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「企業統治指針」と株主還元(日本) 【キーワード】

2016年6月6日

<今日のキーワード>
「企業統治指針」は、コーポレートガバナンス・コードとも呼ばれ、東京証券取引所が上場会社を対象に公表し、2015年6月から適用されています。日本企業は欧米に比べ株主を重視していないとの批判を受けて、安倍内閣の「日本再興戦略」の重点項目の一つになっています。「企業統治指針」は、会社が株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、意思決定を行うための規範のことです。

【ポイント1】2015年度の上場企業、利益の過半を株主還元にあてる

配当金や自社株買いに充当

■6月3日付の日本経済新聞によれば、2015年度に上場企業があげた純利益30.6兆円の使い道のうち、配当金が10.9兆円、自社株買いが5.3兆円超と、いずれも過去最高を記録した模様です。

■配当金は、株主が現金で受け取る金額です。自社株買いは株式数が減少するため1株当たりの利益が増加し、一般的には株価の上昇につながります。この二つを合計した16.2兆円超が株主還元ということになります。2015年度の利益に関しては約53%が株主還元に使われ、残りの47%が企業の内部留保となります。

【ポイント2】背景には「企業統治指針」が

過剰な内部留保はROEを下げる

■株主還元率はリーマンショック時の収益の落ち込み時を除けば過去10年間で最高の水準です。還元率上昇の背景には、「企業統治指針」の影響が大きいと思われます。

■「企業統治指針」では、企業が利益を内部に溜め込みすぎず、株主還元を含む資金の有効活用を促進しています。具体的には、ROE(自己資本利益率)を高めることが重要です。内部留保のみを手厚くすると、企業が同じ利益を上げてもROEは低下することになり、経営者の意思が問われることになります。

【今後の展開】株主重視の姿勢はさらに強まろう

■「スチュワードシップ・コード」も今後普及へ
また、投資家に対しても、「スチュワードシップ・コード」と呼ばれる規範を設けて、機関投資家が株主として責任を持って行動することを宣誓するのが普及し始めています。具体的にはROEの低い会社などに対して、機関投資家が、「企業との対話」を通して、経営の改善策を促すことなどです。

■機関投資家は議決権の行使が重要
機関投資家は、大株主として株主総会等での議決権を行使しますが、その影響力が企業の「企業統治指針」の遵守に反映されてきているものと考えられます。企業側、機関投資家側の双方が、責任を全うすることでお互いを高めあい、株式市場がより発展することが期待されます。

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