ホームマーケット日々のマーケットレポート【デイリー No.1,893】最近の指標から見る中国経済(2014年6月)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【デイリー No.1,893】最近の指標から見る中国経済(2014年6月)

2014年6月18日

<ポイント>
・生産や小売売上高の伸びが底堅かったほか、景気支援策などを背景に、製造業の景況感が回復しました。
・固定資産投資は、インフラ関連が支えているものの、不動産開発が振るわず、緩やかな鈍化が続きました。
・貿易黒字額は市場予想を上回りました。米欧の景気回復を受け、外需は今後も景気を支えそうです。
⇒政府は、財政支出拡大、規制緩和、金融政策の緩和方向への調整などで景気のテコ入れを続けそうです。

1.生産、小売売上高の伸びは底堅く推移

①工業生産
 5月の工業生産の伸びは前年同月比+8.8%と、4月の同+8.7%を小幅に上回りました。年初から、一進一退が続いています。より足元の動向を示す前月比の伸びも+0.7%と、加速感に欠ける状況です。
 主要製品別に見ると、自動車が前年同月比+12.2%と、3カ月ぶりに二桁増となって全体を支えました。内陸部の需要が堅調と見られるほか、足元では2008年~2009年の購入支援策で買われた車の買い替え時期に入ってきたことも指摘されています。
 また、5月の製造業景況感指数(PMI)は50.8ポイントと、4月の50.4ポイントを上回り、3カ月連続での上昇となりました。政府の景気支援策の効果が徐々に表れてきたものと見られます。特に、新規受注が52.3ポイントと6カ月ぶりの水準まで持ち直したことは好材料です。
 加えて、企業の在庫に過剰感はなく、景気支援策などにより新規需要が発生した際には、増産に動きやすいと見られます。

②小売売上高
 5月の小売売上高の伸びは前年同月比+12.5%と、4月の同+11.9%を上回り、昨年12月以来の伸びとなりました。ただし、物価を調整した実質ベースでは同+10.7%と、4月の同+10.9%から小幅に鈍化しました。
 通信機器が同+25%台と堅調ですが、他の分野の伸びは概ね10%台の前半に留まっています。このほか、金・銀・宝飾品が前年実績を引き続き割り込むなど、高級品の需要は伸び悩んでいます。
 一方、農村部の消費は同+13.9%と、全体を支える要因となっています。賃金上昇ペースは都市部を上回り、新たな中間所得者層による消費は旺盛です。内陸部におけるマイカー所有、都市型消費の拡大は中長期的なトレンドであり、今後も消費の底堅さは保たれそうです。

2.固定資産投資は鈍化が続く、貿易黒字額は予想を上回る

①固定資産投資
 1-5月累計の固定資産投資(農村部除く)は前年同期比+17.2%と、緩やかな鈍化が続きました。インフラ関連(全体の約2割、交通・運輸、環境・公共施設、電気・ガス・水道)が伸びる一方、不動産開発(同じく約2割)の鈍化が重石となりました。また、先行きの参考となる新規着工計画は同+12.7%と、低めの水準で一進一退が続きました。
 政府は6月11日に、長江流域の水運・物流強化を核としたインフラ投資のテコ入れ方針を決定しました。今後も競争力の強化、内陸と沿岸部の格差是正などに向けた投資計画が示されるものと思われます。

②貿易統計
 5月の貿易収支は359億米ドル(約3.7兆円)の黒字と、2009年1月以来の高水準となりました。輸出額が前年同月比+7.0%と回復した一方、輸入額が同▲1.6%と2カ月ぶりに減少したことなどが要因です。
 5月の輸出を国・地域別に見ると、欧州向けが同+13.4%と二桁増を続け、全体をけん引しました。また、一旦は弱含んだASEAN向けが同+9.1%に持ち直したことなどは好材料です。先進国需要の回復が見込まれることに加えて、足元の人民元の対米ドルでの下落は輸出競争力を高める要因であり、輸出は今後も景気を支えそうです。

3.今後の見通し

 生産や小売売上高の伸びは底堅いものの、不動産開発が鈍化するなか、固定資産投資の伸びが徐々に縮小してきています。今後はインフラ投資拡充などの政府支援を受け、新規着工計画が早期に持ち直すかなどが注目されます。こうして内需が伸び悩む一方、米欧など先進国の景気回復を受け、当面は外需が中国景気を支えると思われます。
 景気が勢いを欠くなか、中国政府は預金準備率の一部銀行への緩和など、小規模な景気支援策を多数積み上げることで、テコ入れを図っています。小規模とは言え、4月以降の支援策の数や発表ペースなどからは、景気支援への強い意欲がうかがわれ、景況感も持ち直してきました。政府は今後も、財政支出の拡大や規制緩和、金融政策の緩和方向への調整など、支援策の拡充を続け、景気鈍化への懸念は抑えられそうです。
 中国の株価は、今年年初から香港株、本土株ともに景気減速懸念を背景に緩やかに下落していました。ただし、春先からは政府の支援姿勢によって景気下振れを回避できるとの安心感が広がり、株価は反発しています。また、中国株が、歴史的に見ても他の先進国と比較しても、割安な水準にあることには変わりありません。今後の株価は改革の進展や企業業績の回復期待、相対的に高い成長力への評価などから、徐々に上昇基調に戻るものと思われます。

関連マーケットレポート