ホームマーケット身近なデータで見た経済動向2月のトピック「「オリンピックの崖」回避を示唆するESPフォーキャスト20年10-12月期総合景気判断DI上方修正。懸念される新型コロナウイルスの感染拡大。しかしSixTONES vs Snow ManのCD初動売上ミリオン達成などの身近なデータは拡張局面継続示唆」

2月のトピック「「オリンピックの崖」回避を示唆するESPフォーキャスト20年10-12月期総合景気判断DI上方修正。懸念される新型コロナウイルスの感染拡大。しかしSixTONES vs Snow ManのCD初動売上ミリオン達成などの身近なデータは拡張局面継続示唆」

2020年2月3日

(ESPフォーキャスト総合景気判断DI20年10~12月期は1月調査で57.1に上昇。「オリンピックの崖」は回避か)

昨年はラグビーワールドカップが日本で開催され盛り上がった。日本代表がスコットランド戦で勝利し、史上初の決勝トーナメント進出を決めた翌営業日に日経平均株価は前日比408円34銭も上昇した。スコットランド戦は39.2%という高い視聴率を記録し、人々のマインドに少なからぬプラスの影響を与えたとみられる。また、9~10月の出場国からの訪日外国人客は前年比+29.4%の費用大幅増加だった。

今年はオリンピックイヤーだ。東京オリンピックの影響はラグビーワールルドカップ以上のものが期待される。直近の19年12月分「景気ウォッチャー調査」では、「東京オリンピックに向けて消費マインドの高揚と東京オリンピック関連商品の販売効果に期待している」など前向きなコメントが散見された。先行き判断でオリンピックに言及したウォッチャーは、回答者1,818人中114名。「オリンピック」関連先行き判断DIを作成すると、景気判断の分岐点の50を上回る53.3になった。

 1964年からの連想で、オリンピック後に景気が落ち込むと考える、いわゆる「オリンピックの崖」への懸念を指摘する向きも多い。当時、オリンピックは交通インフラやホテル建設などで、東京を大きく変える原動力になった。10月10日の開会式に合わせるように首都高速や東海道新幹線の運用が開始された。しかし開催月の10月が景気の山で、終わると不況が訪れてしまった。2020年では1964年のようなオリンピックに向けた猛烈な投資の動きは見られないので、関連投資の反動も小さいだろう。政府が12月に閣議決定した「経済対策」では、3本柱の3番目に「未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上」が入っている。「オリンピックの崖」への政策対応も打たれている。

「ESPフォーキャスト調査」で、フォーキャスター全員の総意を示す「総合景気判断DI」の10月調査~1月調査結果(図表1)を見ると、19年10~12月期には消費増税の影響などで一時的に1ケタ台まで大きく低下したものの、20年1~3月期には景気判断の分岐点の50を再び上回る水準まで回復し、20年4~6月期、7~9月期と12月調査・1月調査では80以上となった。その後10~12月期は、11月調査まではオリンピックの反動などで50を下回る見込みだったが、12月調査では51.4と50超になり、1月調査では57.1まで上昇した。「オリンピックの崖」は回避され、緩やかながらも景気回復が続くというのがコンセンサスになってきている。

(懸念される新型コロナウイルスの感染拡大。2003年SARS関連現状判断DIの厳しい局面は3カ月程度だったが)

今年の干支は「庚子(かのえね)」である。歴史学研究会編『日本史年表』(岩波書店)で、60年周期の「庚子」の出来事を遡ってみたところ、1360年の「この年、疫病流行」、1540年6月に「諸国に悪疫流行、天皇、般若心経を書写し、三宝院義堯に祈祷させる」という流行病や災害の記載が多かったため懸念していたところ、中国・武漢発の新型コロナウイルスの感染拡大という事態が発生してしまった。WHO(世界保健機関)は1月31日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。中国政府の国家衛生健康委員会は2月3日、新型コロナウイルスによる肺炎の中国本土での死者が、2日までに361人に増加したと発表した。2002~03年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)での中国本土の死者349人を上回った。

ただし、新型コロナウイルスによる肺炎の致死率はこれまでのところ約2.3%と、SARSやMERS(中東呼吸器症候群)に比べて低いとのことだ。また、タイ保健省が2月2日に「世界で感染拡大を続けている新型コロナウイルスの病状の改善方法を確認した」と記者会見したことが伝えられた。中国・武漢市からタイを観光で訪問、重度の新型肺炎の症状を見せた70代の中国人女性の治療にあたった医師がインフルエンザ治療薬とHIV治療薬を混ぜて使ったところ48時間以内に陰性になった、という明るい報道だ。世界の景気に冷水を浴びせる中国発新型コロナウイルスの一日も早い流行の終息が望まれるところだ。

SARSが流行した2003年時点で、中国のGDPの世界に対するシェアは4%だったが、2018年には16%と大きくなっている。訪日外国人は2019年に3,188万人で、2003年の6.1倍になったが、中国人は959万人と同期間に21.4倍になった。2019年の中国人の旅行消費額は1兆7,718億円と全体の37%を占めている(図表2)。景気ウォッチャー調査を使って2003年の「SARS」関連コメントDIの推移をみると、SARSに関するコメントは3月調査で初めて登場し、5月調査が現状125、先行き188と最もコメント数が多かったが、SARSが終息方向に向かうとコメント数が減少し9月調査では1桁に低下した(図表3)。「SARS」関連現状判断DIは3月~6月までは景気判断の分岐点の50を下回っていたが、7月・8月では60台まで上昇した(図表4)。SARSのマイナスの影響が2003年当時は比較的短期間で小さくなっていたことがわかる。2020年ではサプライチェーンやインバウンドなどの影響が当時よりも大きいことには留意する必要があろう。

(12月分鉱工業生産指数前月比3カ月ぶり増加、1~3月期前期比増加見込みだが、基調判断は「弱含み」継続に)

鉱工業生産指数・12月分速報値・前月比は+1.3%と3カ月ぶりの増加になった(図表5)。12月分鉱工業生産指数では、生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業等6業種が前月比増加した。生産用機械工業は10月、11月と2カ月連続で大きく減少したが、海外向けで増加した品目や、10月の台風の被災の影響を受けた品目の生産復旧もあり、12月は大幅な増加となったということだ。自動車工業、輸送機械工業(除.自動車工業)、窯業・土石製品工業等の9業種が前月比減少となった。

先行きの鉱工業生産指数を、1月分は先行き試算値最頻値前月比(+0.5%)、2月分を前月比(+4.1%:製造工業予測指数)、3月分の前月比を横ばいで延長すると、1~3月期の前期比は+3.8%の増加になる。また、1月分は製造工業予測指数前月比(+3.5%)、2月分を前月比(+4.1%:製造工業予測指数)、3月分の前月比を横ばいで延長すると、1~3月期の前期比は+6.9%の増加になる。両者の試算値から見て、生産の持ち直し基調が年末頃から出ていて、1~3月期の前期比は増加に転じそうな局面と言えそうだ。

経済産業省は基調判断を8月分・9月分の「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」から、10月分で15年8月分以来の「総じてみれば、生産は弱含み」に下方修正したが、11月分に続き12月分でも判断を据え置くという、慎重な判断をしたとみられる。新型コロナウイルスの影響がどうなるかわからないことへの対応と言えそうだ。

(「景気ウォッチャー調査」でみて暖冬は悪材料。初場所・徳勝龍が初優勝を決めた一番などは景気の底堅さを示唆)

直近の19年12月分「景気ウォッチャー調査」現状判断で、11月調査と比べて変化があったのは「貿易摩擦」関連先行き判断DIだ。11月では回答数30、DIが33.3であったが、米国・中国両国が貿易交渉で「第1段階の合意」に達したことで、12月では回答数は31人とあまり変わらないが、DIが41.1まで上昇した。また「台風」関連先行き判断DIは、11月では回答数30、DIが38.3であったが、12月では回答数は17人に減り、DIが45.6まで上昇した。台風の悪影響は薄らいできた。また、「暖冬」関連判断DIは、11月では現状11人・DI29.5、先行き21人・DI45.2だったが、12月では現状39人・DI31.4、先行き23人・DI46.7になった。今年は暖冬が、冬物衣料関連やスキー場などレジャー施設などの業種にマイナスの影響を及ぼしている。

最近の身近なデータは比較的明るいものが多いようだ。ジャニーズ史上初となる同時CDデビューを果たしたSixTONESとSnow Manのデビューシングル、SixTONES vs Snow Man「Imitation Rain/D.D.」の初動売上が132.8万枚となり、ミリオンを達成した。ジャニーズ・グループのデビューシングルでこれまで最高の初動売上だったのは2006年のKAT-TUN「Real Face」75.4万枚だったので、これを抜く新記録となった。初動50万枚のシングルCDが出ているときは景気拡張局面となる傾向がある。昨年まで8年連続前年比増加となった中央競馬の売得金は2月2日までの累計前年比で+2.3%の増加となっている。大相撲初場所の懸賞本数は1,835本と前年同場所比▲0.4%と減少になってしまったが、事前申し込みは2,021本だった(図表6)。両横綱が早々に休場してしまった影響があろう。千秋楽結びの一番は、前頭17枚目の徳勝龍が大関貴景勝に勝ち初優勝を決めた取り組みになったが、かかった懸賞は60本で前年初場所の結びの一番の59本より多かった。両横綱休場という特殊要因を除くと基調は底堅いということを示唆する数字と言えそうだ。