン」はバブル最盛期だ。この曲、「何でもかんでもみんな踊りを踊っているよ」と踊らされた時期と合致する。「だんご3兄弟」は99年3月発売なので同年1月の景気の谷から景気拡張局面に入った時期で、「慎吾ママのおはロック」は2000年8月、拡張局面の終盤だった。

子供の歌のヒットからは、親の財布のゆるみ具合がわかる。子供はお金を持っていない。「のんびり」とした気分で子どもが欲しがる作品を親が買ってあげられる余裕があると言える。逆に07年12月発売の「崖の上のポニョ」は映画はヒットしたが、CDは約38万枚しか売れなかった。景気局面を見ると2008年2月の第14循環の景気の山の直前の発売だった。CDの発売時期と景気がおかしくなっていく時期が重なってしまった。親は財布の紐を締めたのだろう。

今年は久しぶりの子どもの歌のヒットの可能性があるだろう。第61回日本レコード大賞候補となる優秀作品賞10作品の中に、シンガー・ソングライター、米津玄師がプロデュースした「パプリカ」が入っている。「パプリカ」を歌う小中学生ユニット、Foorinが万一受賞となれば、史上最年少の受賞者だ。NHK紅白歌合戦への初出場も決まったFoorinは、5人組の小中学生ユニットで、幼稚園や小学校では”パプリカ・ダンス“がブームである。パプリカは今年11月18日付け時点でオリコン累積売上が11.7万枚、デジタルシングルの累積売上は46.5万枚であるが、万一、レコード大賞となればさらなる売上増の可能性があろう。